白山奇襲戦
重要拠点
「ザクザクザク・・・」
雪がゼロス軍の進軍を遅れさせる。だが、雪如きに負けられない。
慣れない道で、軍は遅い。
伝令が歩きにくそうに大股で歩いてきた。
「伝令!この先のセイクレッド雪原には敵本軍がおります。敵将はアーミィ。」
ゼロスは馬に乗っているので、伝令を見下ろしている。
「そうか。・・・近くに敵の兵糧庫とかは無かったか?」
「兵糧庫・・・ですか・・・。白山という、小さな山がありまして、多分、敵はそこに兵糧庫を・・・。」
「わかった。ジョゼフとジミー、フィリップを呼んでくれ。話がしたい。」
「はっ。わかりました。」
伝令がまた、歩きにくそうに歩いていく。ゼロスはそれを見送りながら、寒さに体を震わせていた。
ジョゼフなど、三人の将がやって来た。省略したところは、フィリップが怒りそうだ。
「来たか。早速、本題に入る。ジョゼフ、フィリップ。敵本軍がセイクレッド雪原に駐屯しているらしい。そいつらと適当に戦っていてくれ。私とジミーは敵の兵糧庫があるかもしれない、白山へ奇襲をかける。」
「はい。ですが、我々だけで敵の本軍と渡り合えるでしょうか?」
ジョセフが不安な顔で言った。
「適当に、と言ったろう?勝つ、負けるが問題ではなく、敵を引き付けることが目的だ。その間に、白山の奇襲を成功させる。」
「そうですか。」
「さ、早く行け。」
四人は別れ、それぞれの兵を集め始めた。
白山奇襲部隊、ゼロスとジミーは行動に出た。
「急げ!」
ゼロスは兵士達にそう言って、走り出した。雪が邪魔で、かなり遅い。
白山に到着した。奇襲部隊は休むことなく、走り続けている。
「休むな!敵兵を一人でも多く倒せ!」
ゼロスは槍を掲げ、叫んだ。
「わっ!て、敵だー!ゼロスだー!」
敵兵のわめき声が聞こえる。これなら簡単に落とせそうだ。
「やはり、兵糧庫があったか。・・・ん?」
ゼロスの視界に、隠れている兵士の姿が見えた。
「伏兵か。油断できんな、アーミィめ。」
「わーっ!伏兵だ!」
味方の兵の声のようだ。ゼロスは、こんなところに伏兵を置いた憶えはないので、そう思ったのだ。
「臆するな!伏兵といっても、たかが少数。力と数で押しつぶせ!」
ジミーの声だ。・・・ジミーめ、立派になったな。
「皆、ジミーに続け伏兵を潰すのだ!」
敵兵が山を下り、逃げていく。
「敵を討ち漏らすな!逆落としで勢いをつけるのだ!」
ゼロスが叫ぶ。
奇襲部隊も白山からいなくなっていた。残ったのは、白山名物の白百合の大群と、白いはずの雪が、血に染まって紅くなった雪だけだった。
合流
「ザッザッザッ・・・」
雪は兵士達の返り血に濡れ、鮮やかな血色になってみせた。
奇襲部隊の逆落としは中々効いた様で、敵軍は混乱している。あのまま兵糧庫から物資を、よっこらせっと自陣に運ぶと思っていたのだろう。ゼロスはそんなに甘くない。
敵軍はジョゼフ、フィリップ部隊と戦っていて、疲れているようだ。やはり、戦となれば、敵が弱くとも強くとも、疲れるものなのだ。
ゼロスは、ずいぶんと敵軍深くに入っていた。味方の兵はいるが、これは、ジョゼフの特攻部隊だ。
チェリーをかばっている、セイドの姿を見付けた。
「セイド、いつまでそいつを守るつもりだ?」
セイドはゼロスをにらみ付けた。黙れ、とでも言ってきそうな目だ。反抗期か?いや、違う。
「それは私の勝手だ。叔父上。」
叔父上、の部分は嘲笑したように言った。要するに、バカにしたのだ。
「叔父上、か。お前に叔父上などと言われようとはな。」
「国は違えど、血は繋がっているからな。」
「ああ、そうだな。」
「・・・で、何しに来た?」
「ただ話しに来たのではない。わかるな?」
「私を子供扱いするな。」
と、早口で即答した。
「わかっている。私は特攻隊として、前線を押し、お前らセイクレッド軍を退かせることが目的だ。」
「そうか。なら、私はセイクレッド軍人として軍を勝利に導くだけだ。」
セイドは周りの兵の首を突き刺し、二本の剣の刃先をゼロスに向けた。
「叔父上とやり合うか。」
「ああ。・・・チェリー、下がっていろ。」
「はい。」
チェリーがセイドから離れる。セイドはそれを見ず、ただゼロスをにらんでいる。これが家族なのか?まあ、戦時下に置かれているディヴァインでは、当然なのかもしれないが。
「行くぞ・・・。」
「ソルジャーに似て、血の気が多いな。」
ゼロスは懐かしむように言った。ちゃんと槍は構えている。
セイドが右手の剣をゼロスの槍に当て、槍の動きを一時的に封じ、瞬時に左手の剣をゼロスの首目がけて振る。
だが、ゼロスの厚い鎧が邪魔をして首に当たらなかった。
何十合も打ち合い、ついにはセイドの剣は二本とも折れ、ゼロスの槍は刃が吹っ飛んでしまった。
「ハア、ハア・・・。」
「ハア・・・どうした、セイド?もう、終わりか?」
「やめーっ!」
と叫び声がして、槍がセイドとゼロスの間を飛んだ。
二人、いや、チェリーも含めて三人は、槍の飛んできた方向を向いた。
「セイド!兄貴!勝手にやり合うなんてひでえじゃねえか。俺も混ぜてくれよ!」
「親父・・・。」
「ソルジャーか・・・。」
「な?混ぜてくれ〜。」
頼む!と言うように手を合わせる。
セイドとゼロスは目を合わせてしまった。そして、笑った。笑顔はよく似ているはずなのだが、あいにく、ゼロスの仮面はとれていない。
「ソルジャー、これでは二対一で私が不利だ。そして、まだ私とお前が一騎討ちをするときではない。・・・退かせてもらおう。」
「退くんなら、雪に気をつけて行きな。」
敵を心配するのも妙だ。
「退け!欲張ればアーミィの策にはまるだけだ!」
と言って、ゼロスは帰って行った。
「セイド、一人でよくやったな。さ、酒宴だ!イモータル軍を退かせただけでも、よくやったじゃねえか!」
なんたって、ゼロス軍は二十万(三十万いるのだが、十万の兵はセイクレッド西部のセイクレッド騎士団と戦っている)、対して、セイクレッド軍はわずか八万しかいないのだ。退かせただけでも大喜びだろう。
「酒宴か。私は遠慮しておく。」
「そう言うな。お前だってもう、酒ぐらい飲めるだろ?飲もうぜ〜。」
アウトローとはよくやっていけそうだ、この人は。ロイアルも酒好きなので、良い友なんだろう。