ブライト乗っ取られ
宿
「カツ・・・カツ・・・カツ・・・」
何とか逃げ延びたグロウ達。これからどうしようか、歩きながら言い合っているところだ。
「・・・それで、これからどうするのだ?」
グロウが言った。
マッチが手を挙げた。作戦会議のしすぎでついてしまったくせだろう。
「マッチ、なにかあるか?」
「はい。今まで、攻めて来ることなどないだろう、と思っていたブライトが攻めてきたので、負けてしまったのです。この恨み、ブライトを滅ぼして果たしましょう。」
フレイムがボロボロになった、刃のない槍でマッチを突付くと
「我々は百人にも及ばないのに、どうやって一国をとるのだ?」
と言った。
マッチはフレイムを見る。
「問題ありません。我らは投降を装い、スキをついてブライトネスを捕縛、ブライトネスを殺す、とでも脅してやれば、軍事力の低く、宗教しかないブライト国民なら、簡単に従いましょう。それでも、蜂起しないように、善政を布き、ブライトネスを殺さずにいるのがよいと思います。」
グロウはすぐさま
「決まりだ。さっそく、投降者を装うぞ。」
と言った。
グロウの横にいるゼロスが、マッチに質問を出した。グロウのはりきりなど無視している。
「マッチ軍師、一体、誰がブライトネスを捕縛するのだ?」
「それは、この中で一番素早い動きが取れ、かつブライトネスが暴れても逃がさない腕力が必要です。」
「早さと力か・・・。」
「はい。ですから、私はゼロス将軍が適任かと。」
「私がか?」
「はい。危険ですが、ゼロス将軍ならやってくれるでしょう?」
考え込んでしまった。う、うーん・・・そこまで言われたら、やってやろうじゃないか。
「・・・わかった。だが、武器が必要だな。私の腕力は人の首を折るほど持っていない。」
本当は持っているのだが、謙遜して言ったのだ。これくらい、マッチでもわかる。
一人、はりきっているグロウは、後ろを向いて
「さ、早くブライトネスを捕まえるぞ。モタモタするな。」
と言って、地平線に見える小さな村へ走って行った。
「あれが我がイモータルの皇帝様か・・・。」
ゼロスはやれやれ、という感じに手を上を向いた形で肩の辺りまで上げた。マッチ達も同感だが、行動に移さないだけだった。
村へ入り、一泊してもらい、次の町か村へ急いだ。
善は急げ、皆の頭の中にこの言葉が浮かんできた。
それから何日も過ぎ、セイクレッド、ブライト同盟にアーマメントが怯えている頃、一行はブライト首都、魔学都に着いた。
「やっと着いたか。」
誰もがそう言って、地面にひざを突く。
一番早く立ったのはマッチだった。
「さあ、ゼロス将軍、短剣でも買いましょう。ブライトネスを脅すための。」
ゼロスは謙遜で言ったつもりだったが、マッチはわかっていないようだ。
「あ、ああ。」
仕方なくゼロスは立って、マッチの横に着くと、歩き出した。
半ば眠りかけていたグロウは、立ち上がった。
「ゼロス、イモータルは不滅だ。イモータルの命運がお前の手にかかっている。」
そう言うと、またひざを突き、今度は完全に寝てしまった。
「皇帝、皇帝。」
と言って体を揺さぶっても、返事は帰ってこない。
「やれやれ。宿を探そう。皇帝にこのままここで寝てもらっては通行人にも迷惑がかかる。」
フレイムが言って、グロウの体を持ち上げた。一人では持ち上げられないので、ジョゼフも手伝った。
夕暮れ。魔学都に着いたときはまだまだ昼だったのに、宿を見つけて一息ついた頃には日が暮れていた。
フレイムとジョゼフがグロウを布団に寝かせた。この時代では、ベッドなんて、持っているのは貴族や王ぐらいだ。
