救援戦

三つ子砦<西>

「タッタッタ・・・」
「クルーセイド様、軍議のため、会議室へ急いでください。」
伝令が汗を流しながら、言った。
「わかった。他の者は?」
セイドは、ソルジャー達、つまり、仲間を見ながら聞いた。
「はっ。その者達も会議室へ来てください。」
「と言うことだ。みんな、行くぞ。」
全員が了解した。
走ったので、一応会議室に着いたが、遠かったせいもあってか、軍議に遅刻した。
「遅いぞ。」
「大切な軍議に遅れるとは・・・。」
先に来ていた将達が呟く。事実なので、怒れないが。
「遅かったな、セイド達。まあ、いい。さっき、始まったばかりだからな。」
アーミィの言葉は、先程の将達と違って、優しかった。
「すみません。」
皆があやまるが、将達は許してはくれなさそうだ。
「早く座れ。」
セイド達が座ると
「軍議というのも、今後についてだ。アーマメントが、攻め込んで来ているかも知れんから、それを対処する軍を派遣する。兵力は決まったが、一体、誰を指揮官にするのかが決まらん。」
アーミィが、ソルジャーと、ギフトには、ほぼ、理解できないことを言った。
「私は駄目でしょうか?」
セイドが、アーミィを見て聞いた。
「いいが・・・一人では無理だろう。誰か、セイドの助けになれるような者はいないか?」
シーンとした。が、その沈黙をセイドは破った。
「助けはいりません。既に、戦が始まっていれば、将兵を借りれます。・・・連れて行くなら、チェリーを連れて行きます。」
セイドは、チェリーとの約束を憶えている。セイドはチェリーの近くにいるという役目があるのだ。
「それだけか?せめて、ソルジャーかギフトぐらいは・・・。」
「ここの軍の相手はイモータルです。ゼロスが何万もの兵を引き連れて来たら、勝てません。だから、親父とギフトは置いていきます。」
「では、アイリーンは?チェリーだけでは・・・。」
「アイリーンも置いてきます。」
セイドは力強く言った。
「そうか・・・。ならば、アーマメントが攻め込んでいるなら、セイクレッド騎士団が動いているはずだ。騎士団に合流したら、エドワードを連れて行け。そうすれば、セイクレッド騎士団もお前の指揮に従うはずだ。」
セイドは、自分がアーミィの弟であることを知っている。なので、たいして驚かなかった。・・・が、将達は驚いている。
「わかりました。では、戦準備をしてきます。」
「ああ。明日までに出発しろ。」
セイド達は会議室から出た。
「セイド、大丈夫か?」
ソルジャーにも、子を心配することもある。
「大丈夫だ。それに、セイクレッド騎士団が味方してくれるんだから、兵力にも問題は無い。」
「しかし、どこへ行くんだ?」
ギフトが、誰に聞いているのかは分らない。
「国境に近い所だから・・・、三つ子砦だろう。・・・と、急がないとな。親父、ギフト、アイリーン、手伝ってくれ。チェリーもな。」
全員が了解した。そして、あわただしく走り出した。
一日経って、軍は、アーマメントへ向けて走り出した。
十文字川、枯山城、一本城を抜け、もう、何日経っただろうか。ついに、三つ子砦<西>まで来れたのだ。
「伝令の一人も来ていない。これはおかしいな。」
セイドが呟いた。
「伝令!伝令!」
伝令が走りながらやって来た。
「どうした?」
「三つ子砦はもう・・・、全て落ちています!」
三つ子砦は、その名の通り三つある。<北>と<東>と<西>。
「遅かったか・・・。まず、三つ子砦<西>を取り返す!突撃!」
セイドの命令に従い、兵は、さっきよりも速く走り出した。
「セイクレッド軍が来た!?ちっ、騎士団だけに手間取っている場合ではない!迎え討つぞ!」
と言ったのは、アーマメント軍指揮官、フュリアスである。得意の『突撃戦法』でを駆使し、たった一日で、三つ子砦を全て落としたのだ。
「敵が門を開けました!」
突撃同士の戦いだが、兵の少ないセイド軍の方が有利だ。なぜなら、フュリアス軍は前もって陣を布き、作戦を練ってから『突撃』するのだが、今回はのんびりと休んでいたため、攻撃がバラバラで、とても強敵とは言えない。
勝敗はすぐに決まり、フュリアスは敗残兵を引き連れ、先陣のセイクレッド城を攻めている部隊への合流を試みることにした。
「・・・すると、セイクレッド城はもう、攻められているのか?」
セイドは、いつも通りのやさしそうで、奥底は厳しいという、複雑な声で聞いた。
「はい・・・。」
と言ったのは捕虜。逃げ遅れたところで捕まったのだ。
「騎士団に合流するためだ。突撃するか・・・。」
セイドが、疲れたように言った。
そのころ、チェリーは兵を集め、戦で乱れた軍を整えていた。

