栄光

細工物授与

「・・・・・・」
辺りは静まり返っていた。ここはセイクレッド首都、豊城の祭壇である。
いつもなら、この祭壇は祭りに使うのだが、今回は、祭りよりも、セイクレッドの民や兵にとってはうれしいことがあったのだ。
イモータルの滅亡。セイクレッドにとってはこれほどの良い事はない。
祭壇のに急遽、設けられた仮の玉座には、アーミィが威厳のオーラを放ちながら座っている。もちろん、それは祭壇の一番上にあり、下の兵、民はその威厳に圧倒されながらも立っている。
玉座の目の前には、セイドやソルジャーなど、イモータルを滅ぼす上で活躍した将達がズラリと、ショーケースの中にある商品のように突っ立っている。
玉座の横には、セイクレッドを支える大陸最大の部族、そして、大陸で一番変な部族である、かまくら族の長、ニブル・ヘル・ヘイムが立っている。
「それでは、栄光の授与を始める。」
玉座から立ち上がったアーミィが言った。祭壇付近の全員がゴクッと息を呑む。
「セイクレッド軍内で最大の活躍をし、隣国、アーマメントとの休戦、今まで全くの交流を持っていなかったブライトとの同盟、見事であった。・・・アーノルド・クルーセイド殿。」
アーミィが言うと、セイドはひざを突き、一礼。そして立ち上がり、ニブル・ヘル・ヘイム(以下ヘイム)から宝石を受け取った。
「その宝石はカコクセナイト。栄光、勝利の意味を持つ石だ。」
ヘイムがそう言うと、セイドは元の場所に戻った。カコクセナイトの中をセイドが見てみた。少しだけ、チラッと。石は透明で、オレンジ色の線が入っている。
・・・・・・ま、こんなことを何十回も繰り返し、兵、民は疲れた顔を必死で隠していたのだ。
「国王、次はあなたの番です。」
と、ヘイムが言った。
「私がか?」
アーミィは横のヘイムを見て言った。
「はい、そうです。」
「では、やるか。」
アーミィは玉座から立ち上がって、セイド達の先頭へ来た。
ヘイムが息を大きく吸った。
「・・・セイクレッド国王、すなわち、アーミィ・S・セイクレッド殿。セイクレッド軍の総指揮を務め、イモータルを滅亡に至らせたその力、ここに称えます。」
ヘイムが言い終わると、兵や民から歓喜の声が湧き上がってきた。クーセイド、と言われないのは、セイドと兄弟なんじゃないか、と思われないためだ。
「万歳!セイクレッド万歳!」
セイドはそれを見下ろし
「さすがは国王。民や兵から絶大な支持を得ているな。」
と、言った。
アーミィはセイドと同じ、カコクセナイトをもらい、振り返って将達に向かって来る。
道を空けると、アーミィはその真ん中を通り、祭壇を一歩一歩確実に降りていく。
降りるごとに歓声は大きくなり、アーミィの耳を痛ませた。だが、こんなので負けられん。
祭壇を降り終わると、立ち止まった。歓声が急になくなり、静かになる。
「俺と共に戦ってくれた兵士達、戦場には出ていなくても、後ろで支えてくれた民達、お前達のおかげでイモータルを破ることが出来た。これかれも、未熟な国王を支えてくれ。」
アーミィは静かに言い、自分の仕事をするため天守閣に戻っていった。
兵、民は静かに、それぞれの家なり仕事場なりに帰っていく。
取り残された将達もぞくぞくと帰っていってしまう。
「そんなに帰りたいのかねえ?」
ソルジャーはボソッと呟いた。
「よかったよかった。イモータルを滅ぼして、もう、疲れた。親父、帰らないのか?」
セイドがあくびなんてしながら言った。式の緊張から解き放たれて、疲れたんだろう。
「おう。早く帰ってメシだ。メシ!」
セイド、ソルジャー親子は祭壇を降りていく。それに続くかのように、残った将も帰っていく。
それぞれの将がもらった宝石を言っておこう。名前が出ている者だけなので、ご注意を。
セイド、アーミィは言ったので、ソルジャーだ。もらった宝石はアメシスト(紫)。石言葉は酒に酔わない、とある。他にもあるのだが・・・。酒を飲み過ぎている親を心配したのだろう。
ソローはタイガー・アイアン(金っぽい茶)。勇猛、強い、信念の意味を持つ石だ。信念よりも、恨みの方がよっぽど強いが・・・。
ギフトはサンストーン(血のような赤)。輝きの意味を持つ。ギフトの活躍が輝いている、ということだろう。
アウトローはガーネット結晶(赤)。石言葉は闘争、達成。盗賊としての闘争か、戦争での闘争か、わからないが。
アイリーンはレース・アゲート(土色)。勇気の意味を持っている。小柄で女性だというのに、前線で戦っていたからだろう。
ロイアルにはアジュールマカライト(深緑)。石言葉は名声、栄誉。戦での戦闘で活躍し、多くの兵士に頼られたからか。
今は亡きエドワード。セイクレッド騎士団副団長代理ながら、セイドを支えた。墓に宝石を与えた。イエロー・ゴールド(金)を。石言葉は忠誠。
そして、セイクレッド騎士団団長もいる。名はつくっていないが。宝石はスモーキー・クォーツ(煙のような色)。責任感、不屈の精神の意味を持つ。

