皇帝様ご出陣(計略編)

秘策、火計!VS水計!

「タッタッタッ・・・」
陣内では忙しそうに兵達が走り回っている。・・・ここはセイクレッド本陣である。
言っておくが、アイリーンとロイアルの感動のご対面はない。親友のチェリーの父、ジョンが死んだのだから。
「セイド、よくぞ戻ってきてくれた。アーマメントとの休戦、ブライトとの同盟、見事だ。その活躍ぶりを、この戦でも発揮して欲しい。」
アーミィが言った。言われたセイドは照れるばかりである。なんたって、国王兼兄にほめられたのだから。
「ありがとうございます。国王。」
「その話し方はやめろ。今、この天幕の中にいるのは私とお前の二人だけだ。私のことは兄と呼んでくれ。」
「わかりました。兄・・・上。」
「どうしても敬語になるのだな。仕方ない、その兄上でいい。」
「すいません。」
「さて、やって欲しいことがある。・・・」
ここは伏せておきたい。ご勘弁を。
さて、伝令の向かったブライト陣を見よう。
「アーミィ殿は、ブライトには側面から進軍してもらいたいと?」
ブライトネスはいささか不満げ。そりゃそうだ。せっかく味方してやったのに、側面から奇襲なんて、手駒のように扱われなければならないのだから。
「はい。国王はそうおっしゃって・・・。」
「我らブライトを手駒扱いするのが、セイクレッドでは礼儀に値するのかな?」
「そ、そんなことは・・・!国王は、追撃はブライトに任せる、と言ったんです。」
「ふむ・・・後のことはブライトに任せる、ということかな?」
「多分・・・そうでしょう。私はただの伝令ですから、詳しくは・・・。」
伝令は相当困っている。相手方を不満にさせて、裏切られては困るのだ。
「仕方ない。では、準備をしよう。与えられた任務を見事、果たしてみせる。」
「はっ。了解していただき、ありがとうございます。では・・・。」
伝令は天幕から出た。
伝令が出て行ったのを見ると、ブライトネスは深くため息をついた。
「むう・・・アーミィよ。ブライトの力なくして、ここまでイモータルに打撃を与えることはできなかったはずだ。恩を仇で返したいのか。子供め・・・。」
確かに、アーミィは子供だ。他の国王は4、50ぐらいなのに対して、アーミィはその半分程の、25である。ブライトネスから見れば、まだまだ青春真っ盛りの子供だ。
だが、その子供が国王になったということは、それだけ有能だということだ。
伝令がセイクレッド本陣に戻り、アーミィにこのことを報告した。
「やはり、ブライトネス殿はいやいや承諾したか。ブライトとの同盟はこれからも続けていかなくては、セイクレッドは貧困するからな。機嫌を取っておかないと。」
「では、どうするんですか?」
「そうだな。だが、側面奇襲の任は捨てられては困る。後で活躍させて、ご機嫌を取るか。伝令、お前はもう、休んでいいぞ。」
「はい。」
伝令が天馬kから出る。
「さ、イモータルもそろそろ動き出す頃だ。俺の秘策、思う存分に味わってくれると、つくった俺もありがたい。」
アーミィはそう言って、立ち上がると、外へ出て行った。
ブライト軍は奇襲しに進軍したそうだ。
イモータル軍のジミーが先鋒を務めているらしい。いや、もう来た。
アーミィは戦場にはいない。どこにいるかは、後で言おう。
「お、来やがったな。行くぞ!」
ソルジャーが言った。セイドやアウトロー、ロイアルなどが北の森の中へ入っていく。ジミーはこの中に来ているのだ。
「どこだ?んにゃろう。」
ソルジャーは愚痴りながらも探している。
「親父、そろそろ・・・。」
と、セイドが言った途端に森の中を炎がまわる。
「来たか。火を消せ!敵が来るぞ!」
セイドの命令に兵は素早く動き出し、消火活動を始めた。え?どこに水があるんだって?もちろん、こんなこと、アーミィに予想できないわけがない。火計を予想して、水は事前に用意してあるのだ。
一斉に水をかけて、火を消した。そこへ敵が来る。
「火を消した?なんて用意がいいんだ・・・。」
敵将が言った。用意がいいんだ・・・、じゃない。感心してどうする?それだから名もない将なんだ。
既に、セイド軍は森からいなくなっていた。そして、代わりに濁流が流れ込んできた。
「な、なんで水が・・・?」
アーミィの水計である。この北の森の付近は土地が低くなっているので、水計がよく効く。

追撃

「ザー・・・」
水の流れる音というのは、それが例え濁流でも、いいものだ。
あくまでこれは、私の考えだが・・・。
「森をも折らす力、さすがは水計だな。」
アーミィは流れる濁流を見て、思わずそう言った。
「ブライト軍が追撃してくれていることだし、セイクレッドも遅れてはならない。全軍、追撃しろ!」
伝令も騎乗して走り、セイクレッド軍は全軍、追撃し始めた。
「むっ、セイクレッドも追撃し始めたか。ブライトが遅れてはならん!イモータル兵を皆殺しにしろ!」
ヴィクトリィが叫んだ。先陣の部隊には聞こえないが、先陣にいるスプレンダーには、なんとなく聞こえた。
「ヴィクトリィ、先に行くのだ!聖騎士団は追撃しろ!」
ブライトネスが命令する。ヴィクトリィは応諾したようにうなずき、敵中を走っていった。続いて聖騎士団も突撃する。
「追撃は騎士団に任せ、ここは我らで押す!セイクレッドを出し抜くのだ!」
その時、ちょうど、セイクレッド軍が来た。ブライトネスは不満げな顔をした。
アーミィがブライトネスのもとへ来た。セイドと違って、馬には乗れるのである。さすがは王室育ち。
「どうしたのだ、アーミィ殿?」
「セイクレッドはここで敵を逃がさぬよう、食い止めていますから、ブライト軍は追撃してください。」
「だが、セイクレッドだけでは足りまい。それに、既にブライト聖騎士団を追撃させている。我が軍はセイクレッドの援護をすればよかろう?」
「そうですか。では、セイクレッドからはセイクレッド騎士団を追撃にまわします。本軍でここのイモータル軍を倒し、後から追えばいいでしょう。」
「うむ。ならば、早く我らでこのイモータル平原を制圧するのだな。」
「では・・・。」
アーミィはセイクレッド兵の方へ行った。激戦でも、まだ混戦していないのだ。途中、敵兵をついでに、という感じで斬っていたのが見える。
「セイド!」
兄に呼ばれたセイドは、敵を斬ってから振り向いた。
「はい。何ですか?」
「エドワードに言ってくれ。騎士団は追撃しろ、とな。」
「わかりました。でも、何故私に?」
「セイクレッド騎士団は、今はお前の管理下にあるからだ。」
「そうですか。では。」
セイドが走る。白い服には大量の血がついているのが、アーミィには見えた。もちろん、セイドの血ではなく、敵兵を斬ったときの返り血である。
殿軍を務めたイモータル兵は、死んだか、捕まったか、逃げたかのどれかの道をたどった。
セイクレッド、ブライト本軍はすぐさま、追撃を開始した。