ピュア湖の戦い

迂回奇襲準備

「タタタタ・・・」
ここはブライト軍の本陣。ブライト軍といっても、ブライトネスなどの本軍は、今までに奪ってきた領地の治安確保と守備のために、駐屯しているのだ。だから、ここにいるのは騎士団のヴィクトリィ、スプレンダー、本軍から預けられた部隊の将のジョーンズしかいない。
「団長、敵軍はピュア湖を守備するように布陣しているそうです。」
スプレンダーが言った。
「そうか。おい、ジョーンズ!」
ジョーンズは大声で呼ばれて飛び上がりそうになった。
「は、はい。なんでしょう?」
「敵はピュア湖を守りたいようだ。どうだ?お前、奇襲してみないか?」
「え?でも、俺なんかが・・・?」
「ああ、お前程度の奴が行った方が敵も油断するというものだ。騎士団は正面から当たり、敵の目をジョーンズからそむける。」
ジョーンズはお前程度、という言葉に傷付けられた。俺程度・・・。まあ、確かに俺は、たかが一将だけどさ・・・。
「はい、わかりました。では、俺の部隊は準備をします。」
と言って、ジョーンズは天幕から出て行った。
「さて、スプレンダー、我らで抑えなければな。」
「はい。団長がいれば、勝てるはずです。」
「なら、準備を手伝え。」
ヴィクトリィとスプレンダーも天幕から出た。
ピュア湖を守るはイモータルの名将のゼロスが子、ジョゼフと、ソローとチェリー、アイリーンの憎き敵、フィリップである。
ちなみに、ピュア湖はギルトという豪商の管理下に置かれているので、もちろんのこと、この戦にギルトが出る。戦えないが、傭兵がいるのだ。
「ギルト殿、ここは我らに任せていいので、本陣までわざわざ来なくても・・・。」
ジョゼフは困惑しながらも、ギルトを追い返そうとしている。
「しかし、私はピュア湖の管理者です。軍の人達がちゃんと守ってくれるかどうかは・・・この目で見ておきたいのです。」
「ですが、ピュア湖の守将がいなかったら、奇襲された時の備えが・・・。」
「そうですな。では、今日は帰らせていただきます。」
今日は、か・・・。明日も来るのか?まあ、昨日も一昨日も来たのだが。
「ふう、ギルト殿も疑い深い。・・・フィリップ!」
フィリップは呼ばれたが、少しに間、知らんぷりをした。楽して位を上げるための作戦を考えていたのだ。
「おい、フィリップ!!」
フィリップは飛び上がった。驚いて、である。
「は、はい。何ですか?」
「フィリップには先鋒隊を務めてもらう。騎士団が迫っているそうだから、お前はそれを止めるんだ。」
それは、ある意味で、死ね、と言っているようなものだ。
だが、ここは部下と上司。上下関係を知らずして、フィリップはここまでの位にのし上がってはこれなかった。
「はい。わかりました。必ず止めてみせます。」
「止めるだけではならん。退かせるぐらいの被害を与えなければ。」
「は・・・はい・・・。」
フィリップは小さくなってしまった声で答えた。フィリップ部隊と先鋒隊だけでは、兵数、兵の質、将の器、どれを見てもブライト聖騎士団には勝てない。端っこを削ることすらできるわけがない。
それでも、フィリップはOKしたのだ。秘策などはないが。
フィリップ部隊は先鋒隊の陣へ急いで走った。
「フィリップ、お前はただの捨て駒だ。これを憶えておかないと、この先、死ぬぞ。・・・いや、どちらにしろ死ぬか。」
ジョゼフは笑った。フィリップ如き、簡単に操れるのだから。
フィリップ部隊が先鋒隊に合流したときには、既に戦が起こっていた。
「面倒だな。おい、早く片付けて休むぞ!」
休むために戦う、この考えはなんだかおかしい。
・・・当然、フィリップ程度が来ても、騎士団には勝てない。まだ、ヴィクトリィもスプレンダーも来ていないのだが。
「押されてるぞ!何とかしろ!」
無理だ。
ジョゼフ部隊が来たようだ。ありがたい!これで生きれる。
「全く、お前は一人では何もできないのだな。」
へっ。ジョンを殺すことは出来たけどな。
・・・いや、ジョンは今は死んでいるが、フィリップの策が原因ではない。

