アイリーン砦の戦い

「たったった・・・」
何とか、セイド軍はブライト軍と合流し、チェリーの出身地、桜城(さくらのしろ、と読むべし)を取ることにした。
チェリーは余り、乗り気ではなかった。
この戦、チェリーを休ませてくれないでしょうか?故郷で戦をするのは、耐え難いことです。」
セイドはブライトに言った。隣にはチェリーがいる。
「うむ、そうだな。・・・では、チェリー殿には本陣の守備でも任せよう。もう一人、誰か、本陣の守備ができるような者はいなか?」
「はい、います。私が本陣の守備を務めさせていただきます。」
「ほう、セイド殿がか。では、そなたの軍はどうするのだ?」
「それは、セイクレッド騎士団のエドワード将軍に任せます。」
「そうか。では、本陣の守備は任せる。桜城は我が軍に任せてもいいぞ。」
「ありがとうございます。しかし、私の軍も戦わせていただきます。ブライトを戦わせるようにしたのは、私なのですから。」
「そうだな。では、作戦会議には赴いてくれるか?」
「はい、ちゃんと行きます。」
「うむ。では、また後でな。」
「はい。」
セイドが天幕から出て行った。チェリーも、セイドに連いていくように出て行った。
「セイド・・・か。敵にまわったら大変な奴だ。セイクレッドとの同盟は、長く続きそうだ。」
と、ブライトは呟いた。
「よし、本陣の守備を任されたことだし、アウトロー、エドワード将軍!」
セイドはセイクレッド軍の陣内を走り回って呼んだ。
「おう、セイド!どうした?戦か?」
「違う。エドワード将軍は?」
「エドワードなら、ブライトの騎士団の奴らと何か話してたぜ。」
「そうか、ありがとう。口は充分に慎め。」
「へいへい。」
セイドはブライト陣へ走っていった。
エドワードの姿が見える。スプレンダーもだ。それと、ブライト聖騎士団団長、ヴィクトリィの姿も。
「やっと見つけた。」
セイドはエドワードのもとまで行くと
「エドワード将軍、セイクレッド軍の会議があります。早く来てください。」
「ああ、わかった。ちょっと待ってくれ。」
エドワードはヴィクトリィとスプレンダーの方を見ると
「いろいろとありがとうございます。」
とお礼を言って、セイクレッド陣に歩いていった。
セイドは、それを走って追いかけた。
「エドワード将軍、アウトローとウラヌスを連れて来ますので、少々お待ちください。」
「ああ。」
セイドはまた走っていった。
「何をそんなに急いでいるのか。」
と、エドワードは疑問に思った。
セイドがアウトローとウラヌスを連れて来て、作戦会議になった。チェリーはいない。
「さて、セイクレッド軍は桜城付近の砦、アイリーン砦をとることが目的だ。再び、二軍会議が行われるが、このことは変わらないだろう。誰か、この砦を効率よくとり、かつ素早く落とせる策はないか?桜城をとるのも苦戦するはずだから、早くブライト軍を援護したい。」
セイドが言った。
「おい、セイド。無理言うなよ。たったのこれだけで、そんな早く落とせないぜ。砦を焼くってんなら別だけどさ。」
「その砦を焼く、に代わるようないい策が欲しいのだ。他にないか?」
「クルーセイド殿、我らは敵に比べて少数。長期戦に持ち込むことは?」
エドワードが言った。さすがに、天幕の中にいるので、馬からは降りている(当たり前だ)。
「長期戦になれば、我らはさらに 苦戦することになるぞ。敵の援軍が来たらどうする?もし、ゼロスかフレイムが来たら、こんな軍では勝てんぞ。」
「まあ・・・そうだが・・・。」
エドワードは困惑している。
「おい、ウラヌスも何か考えろよ。」
と、アウトローがウラヌスをつつく。

「わしも考えてはいるんだが、考えることは相棒任せだったからのう。」
「・・・駄目だ。ブライトの将達と考えた方がずっといい。」
セイドは、そこで会議を終わらせた。
セイド達がブライトとの二軍会議に出席しに行った。もちろん、ウラヌスは将でないのでいない。
「桜城とアイリーン砦を同時に攻める。早急に落城させ、援軍を迎撃するのだ。桜城とアイリーン砦を同時に攻めて、なるだけ早く落城させられる策はないか?」