「ふう、疲れたな。ジョゼフ、休むか?」
フレイムが手を腰につけて言った。
「はい。そうさせてもらいます。」
フレイムとジョゼフは深い眠りに就いた。他の将は別の部屋で寝ている。
・・・夜。雲に覆われた空を月が照らし、幻想的な演出を見せている頃、ゼロスとマッチが帰ってきた。
ドアをノックするが、返事はない。
「フレイム将軍、どうしましたか?・・・入りますよ・・・。」
マッチがドアを開けると、グロウ、フレイム、ジョゼフはきれいに三人揃って川の字をつくっていた。
マッチの後ろからゼロスが顔を出した。
「この三人にイモータルの命運がかかっているのはな。・・・マッチ、別の部屋を見てみろ。他の将も寝ているだろうから、起こしてこい。」
「はい。」
マッチは部屋から出て、隣の部屋をノックした。
「ん?誰だ?」
部屋の中から声がした。
「マッチだ。・・・起きてくれ。今晩、実行したい。」
「・・・え?もうやるのか?」
「そうだ。だから、他の人も起こして・・・」
グーと大きないびきが聞こえる。
「・・・やれやれ、眠ったのか・・・。・・・入ります。」
ドアを開けると、目の前には人が、気持ちよさそうにいびきをかいている。これは地味将軍か。
奥へ目をやると、フィリップも寝ていた。
「地味将軍、風邪ひきますよ。・・・じゃなくて・・・起きてください。実行しますから。」
ジミーの体を揺さぶった。目が半開きする。
「マ、マッチ軍師!どうしたんですか?」
「実行だ。フィリップも起こしてくれ。」
「・・・ああ・・・。」
ジミーは睡魔と激戦を繰り広げながら、フィリップのもとへ向かい、軽く蹴った。
「おい、起きろ。実行だ。」
フィリップが起き上がる。
「もう実行なのか?」
「そうだ。早く。」
「はいはい。」
フィリップは寝癖を直し
「マッチ軍師、もうやるんですか?」
と、聞いた。
「ああ、善は急げ、だ。早く、皇帝も起きている頃だから。」
三人はグロウの部屋へ入った。
「遅かったな。もう準備万端だ。さあ、ブライトを滅ぼし、今宵、イモータルの旗を再び掲げるのだ!」
グロウはまだ、寝ぼけているようだ・・・。
「じゃ、皆揃ったことだし、行きますか。」
フレイムが仕切る。グロウが仕切っては始まりそうにないからだ。
イモータル諸将は宿を出て、ブライトネスのところへ急いだ。
投降者
「タッタッタッ・・・」
やっぱり、静かな夜には足音が聞こえやすい。別に見つかってもどうってことないのだが、なんとなく見付かりたくないのだ。
「止まれ!」
門番二人が槍を構える。
「ブライトネス殿に会いたいのだが・・・。」
フレイムが言った。
「身分は?予定には入っているか?」
「いや、入ってない。」
「それでは入れられん。さあ、帰った帰った。」
門番二人がシッシッを手を縦に振る。妙に揃っているのが恐い。
「あいにくだが、私達は急いでいる。お前達如きに阻まれる覚えはないのだ。」
と言って、フレイムは腰から剣を出して見せた。
「力ずくか・・・!させん!」
「いや、お前達を殺すつもりはない。無駄に剣を刃こぼれさせるだけだからな。」
フレイムはこの門番二人を怒らせている。
「むう・・・通れ。武器が全て捨ててな。」
「通してくれるのか?」
「ああ、そうだ。だから早く消えろ。」
門番は、ただ、早くこいつらを追っ払いたいのだ。
イモータル諸将は武器を全て捨て、門番のチェックを受けてから、内部へ進入した。もちろん、ゼロスは短剣を隠し持っている。
しばらく進んで、扉が見えた。ここにも門番がいる。
「何用だ?」
「ブライトネス殿にお会いしたい。」
ここでもフレイムが答えた。