新米奇襲

「ドドドドド・・・」
砂ぼこりが舞う。ジョーンズの奇襲部隊である。
騎士団はフィリップ、ジョゼフ部隊に勝っているが、油断はできない。
・・・ギルトは落ち着くことができなかった。
せっかく見付けた富と名声。それもこれもこのピュア湖を偶然見付けたからだ。ピュア湖はもとは小さな湖だったが、今は人工的に大きくした。余りにも売れるので、湖の水が足りなくなったからだ。この湖は清水で有名。そうさ、この湖を有名にしたのもこの私。私は、このピュア湖は絶対に、誰にも渡さない。子孫にもだ。
「むー・・・どうすればピュア湖の管理者のままでいられるか・・・。」
答えは、意外と簡単に見つかった。・・・そうだ。裏切ればいいのだ。ピュア湖の管理者のままでいることを条件に。それなら敵も承諾してくれる。
「よし、行くか。」
要は自分の身が安全ならいいのだ。だから、味方の兵などいらない。
ギルトはピュア湖を後にして、ジョーンズ部隊の方へ歩いていった。奇襲されることは知らないが、戦場の真ん中を堂々と歩くよりはいい。
「ジョーンズ様、敵か味方かわかりませんが、一人、この先にいますよ。」
前方の兵に言われて、ジョーンズは前へ進んだ。
「貴方は?」
突然、聞かれたので、ギルトは当惑した。
「え・・・私はギルト。この先にあるピュア湖の管理者です。」
と、ギルトは言った。
「なら敵だな。」
と言って、ジョーンズは槍を持ち直す。
「いやいや、違うんです。私は投降しに来たんです。」
「投降?何故だ?」
「私はピュア湖の管理者でいれれば、それでいいんです。だから、私をピュア湖の管理者のまま、ブライトに降伏したいのです。」
「ほう。いいだろう。その言葉が真実でも嘘でも、たいした変わりはないからな。」
「ほ、本当ですか!?いや〜助かります。では、私は戻って謀反の準備に取り掛かりますので。」
と言い、ギルトはせかせかと戻っていった。
「自分の地位さえ確保できればそれでいいのか。忠義のカケラもない奴だ。ここは上手く利用するのがいい。」
騎士団は正面から行ったのに勝ってしまい、ジョゼフ、フィリップ部隊は散り散りになってしまった。
「こうも簡単に勝てるとはな。ジョーンズの奇襲は無意味だったかもしれん。」
ヴィクトリィがそう言った。それでは、ジョーンズの立場がない。
とそこへ、伝令が駆けつけ
「伝令!敵援軍が近づいています!敵将はマッチです。」
「そうか。さっさとピュア湖を奪ろう。」
騎士団がピュア湖へ向けて進軍し始めた。
ギルトの謀反により、マッチ軍は内部から混乱している。これには、ジョーンズも鼻が高い。
騎士団も来て、マッチ軍はせっかく来たのに、なんの活躍もできずに撤退していった。
「ジョーンズ、よくやった。さて、ギルト、お前の地位だが・・・」
ギルトはわくわくしている。結果は分かりきっているようなものなのだが、やはり、人間、目の前に良いことがあれば、わくわくするのだ。
「お前は一般人になれ。平民として、自分で生きる術を身に付けて、生きろ。」
この言葉に、ギルトはしばらくこの意味を理解できなかった。
そして、やっと理解したのきにはあごがあんぐりと開いていたのである。
「そ・・・そんな・・・。私は裏切ったのですよ!なのに、こんな処遇は・・・」
「お前は平民だ。これ以上喋るな。」
とヴィクトリィに止められてしまった。
「団長、この処遇は酷過ぎるのでは?」
傍のスプレンダーが言った。ヴィクトリィの傍である。
「何も酷くなどない。裏切り者に対する適切な処遇、対処だ。」
ギルトはトボトボと陣から帰っていく。実家に帰るのか。どこへ向かっているのかは、誰にもわからなかった。ギルト自身、わからなかったのだから。