騎士団孤立戦

先鋒隊孤立

「ワアアアァァァァ」
ブライト聖騎士団が敵軍と正面から戦っている。ブライト聖騎士団でも、その先鋒隊である。指揮官はスプレンダー。
「このまま突き進め!」
誰が言ったのか、騎士団は敵軍を貫く。
「おい、待て!孤立するぞ!」
その通りの状況になってしまった。スプレンダーとしては、成り行きで。
「む・・・孤立したか・・・。」
敵軍が迫ってくる。味方もほとんど死んでしまったようだし、ここの逃げるが先決か・・・。
敵軍を迂回すれば、なんとか逃げ切れるだろう。
「行くか・・・。」
スプレンダーは近くの小屋を目指して走った。馬はさっき死んでしまった。だが、槍はある。これだけあれば、身を守れる。
小屋に着き、まずは食料調達をすることにした。
「食料はないか・・・。あった。」
奥の木箱の中に食料が入っていた。肉はなく、野菜や果物である。
「これだけあっても、持てないし、持てるだけもって行こう。」
スプレンダーは腰の袋に入るだけの食料を入れ、小屋を後にした。
敵兵の視界に入らないよう、木や草に隠れながら進んだ。
スプレンダーは無言で進む。喋る相手はいないのだし、喋ったところで捕まるかもしれないのだから。
「まずい。敵の小隊がいくつも・・・。」
小声で言った。
スプレンダーは木に隠れており、木陰からそっと、再び顔を出す。
敵は三十人ほど。味方の兵がいれば、さほど多いとは言えないのだが、今は一人。三十人は大部隊のようにも思えた。
「・・・・・・」
スプレンダーは考えた。考えならいくつでもあるが、その中で一番被害を受ける確率が少なく、かつ、敵を殲滅できるものを探すのは、時間がかかった。この考えている時間に、敵に見つからなかったのは奇跡かもしれない。
「やるか・・・。」
木から木へ移る。敵の視界に入らないように。
この辺でいいか。
スプレンダーは声を出さないようにした。敵の真後ろの木に隠れているからである。
近くにある、手ごろな石を見つけると、それを遠くにいる兵に向けて投げた。
鈍い音がして、石の当たった兵は倒れた。打ち所が悪かったのか。
「誰だ!出て来い!」
ここで〜す、なんて、やすやすと出てたまるか!
木陰から槍で敵を突き刺す。無論、一番近くの敵兵を、である。
「あそこだ!追え!」
スプレンダーは逃げる。ひたすら逃げる。敵もうまくまかれてくれない。
ま、まかれてくれなくて結構。いや、むしろありがたい。わざわざ罠にかかりに来てくれるんだから。
「ワーッ!なんだ?」
敵兵は地面よりも一段落下がった。落とし穴である。敵兵を見つける前に掘っていたのだ。しかし、一人で、しかも、この短時間で掘れる穴など小さなもの。敵は立ち直ろうとしている。
その構えのない、油断を衝き、スプレンダーの槍は敵兵を貫く。
この後、敵が一斉にかかってきたのだが、スプレンダーの奮戦で全滅させた。
スプレンダーは更に進んでいった。

帰還

「タッタッタ・・・」
スプレンダーは走っている。このままいけば、味方と合流できる。
「もう少し・・・もう少し・・・。」
だが、行く手を阻むものが現れた。敵陣である。さほど大きくはないが、こちらは一人なので、かなり邪魔な存在だ。
「こんなところで果てることはできない。どうするか・・・。」
「!お前誰だ!」
敵の見張りのようだ。わざわざ外に出て見張りをしていたらしい。あちこち蚊に刺されたようで、足や手を中心にかきまくっている。
「くっ・・・仕方ない。」
スプレンダーの槍が、敵兵の腹を貫いた。だが、それを見ていた敵兵がいたようで
「敵だ!敵がいるぞー!」
と知らせてしまっている。
「まずい。・・・そうだな・・・。」
考える余裕など無い時でも、考えなければ何もできない。
スプレンダーは何か考え付いた様子。逃げ始めた。
「待てーい!逃がすな!追え!」
敵兵がぞくぞくと集まり、追って来る。
「こうなったら、火計だ!火を起こせ!この一帯を焼く!」
敵兵は火計を始めた。敵陣は森に属しておらず、被害は受けないくらいの距離があるのだ。
だが、これはスプレンダーの思った通りだった。
「やった。」
と、スプレンダーは小さくガッツポーズまでした。
火計が始まった。辺り一面、火炎世界とでも言おうか。
「さて・・・。」
スプレンダーは逃走経路を変えて、敵陣に向かって走る。
火計が行われたので、敵兵はいない。この炎さえなんとかすれば、この火を持って、敵陣を焼くことが可能だ。
スプレンダーは近くにあった手ごろな棒を拾い、その棒の先に火を付けた。
棒の先が炎で焼かれ、黒くなる。
急いで敵陣に向かい、敵陣がよく見える崖に着いた。
「ここなら・・・。」
スプレンダーは火の付いた棒を敵陣に向かって投げつけた。
「ワーッ!何だー!?」
敵陣が燃えているその姿がよく見える。敵兵の炎に焼かれる悲痛の叫びも聞こえる。
炎は敵陣、敵兵、そして空を焼き、煙は天空をさまよう。
「これでいいはず。早く逃げよう。」
スプレンダーは敵陣を後にし、味方の陣向かって走った。
いくら走っても、疲れは感じなかった。むしろ、ここまで自分一人でやってきたのだ、と満足感も味わえた。
・・・しばらく走り、味方の陣に着いた。今までが長かった。やれやれ、せっかくキレイにしていた美しい髪も、ボロボロに崩れている。
「スプレンダー、先鋒隊は全滅したそうだな。だが、ここまで一人でよく帰ってきてくれた。」
ブライトネスが言った。
「はっ、先鋒隊全滅は私の責任です。生きて帰って来たからといって、罪が償われるわけではありませんから。」
「うむ。その考え、忘れるな。・・・では、罪はこの先の敵陣をとってきてもらうことにするか。」
「あの・・・その敵陣というのは?」
「うむ。崖が側面にあり、森が近くにある。」
スプレンダーは思い当たった。あの焼いた敵陣ではないかと。
「その敵陣なら、私が逃走中に焼いたのかもしれません。」
「焼いた?伝令から報告がない限り、罰は与えられんな。こりゃ。」
ブライトネスは頭をポンと一発叩く。
伝令が来た。
「伝令!森の敵陣が焼けています。敵兵も森に逃げ込んだ模様。」
「そうか。スプレンダー、お前の勝ちだ。罪は償われた。」
「はっ、ありがとうございます。」
スプレンダーはペコリと頭を下げた。