ブライト聖騎士団団長、ヴィクトリィが言った。
「桜城はブライト軍、アイリーン砦は私の軍が攻めるのでしょう?では、私の軍の兵は少ないので、少しばかり兵をお貸ししてもらえないでしょうか?」
セイドがヴィクトリィに聞いた。
「いいだろう。五千もあれば充分だな?」
「はい、ありがとうございます。」
ブライトネスが席から立って
「セイド殿、アイリーン砦をどうやってとるつもりか。」
「なかなかいい策が出てこなかったので、門を叩き壊します。」
チェリーがいなくてよかった、と、セイドはホッと息をついた。
「そうか。ヴィクトリィ、桜城はどうやってとるのだ?」
ヴィクトリィの方を向く。
「それは戦況に応じて、その時に考えます。まず、やるべきは桜城に攻撃しているという、二人の人間の救出です。
「たったの二人で城を攻撃しているのか?」
「はい、そうです。間者の報告では。」
セイドは直感的に思った。その二人、チェリーの父、ジョンと、アイリーンの父、ロイアルではないかと。いつか、聞いたことがある。
「で、アイリーン砦はどうやって取んだよ?」
アウトローが口を挟む。
「アウトロー、口を慎めと言ったろう。」
「仕方ないだろ。俺の口調なんだから。」
「・・・アイリーン砦については、これから考える。だが、桜城の方が先だ。」
ヴィクトリィが答えた。
突然、エドワードが立ち
「我らセイクレッド騎士団とブライト聖騎士団が、総力をもって援軍を阻めばいいでしょう。その間に、歩兵中心の軍で桜城、アイリーン砦をとればいいと思いますが。」
と言った。
「そうか。ふむ・・・。」
ブライトネスが悩んでいる。
「ならば、各軍の行動、作戦については各軍の中心となっている将に任せます。何も、この二軍会議で話し合わなくともいいでしょう。本陣の守備も決まりましたから。」
ヴィクトリィが二軍会議を終わらせようとした。ブライト軍側の作戦は、もう、決まっているからだ。
「うむ。それでは、二軍会議は終わりだ。各自、自分の仕事に励め。」
ブライトネスが二軍会議を終了させた。
セイクレッド陣への帰路。アウトローが
「セイド、何か作戦はあるのか?」
と聞いてきた。
「もちろん、ある。」
と答えただけで、流す。セイドはエドワードの方を向くと
「エドワード将軍、騎士団で敵援軍を阻むという作戦。やってもらえないでしょうか?セイクレッド騎士団だけでもいいです。私は本陣の守備をしますから、消去法でいくと・・・」
横にいるアウトローを見ながら
「このアウトローが本軍の指揮になりますが、いいですか?」
と聞いた。
「アウトローは素性も知れない者だが、いいのか?」
エドワードは聞き返す。
「はい。ウラヌスに任せるわけにはいきませんから。それに、アウトローも、とある一団の長です。今まで戦ってきて、多少の用兵も学んでしょうから。」
ウラヌスは一般兵士だから、軍の指揮をさせることはできない。
「そうか、ならいい。」
「では、さっそく準備にとりかかってください。アウトローには兵法を学んでもらう。私の考えた作戦と共に、兵法を学べ。いいな?」
「へーい。軍単位だと動かしにくそうだけどな。まあ、いい。」
アウトローは無気力ながらに承諾した。

二軍会議

アイリーン砦攻略&敵援軍阻止

「タッタッタ・・・」
さっそく、作戦にとりかかったセイド軍。セイド、チェリーは本陣の守備、エドワードのセイクレッド騎士団は敵援軍の妨害、アウトローはセイド軍の本軍を連れて、アイリーン砦を攻略、というものだ。
「では、行ってくる。アウトロー、なるべく早く攻略しろよ。」
エドワードである。アウトローは肯(うなず)き
「ああ、わかってる。任せとけ。」
と言って、本軍の先頭まで走っていった。
「クルーセイド殿、本陣は任せます。」
「大丈夫だ。心配はない。それじゃ、私はチェリーのところまで行く。敵援軍阻止は任せたぞ。」
「私に任せてください。」
と言って、エドワードはさっそうと走っていった。馬に乗っているからだろうか。
「さて・・・。」
セイドは、フラフラとセイクレッド陣に向かって歩いていった。
天幕が上がる。誰?