セイクレッド城

「ドドドドドド」
セイクレッド城門前で、セイクレッド騎士団と、フュリアス軍の先鋒部隊が、正面衝突しているのが見える。
言っておくが、セイクレッド城とは、セイクレッドの首都のことではない。騎士団の居城である。
「やってるな。見る限りでは、同等の力か・・・。助けに入れば、勝てるだろう。」
セイドは言った。このとき、軍は止まっている。
「よし!全隊突撃!騎士団を守れ!」
セイドの命令に、兵士は走り始めた。最近、走ってばかりだが、疲れはしなかった。
ワーッ!と兵は走り出す。セイドも共に走り出した。未だに馬に乗れないのである。
「おお!援軍か!皆、援軍と共に奴らを叩け!」
騎士団の兵は歓喜した。同時に、士気も上がり、敵部隊はほぼ、全滅した。
「一日に二回も負けるとは・・・。」
フュリアスはそう言いながら戦場を去っていった。
「援軍に来てくださり、ありがとうございます。」
と、馬から降りる。
騎士団の副団長代理である。ここは、先程の戦場だ。
団長は地方へ用があり、副団長(団長代理)は落馬事故で左腕を強打し、左腕を失ったばかり。
なので、副団長代理のエドワードは、代理の代理の騎士団隊長なのである。
「これも国王のおかげです。私は国王の命令に従っただけです。」
セイドは、歩いてここまで来たのだが、疲れを隠して立っていた。
「国王には感謝しなくてはなりませんな。」
「もちろん。しかし、まだ、三つ子砦<北>と<南>があります。全ては完全に勝利してからにしましょう。」
「はい。では、騎士団は<北>を攻めましょう。<南>は任せます。」
「どちらに居ても、フュリアスを見つけたらすぐに捕まえる。そうしないと、今日のようにさっさと逃げられます。」
「はい。ところで、失礼ですが、・・・あなたは誰ですか?」
不思議そうな顔でセイドを見る。
「私は・・・アーノルド・クルーセイドという名で、最近、セイクレッド軍で戦わせてもらいました。それで、いつの間にか将の位に・・・」
「そうですか。でも、国王が臨時に将軍位にするほどの腕を持っているのでしょう?」
「そんなお世辞はよしてください。・・・と、急いでフュリアスを討たなければ・・・援軍を要請していたら、今の戦力では苦戦するかもしれない。えーと・・・あなたの名は?」
「エドワードです。」
「エドワード将軍、どちらがこの軍の指揮官になればいい?」
「やはり、国王に認められたあなたが最適では?」
「その言葉・・・憶えておいてください。・・・では、指揮官として命令します。現時点でのこの戦力で、軍を私の軍と、セイクレッド騎士団の二つに分けます。それぞれで三つ子砦を攻撃し、三つ子砦を全て落としたら、アーマメントを攻撃します。これでいいですか?」
エドワードはただ、唖然としていた・・・。
「・・・・・・あ、ああ。だが、アーマメントへ攻めるのは無理があると思うが・・・。」
「この国に攻撃したということは、敵意があるからでしょう?アーマメント自慢の切り込み隊長、フュリアスが無残にも負けて帰ってきたら、それだけでセイクレッドを攻めてくることも考えられる。攻められる前に攻めた方が戦局は有利になります。どうですか?納得しましたか?」
「わかった。だが、これだけでか?たったこれだけで、猛将と言えるような者も片手で数えられるくらいだ。国から援軍を頼まなければ・・・。」
「わかっています。だが、援軍が来るのを待っているわけにはいかない。それに、アーマメント侵略はアーマメントと休戦するためです。一刻も早く国の邪魔にならないようにしなければ。」
エドワ−ドは半ばあきらめたように
「・・・わかった。では、兵を集めてこよう。クルーセイド殿は休んでください。」
「任せる。」
エドワードが馬にヒラリと乗り、勝ち鬨を上げて疲れた兵達のところまで行き、いちいち一ヶ所に誘導していた。
「チェリー、これから厳しくなる。だが、上手くアーマメントと休戦し、ブライトと同盟出来れば、悠々とイモータルを滅ぼせる。今は耐えていてくれ。」
後ろにいたチェリーの両肩を握り、力強く言った。
「はい・・・。」
チェリーにとってイモータルは祖国だ。祖国を滅ぼすために戦っている他国の者と一緒にいるのはつらいが、セイドは特別だ。自分を守ってくれているのだから。
それに、チェリーからすれば、イモータルは祖国以外に価値は無い。ジョン(父)はイモータルに殺されたし、ロイアル(アイリーンの父)をも巻き込んだから、あまりイモータルを良く思いたくなかった。
「さて、兵を集めるのを手伝うか。チェリーもやってくれ。」
「・・・もう、集まってますよ?」
セイド達の視野から見て、血だらけの戦場の中央に、兵が全て集まっている。全て集まったかたどうかは、エドワードがこっちに来ているからわかる。
「騎士団の団結力は強いな。」
セイドは笑いの混じった声で言った。
「お待たせしました。兵は集まりましたぞ。」
エドワードが馬上で言う。さすがに疲れたのか、息が切れている。
「集まったか。・・・アーマメント侵略と行くか。」