霧林の戦い

迷う

「タカラッタカラッ・・・」
ここは、セイクレッド〜アーマメントの国境となっている、「国境山脈」(文字通り・・・)はすでに越えた、濃霧半島の近く、霧のある林だ。
「霧が濃くなってきた。軍を休めよう。」
セイドは言った。
「この程度の霧で止まるのか?」
隣のアウトローが不思議そうに聞く。
「この程度って・・・お前は濃霧半島出身か?」
「ああ、悪いか?」
「いや、そうではないが・・・。そうだ、アウトロー、この辺の地形について知っているか?」
アウトローは霧に覆われた辺りを見回して
「・・・この近くには、確か、林があったな。」
と答えた。
「林?奴らが潜伏している可能性があるな。・・・アウトロー、私と・・・」
言い終わらない内にアウトローは
「はいはい。案内なら任せろ。」
と言った。
セイドは軍の中部へ兵をかきわけながら走り、エドワードのもとへ辿り着いた。
「エドワード将軍、この先に林があるそうです。私が何人か兵を連れて調査しに行きますので、軍を頼みます。」
「わかった。だが、迷わぬようにな。」
「それについては、濃霧半島出身のアウトローがいますから、大丈夫です。それと・・・もう一つ頼みが・・・。」
「何だ?」
「いつも、私の傍にいるチェリーのことです。林へは危険なので、一時、エドワード将軍にチェリーを任せたいのですが・・・。」
「いいとも。」
エドワードは、テレフォンショッキングで、「いいともー!」というような声とはだいぶ違う声で答えた。
・・・林に入った。
「ずいぶんと、霧が濃いな。」
アウトローがそう言った瞬間に、木の陰から誰かが飛び出してきた。
瞬時にセイドが斬りつけたので何ともなかったが・・・。
「どうやら、奴らは待ち伏せしていたようだな。」
アウトローは言った。
「ああ、だが、それは、この近くに敵陣があるということを言っている。軍で動くのは危険だ。私達で何とかしなければ。」
「仕方ない。周りに注意しながら行くか。」
と、どんどん進み始めた。
途中、何人かの伏兵にあったが、たいした被害も出ずに済んでいた。
結構歩いただろう。下り坂が見えた。
セイド達は黙々と進んでいる。見つからないように。
下り坂を降りると、木が少なくなってきた。
そして、敵陣が見えてきたのである。
「おお、これで、林の奴らを倒せる。」
セイドは疲れた様子のまま、言った。
「それじゃ、さっさと潰すか!」
「ああ、行くぞ!」
調査隊が敵陣にむかって走る。霧も少し晴れてきたようだ。
敵陣に着き、すぐに勝敗はついた。

敵の方が兵は少ない。少人数で、この林を利用してセイクレッド軍を足止めをするつもりだったのだろう。
「さて・・・もういないか・・・。」
セイドが辺りを見渡したその時・・・!

オーロラ

「ドドドドド」
砂埃が舞う。どうやら、敵の増援のようだ。
「増援か。今の私達では無理だ。退避!」
セイドの命令で、一斉に逃げ出す。
敵も騎兵を選んだのは間違いだった。邪魔な木の多い林で、騎兵が思うように動けるわけが無い。
そのおかげで、調査隊は逃げ切れたが。
「ふう、やれやれ。」
アウトローは喘ぎながら言った。

「疲れたか、だが、こんなところでは休めん。軍に戻るぞ。」
セイドの言葉に、アウトローは勘弁してくれという様子。
軍に辿り着いたが、疲れたままなので、休憩をとった。
「セイドはいいよな。可愛いお付きがいてよ。」
お付きとは、チェリーのことだ。
「お前にも、部下がいるだろう。」
「部下っつうかなんつうか・・・仕事仲間に変わりはないんだけどよ。」
犯罪仲間だとは口が裂けようが殴られようが、言えない。
そこにエドワードが来て
「クルーセイド殿、調査の結果は?」
と聞いてきた。
「ああ、林の中を調査したところ、数人の伏兵がいました。それと、敵の増援に騎兵が来まして・・・。」
「なるほど。その血を見る限り、伏兵は斬ったのだろう?」
「はい。向こうから来ましたから。」
「・・・他にはもうないか?」
「はい。」

「では、休憩終了後、軍にそのまま林の中を歩いてもらおう。増援でも騎馬ならば苦戦はしないだろう。
二人は了解した。
・・・・・・霧も大分晴れてきて、「霧林」ではなくなっていた。軍も林の中を楽々と進み、敵陣まで着いた。敵も気づいたようだ。猛然と向かって来る。
・・・が、あっけなく負けた。
とった敵陣で休んでいる時、オーロラが地平線に現れた。かなり寒いところなのだろう。
オーロラはゆらゆらとカーテンのように揺れる。幻想的な白い、光の色というべきか、そんな色のカーテンが天にある。
しばらくの間、兵は皆、オーロラに見とれていた。それ以外は眼中になし、とでも言うかのように。