「チェリー、大丈夫か?」
セイドか。それなら安心。
「はい・・・、もう、大丈夫です。」
チェリーは奥にある机に突っ伏していた。疲れた顔をしている。
「大丈夫じゃなさそうだな。私でいいなら、なぐさめてやろうか?」
セイドが、チェリーの肩へポンと手を置く。
「いいです。放っといてけっこうですから。」
「そうか。私は陣内でも見てくる。そう、疲れた顔をしていると、本当に疲れてしまうぞ。」
セイドはそう言って、天幕から出ていった。
「セイド・・・。」
チェリーは呟いた。独り言であるが、誰かに話しかけているようにも聞こえた。
「・・・チェリーに元気がないな・・・。私ではどうすることも出来ないのだろうか?」
セイドも、独り言のように呟いた。
さて、アウトローはちゃんと軍を動かせているだろうか?
「あ〜面倒だなあ。作戦考えないといけないしな。」
アウトローは頭をかきながら言った。
「おい、お前。」
近くの兵が一斉にアウトローを見る。
「え、えーと・・・、俺の隣の奴だよ。」
がっかりしたように兵は前を向いた。
「お前、アイリーン砦をどうやってとればいいんだ?」
アウトローは率直に聞いた。隣の兵は、首を振り
「さあ・・・?」
としか言わない。
「やれやれ、仕方ねぇ。俺がなんとかするか。」
作戦は将が考えるものだと思うが・・・。
アウトローはあごに手をやった。格好だけは考えている。
「・・・よし、こいつでいくか。」
アウトローは結論を出した。
いくつか命令を出し、アイリーン砦攻略作戦は開始した。
まず、アウトロー率いる先頭の部隊が砦を攻撃し、撤退。敵が出てきたら、後続部隊と共に迎撃する、というものだ。敵が出てこなかったら、その時はその時で考えるらしい。
そして、砦を攻撃しているのだ。
「おし、もういいだろ。お前ら、退くぜ!」
撤退するのに、こんな元気なわけがない。
アウトローの部隊が撤退している。
「これぞ好機!奴らを攻め潰せ!」
敵将の声が聞こえる。アウトローは心の中で、小悪魔的な笑いをした。
後続部隊の伏兵で、敵は混乱している様子。
「今だ!砦の中に進入しろ!」
アウトローの命令で、砦の中にどんどん兵士がが入っていく。
あっという間に砦を制圧した。敵兵は弱かったらしい。
では、エドワードはどうなっているか、見てみよう。
「なるほど、敵が来ているのか。」
エドワードが言った。馬上で。
伝令によれば、敵援軍の指揮官はフレイムだそうだ。兵力はおよそ二、三千。騎士団の兵力は5千あるので、ミスさえなければ勝てる相手だ。
「・・・そうだな、やるか。・・・広く陣を構えるように伝えてくれ。」
伝令はそれを聞いて、走っていった。
エドワードの策は、簡単なものだ。
まず、陣を広く構え、敵が来るのを待つ。敵が来たら、一斉に突撃し、包囲する。鶴翼の陣というやつだ。
騎士団の兵は、あわただしく馬を走らせる。
しばらく待っていると、伝令が来て
「将軍、フレイム軍が来ました。」
と知らせた。
「そうか。他のところにも伝えてくれ。」
「はい。」
伝令は走っていった。馬に乗っていても、疲れているようだ。
フレイム軍が来た。この報は各部隊に伝えられ、いつでも動ける状態をとった。
「もう、いいだろう。行くぞ!」
エドワードの命令で、エドワード隊は突撃した。他の部隊も、それに呼応して走り出している。
フレイム軍は意外にも少数だった。エドワードは、包囲のおかげもあるし、すぐに殲滅できるだろう、と思ったが、期待はずれだった。
