アネクメーネ砂漠
お尋ね者
「ザッザッザッ・・・」
ここはエクメーネ城の背後に位置する、アネクメーネ砂漠。ウラヌスが来たいと言っていたのはここだ。・・・ウラヌスを忘れている人、実は私も少し、ウラヌスを忘れていたので、罪悪感を持たなくてもいい。戦えるけど、一兵卒じゃ、名前を出すのも難しいのだ。
アネクメーネ調査隊の隊員はセイド、アウトロー、チェリー、そして、忘れてはならない、ウラヌスである。エドワードがいたら、加えていたのだが・・・。
「おい、ウラヌス。こんな砂漠に何の用があんだよ?」
ここにいる全員はセイクレッドかアーマメントで育ったので、熱い、灼熱の砂漠は大の苦手である。マングローブでも根を上げていたアウトローが平気でいられるわけがない。
「用?わしはここの住人に会いたいのだ。」
「こんなところに人が住めんのか?俺なんか一日で死ぬぜ。」
「住んでいるのだ。追放された、とでも言えばいいか。」
とそこへセイドが混じり
「追放?何故?」
と聞いた。
「追放というか・・・逃げたのだ。ここへ。」
「逃げた?こんなところへ?」
「そうだ。だが、わしも詳しくは知らん。後のことは会ってからだ。」
・・・しばらくの沈黙。探すことに専念しているのだ、と言いたいところだが、なんと言っても、砂漠は見晴らしが良い。専念しなくても、適当に探せば大体見付かるだろう。
「あ〜もうだめだ・・・。水くれ〜!」
アウトローは座り込んで、舌を出す。
「だめだ。まだ水を飲んではならない。だいたい、お前が飲んだらあっという間になくなってしまう。」
セイドが拒否した。水持ち係りはセイドなのだ。
「おお・・・!見えた。あいつだ!」
ウラヌスはまるで、何かにとりつかれたかの様に、フラフラと歩いていった。
「お、本当だ。誰かいるぜ。」
「あ、ああ。そうだな・・・。」
セイドも、とりつかれた様にフラフラ歩いていく。
「どうしたんだ、セイド?熱くて頭がイカレちまったか?」
「いや・・・。なんだか・・・足が勝手に動くのだ・・・。」
セイドとしては、本当にそうだった。アウトローは不思議そうにセイドの足を眺めている。
歩いた先には、美しい、白い肌をした金髪の美女が立っていた。ウラヌスと何か話しているようだ。
「おい・・・あいつか?俺達の探してる奴って?」
セイドは聞く耳持たぬ、という感じで、どんどん金髪美女のところへ歩いていく。
「セイド?どうしたんだよ?惚れたのか?」
冗談で言ったのだが、チェリーは酷く傷ついた。
セイドはやはり、聞いていない。
「おい、チェリー?どうした?冗談で言ったのに・・・。お〜い。・・・何でここには俺しかまともなのがいないんだ〜?」
聞いても答える人はいない。なんったって、お前しか、正常な奴がいないんだから。
・・・チェリーは金髪美女の姿を見て、負けた、と思った。自分の数倍、いや、数十倍、違う、数百倍も美しいのだ。同性である自分がこう言っているのだから、相当なものだ。・・・そう。セイドはキレイな金髪の方がいいんだ・・・。私はただの足手まとい・・・。ふう・・・。
「しゃあねえな。チェリーには休んでもらうか。お〜い。セイドー?」
セイドは金髪美女のところへ着いていた。セイドも何か話している。
対談
「ザザザザザ・・・」
砂が靴に入り込む。巧みに、とは言い難いが。
「セイド、どうしたんだよ?」
セイドは聞いていない。
「おいセイド!」
「うるさい。アウトロー。」
ウラヌスが言った。
「でも、なんか言えよ!」
「・・・始めるか・・・。」
突然、金髪美女とウラヌスとその周りが真っ白になる。
「まぶしっ」
アウトローが手をかざし、光から顔を隠した。セイドは知らんぷりである。
「?なんにも変わってないぞ?」
普通、こういう展開だと、金髪美女とウラヌスがなにか別のものに変化するのだが、私の場合は違う。変わったものといえば、精神だろう。
「久しいな。セレネ。」
ウラヌスの体が言った。この体はウラヌスとは違う、別の精神が支配しているので、ウラヌスの体、といった。