祭り後

「トットットッ・・・」
セイド達は静かに歩いていく。自分の仕事場へだ。
「ん?親父、どこに行く?」
セイドは疲れた顔で言った。ソルジャーがセイド達とは別の方向へ歩いていくからか。
「農民の手伝いだ。書類の仕事なんてやりたくないからな。」
「そ。じゃ、私がその仕事をもらうから、しっかり精を出して働くといい。」
将のくせなのか。親に対して命令しているようだ。
ソルジャーがセイドの隊列から去って行った。
「なあ、セイド。」
ギフトがセイドの横に来た。
「なんだ?」
「俺達もどっか他のところに行くから・・・いいよな?」
「俺達・・・?」
「ああ。俺やアウトローとかな。」
「そうか。勝手に行け。だが、仕事は受け持たないぞ。」
「わかってるって。じゃあな。」
ギフトが手を振り、セイドとチェリーだけが残ってしまった。だが、セイドは気にしない。
しばらく歩いていると、アーミィが現れた。
「国王。」
「セイドか。やっと会えたな。」
と言って、セイドをチェリーから離す。
「なんですか?兄上。」
「まあまあ、弟よ。この宝石をチェリーに渡すといい。石言葉は・・・」
ごにょごにょ・・・だ。これはセイドに言ってもらう方がいいので、ごにょごにょ・・・にした。
「・・・で、私にそれを渡せと?」
「ああ、そういうことだ。よろしくやってくれよ。」
「あ、ああ・・・。」
よろしくやってくれよ、って、私は・・・。
セイドは悩みながらもチェリーのもとへ帰ってきた。
「なんだったんですか?」
と聞かれ、少々戸惑う。返事を用意していなかったからだ。
「あ、ああ・・・。国王が、私にこれを。チェリーに渡すように言ったのだ。」
と言って、ごにょごにょの宝石を手渡す。
「なんて名前なんですか、これ?」
石を眺めながら、チェリーが聞く。
「ああ・・・。アンバー(琥珀)というらしい。石言葉は抱擁と大きな愛だそうだ。」
スラスラと言っていることが、自分でも不思議だった。いつもよりスラスラとしているではないか。
「抱擁と大きな愛・・・?」
「ああ。国王は私に何をしろというのだろうか。」
本気でそう考えているようだった。ショックだが、まあいい。セイドが存在するだけで、私は・・・。
「さ、早く仕事に移るぞ。私は早く書類と戦いたい。」
手がうずうずしてくる。今まで人を斬りながら書類に目を通していたから、ひとつのことだけで済むのなら、早くやりたい。
チェリーはため息をついた。
「どうした?何かつまらないことでもあったのか?」
セイドが心配してくれている。やれやれ。どこまで鈍感なんだろうか、この人は。
「いえ、なにも。私も早く仕事がしたくて。」
逃れるための口実ではなく、真実である。口実も少し含まれていたのかもしれないが。