「お前ら、身分を証明するものを見せろ。」
「身分?いいぞ。答えてやろう。私はイモータル征北将軍、フレイムだ。我らはただ、ブライトに投降したいだけだ。武器は持っていない。」
と言って、手をブラブラさせてみせる。
「・・・そうか・・・。なら、今の謁見が終わったら、入ってくれ。」
門番は納得した。困惑もしているようだが。
門が開き、人が出てきた。謁見が終わったようだ。
「よし、お前ら、行っていいぞ。」
門番が言うと、諸将は静かに入って行った。
「ん?予定では長老が来るはずだったのだが?」
ブライトネスが玉座に座り、諸将を不思議そうに眺めている。
「私達はイモータルの将。投降をしに、ここまで来ました。」
フレイムが言った。
「イモータルか。・・・!?・・・お、お前達・・・何が望みだ・・・?」
ゼロスが懐に手を入れる。
「望みは・・・」
ブライトネスに向かってしっかりと、確実に迫っていく。
「この国だ!」
ゼロスがブライトネスを捕まえ、短剣を首につけて脅す。
「お前ら!よ〜く聞け!たった今、ブライトネスは私の手によって捕まった!この王とお前らの命が惜しくば、おとなしく降伏しろ!」
辺りはシンと静まり返った。ブライト聖騎士団団長、ヴィクトリィと、副団長、スプレンダーはなにやら話している。
ヴィクトリィが一歩、歩み出た。
「お前は・・・?」
ゼロスが聞いた。
「ブライト聖騎士団団長、ヴィクトリィだ。・・・王の命がかかっているならば、おとなしく降伏する・・・。」
「そうか。降伏するか。よし、ブライトネス。今日からブライトはイモータルと国号を変え、国王はグロウ皇帝にする。異議は?」
「ない。もう、好きなようにしてくれ。」
「そうか。よし、奥に部屋があるな。ブライトネスはそこにいてもらう。グロウ皇帝。やはり、イモータルは不滅ですな!」
「ああ、そうだとも。みんな、イモータルに乾杯!」
飲み物一つないが。まあ、あると言えばある。それはもちろん、血だが。
ブライトはイモータルへと国号を変え、グロウはイモータル皇帝に就いた。
グロウは善政の限りを尽くし、民や兵の反乱を防ごうとした。
ブライトの宗教、習慣、民族などを大切にし、以前のブライトネスよりも善政を布いた。
ブライトネスも充分な食べ物(エサ、と諸将は言っている)を与えている。
善政のための金は貴族などから徴収して、ブライト人にとっての外国人のイメージとは別の人物をやってみせた。
これでOK牧場。問題なしだ。財政にかなり問題があるが、そこはぜいたく制限と金の徴収でなんとかカバー。
「・・・ゼロス。せっかく国を乗っ取って安定しているのだから、セイクレッドを攻めてみないか?」
グロウは玉座に座っており、ひざまずいているゼロスを見下ろしている。
「セイクレッドを攻めるのですか?では、その役、私がかって出ます。皇帝は反乱に備えて、更なる善政を。」
「わかった。では、ゼロスには三十万の将兵を与えよう。増援は期待するな。その兵だけでセイクレッドを滅ぼすのだ。」
「はい。では、さっそく手配書を・・・。」
「わかっている。」
グロウは玉座の横にある机の上の紙を取り出し、筆をとった。
スラスラと書いていき、書き終わったようで、ゼロスに手渡した。
「これでどうだ?」
「・・・総指揮官、ゼロス。副指揮官、ジョゼフ。ジミー、フィリップ・・・。・・・これでいいです。では、手配してきます。」
「ああ。」
ゼロスは謁見の間を出た。
三十万か・・・。今まで動かしたことのない兵数だな。これだけいれば、セイクレッドも怯えるだろう。
ゼロスは早くも、勝ったときの酒宴の様子を頭の中に浮かび上がらせていた。