包囲されているのはフレイムと、その騎馬隊であった。こいつらだけということは、本隊は別いるはずだ。本隊を逃がしては、敵援軍阻止に成功したとはいえない。
「む・・・、敵本隊を探せ!近くにいるはずだ!」
その確信はなかったのだが、エドワード自信、そう思いたかった。
包囲している兵が散っていく。探しても、見つからないらしい。もうずいぶんと探している。
そんなことをしている間にも、フレイム騎馬隊の攻撃を受けているのだ。
エドワードがフレイムに近寄る。
「フレイム!この私と一騎打ちをしろ!このままでは、どちらも大変だからな。」
大声でないと、戦場では会話などできない。
「いいだろう。ただし、ここでやることだ!」
敵味方の死体があちこちに散らばっている。おもちゃを片付けない、子供の部屋のようだ。・・・死体をおもちゃに例えるには、少々抵抗があるが。
「そうか。行くぞ!」
エドワードは馬を巧みに操り、死体の上を走る。
一方、フレイムは、構えたまま動こうとしない。
エドワードの槍が、フレイムの腹目掛けて走る。フレイムはそれを自分の槍ではじいた。
「なかなかやるな。」
エドワードである。
「そなたの名を知らなかったな。どちらが死ぬにせよ、名ぐらいは知っておきたいものだ。」
「私の名はエドワード。セイクレッド騎士団の副団長代理の職に就かせてもらっている。」
「そうか。私はフレイム。イモータルの征北将軍だ。」
一通りの自己紹介が終わり、一騎打ちが再開された。
何合打ち合ったか、両者とも疲労の色を隠せない様子。
「ハア・・・ハア・・・。まだやるか?」
フレイムが言った。エドワードの方が疲れているようだ。
「まだ・・・まだ・・・。」
もう、戦う気力もない。
「行くぞ。」
フレイムが、槍をエドワードの首へ向かって走らせる。
突然、騎士団の兵が飛び出してきた。
「何?!」
フレイムは驚いた。エドワードも、である。
飛び出してきた兵士は、エドワードの盾となり、フレイムの槍が首に刺さっている。
「お前・・・。」
「・・・」
何も言える訳が無かった。首を貫かれ、少しの間は生きていたようだが、本当に少ししか生きられなかった。
兵士は槍から落ちた。エドワードはその光景、その死体を動かずに眺めていた。
「エドワード。これが戦だ。わかるか?今まで戦って来たんじゃないのか?」
フレイムに言われて、目が覚めた。そう、これが戦争。そして、今、私は敵であるフレイムと一騎打ちをしているのだ。
「そうだ・・・。これが戦。時間を食わせたな。行くぞ!」
エドワードはフレイムに斬りかかる。双方とも、槍は刃こぼれしまくりで、ほとんど棒で戦っているようなものだ。
「エドワード将軍!」
「フレイム将軍!」
二人の兵が、同時に自分の上官の名を呼んだ。
「どうした?」
将軍が同時に言った。
「はっ。敵の本軍が我が騎士団の後方を衝いております!」
「はっ。我が軍の本軍が敵の後方を衝けました!」
両方とも同じことを言っている。
このことに、二人の将軍は笑いだした。
「フレイム将軍、これは面白い。あなたの本軍は私が退かしてみせます。」
「いいだろう。私の力を思い知れ!」
両将軍は自軍の後方へ回った。
結果的には、騎士団が勝ったのだが、フレイム軍が自分から撤退したのだ。そうでなければ、騎士団にはもっと被害が出ているはずであろう。