セレネ、これは金髪美女の名前である。
「ええ。いったい、何千年前にお会いしたんでしょうか?」
何千年も前で久しいとは、ずいぶんと、人間とは基準が違うようだ。
「そうだな・・・。まあ、そんな細かいことはいい。本題に入りたいが・・・その前に・・・セイド!起きろ!」
「え?何?」
セイドに入った別の精神は、どうやら寝ていたようだ。
「セイド、お前、これから難しい問題に入るから、寝ていたのだろう?」
「まあ、そんなところです。」
ウラヌスの体は無表情だが、アウトローには苛(いら)立っている、と感じた。
「・・・本題に入る。セイドにも分かるように、簡単に言おう。光の力が異常に増幅している。同時に、闇の力が落ちてきているのだ。このままでは、世が光に包まれてしまう。どうにかして、光の力を減らしたい。」
光が強くなって、闇が弱くなる。良い方に考えているかもしれないだろうが、これはなんとも悪いことだ、世の中が光に包まれて、紫外線だらけになったりすれば、お肌を大切にしている女性は生きていけないだろう。ま、こういうことだ。世の中にある全ての力のバランスがよくないと、全てが狂う。
「光の力?私の責任ですか?」
「お前は光と闇、両方共持っているだろう。半分お前の責任でも、もうひと半分、お前は被害者だからな。ま、そんなことはいい。どうするのだ?」
「なら、光を攻撃すればいいのでは?」
セレネの体が手を挙げて、言った。
「確かに光はもろく、壊しやすいが、今の光の力は強く、我らだけではかなわない。もっと味方がいなければ・・・。」
「そうですか・・・。」
「じゃ、私の光の精神を壊せばいいんじゃないですか?」
平気で言っている。精神を壊すということは、死と同じなのである。
「そんな重大なこと、軽々しく言うな!いいか。お前が死ぬんなら、私が死んだほうが効率的にもずっといい。」
「えー?でも、私が死んだほうが・・・」
「やめてください。死ぬ、死なないの問題ではないんですよ?」
「う・・・うん・・・。」
無表情なのに、シュンとした感じが伝わってくるのが、なんとも面白い。ちなみに、チェリーはまだ立ち直れない様子。
「では、どうすれば・・・。」
「まだ、この大陸に私達のような精神がいるはずです。それをこの体に探してもらって、機を見て、その精神と通信しましょう。ね?」
「あ、ああ・・・。わかった。では、私はもう戻る。ずっとこっちにいると疲れるのだ。神霊世界に戻ろう。」
ウラヌスの体が言った。そして、三人の体は再び真っ白になる。・・・神霊世界というのは、私の考える死後の世界で、全ての精神が集う世界である。物質がないので、なにもないことが永遠に広がっており、全ての精神は拡大しているのだ。
「・・・・・・・・・」
アウトローはしばらく、呆然としていた。
セイド達はふっと我に帰ったようだ。
「どうした?アウトロー。何があったんだ?」
セイドには、なにがなんだかわからない。とにかく、チェリーが立ち直れなくなっていることがわかった。
ウラヌスはセレネを見た。
「おお、セレネ!わしがどれだけお前を探したことか!」
「ウラヌス・・・?」
「ああ、そうだ。わしはウラヌスだ。セレネ、よくぞ生きていた。」
ウラヌスとセレネ、ただの親戚なのだが、深い関係があるのだ。いや、恋人とかそういうものではない。もっと清い関係だ。
「チェリー、どうした?おーい。」
チェリーは呆然としている。
「チェリー?・・・」
セイドはチェリーの頬を軽くつねった。
「痛っ。」
「起きたか。ずっと呆然としていたから、心配したぞ。」
「セイド・・・。」
「さ、歩けるだろう?熱いから、早く帰ろう。」
熱い・・・?・・・・・・・・・!!!そうだ。熱いんだ!・・・って思い出したらあっつ〜!
アウトローはいきなり汗をだらだらと流し始め、服で汗をぬぐった。
「早く帰ろうぜ。熱くて仕方ねえ。」
「そうだな。帰ろう。」
セイドが仕切り、帰っていく。