三つ子砦周辺の戦い

三つ子砦で包囲せよ

「ヒュゥゥゥゥゥ・・・」
吹雪である。
話に入る前に、この題名の『周辺』というもの、ネタ切れではないぞ。ちょっとネタがないだけだ(同じことを言っているぞ、おい)。
さて、三つ子砦にはセイクレッド騎士団がおり、無謀にも、それを攻めているのはフィリップ部隊。豊城攻略戦時にいなかったのはこのためだ。
現在、セイクレッド騎士団とフィリップ部隊は交戦中。
伝令が来る。セイクレッド側の、である。
「伝令!敵援軍のジョゼフ軍が迫ってきています!」
「でかした!おし、全軍、一時退け!こんな雑魚と戦っても無意味だ!」
こいつ、セイクレッド騎士団団長、テラー・セイクレッドである。
「雑魚とはなんだ、コラァ!」
フィリップが文句をつけた。近くにいるのである。
「あ〜あ、どっかでハエが鳴いてらあ。」
ハエって鳴くのか?という疑問は捨てていただきたい。私もわからないのだから。
「ハエだと!?ニャロー!ぶっころーす!」
なんだこのケンカ。戦争中なのに・・・。
セイクレッド騎士団は撤退し、テラーは早速、ジョゼフ軍奇襲部隊の編成に取り掛かった。
「・・・つーことで、奇襲部隊を編成する。少数精鋭のな。」
テラーが言った。
「フィリップはどうするのですか?」
名もない将が言った。実際は名前はあるし、一応有名といえば有名な将だが、名前作るの面倒だから、名もない将なのである。
「フィリップゥ?そんなん、残った兵で誘って包囲すりゃ、すぐ潰せんだろ?」
「そ、そうですね・・・。」
その将は驚いた。テラーがそこまで考えているとは、思ってもいなかったのだ。テラーも、聞かれて即座に考え、言ったに過ぎないのだが。
「では、私の兵はどうでしょうか?騎士団の中でもけっこう強いと有名ですから。」
他の将の一人が言った。
「ああ、そうだな・・・。じゃ、俺の直属兵とお前の兵の中から、選りすぐりの奴を五十人、選んでくれ。そいつらを奇襲部隊にする。」
「はっ。ありがとうございます。」
「んじゃ、解散だ!」
テラーと先程の将は、自分の兵を集め、だれが強いか選んでいた。
五十人の選りすぐりの兵を集めると、テラーは行動に移った。
まず、奇襲部隊に入れなかった将兵に、フィリップを誘い、三つ子砦の中心まで来たら、一気に包囲して潰せ、と命令した。
そして、奇襲部隊は、敵援軍のジョゼフ軍が通るであろう道の近くに小さな陣を布いた。すぐに奇襲できるように。
「・・・・・・豊城が落城だと!?アーミィ殿は何をしている!」
テラーが怒っている。伝令は、ただただ小さくなるばかりだ。
「そ、それが・・・国王はかまくら族族長のヘイム殿に直接、援軍要請をしに行きまして・・・。」
「・・・。城を守った将は?」
ヘイムは、アーミィやテラーのような、かなりの権力者でないと話をしてくれないのである。自尊心が強い、というのか・・・。なので、テラーは納得したのだ。
「クルーセイド将軍です。」
「クルーセイド・・・。ああ、セイドのことか。エドワードを少しの間、部下のように扱っていた。」
クルーセイドよりも、セイドの方が伝わっているのである。
テラーも、エドワードのことは気にかけていた。
「あの・・・ゼロス軍は猛攻を仕掛けてきて・・・セイド殿も対処している間にやられていたのです。どうか、セイド殿を責めないで下さい。」
「別に責める気はない。だが、責任が問われるだろうな。」
「・・・はい・・・。」
セイドも慕われているんだな。
「まあ、いい。都が落城したからといって、国王が生きているのなら、そんなことは小事に過ぎん。今まで通りに探ってくれ。俺達は止まれない。」
「はい。」
伝令は去って行った。
「まだ、ジョゼフ軍は来ないのか。早くしろよな。フィリップが泣きついてきたら面倒だろうに・・・。」
既にフィリップは負けたことになっている。まあ、そりゃ、フィリップ程度でセイクレッド騎士団がやられるほど、騎士団は老いてはいないし、朽ちてもいない。
「伝令!ジョゼフ軍、近くの森に待機しております!」
いきなり言われて、テラーはびっくりした。背後から言うやつがあるか!
テラーは振り向いて
「そうか。わかった。・・・だが、人に話しかけるのに、いきなり大声で話し始めるな。驚いたぞ。」
と、言った。
「す、すみません・・・。」
「んじゃ、休まず探れ。」
「はっ。」
伝令が去っていく。
テラーは奇襲部隊全員を集めた。
「よぉし、お前ら!これから森に待機しているというジョゼフ軍を奇襲する!覚悟はできてるだろ?」
テラーが大声で言った。
「オーッ!」
「それでいい。おっしゃ、おめえら、行くぜ!」
だんだん声が大きくなり、口調も荒くなる。
「オーッ!」
奇襲部隊は静かに行動する。あんな大声を出しながら進んで、奇襲なんてできないからだ(当たり前だ)。
森に入るが、人の姿も気配もない。鋭い人ならわかるだろうが、鈍い人はわからなくてよろしい。後で言うから、待ってなさい。
さて、フィリップ部隊はどうなったか。
「おーい、臆病者のフィリップ!どうした?ここまで来てみろ!それともなんだ?恐いのか?」
三つ子砦に残ったセイクレッド騎士団の将である。挑発中だ。
フィリップは、さっきから悪口雑言を言われ続けているが、無視した。いや、しているつもりだった。
「フィリップ様、もう、我慢できません。奴らを・・・」
兵士が言ったが、言い終わらない内に、フィリップが突然、立ち上がり
「んにゃろぉ!ぶっころぉぉぉす!全隊、トォツゲェキァァァアアア!」
最後の方、『突撃』と言っているのだが、わからない場合は、いい。奇声は理解できなくてもいいのだ。
フィリップ部隊は全員、突撃を開始した。
「バカが。さ、退くぞ。」
騎士団側は至って冷静だ。そりゃ、挑発している側が怒ることはないだろう。言い返されない限りは。
騎士団の挑発部隊は退いて、バカ呼ばわりされたフィリップ部隊は、愚かにも、怒りに任せて追撃している。
三つ子砦を線で結んで、三角形ができたときの中心まで、騎士団は退いて、フィリップ部隊を誘った。
「んな!?包囲されてる!?バカな!」
バカはお前だ、フィリップ。
「フィリップ、無謀だったな。さ、全隊、フィリップに向かって突撃!」
騎士団の将が号令し、セイクレッド騎士団の内の、三つ子砦守備軍は全員、フィリップに向かった。
「お、おい!なんで俺が捕まんなきゃいけねえんだよ!コラ!離せぇ!」
フィリップ部隊はフィリップを除いて殲滅され、フィリップはあっけなく捕まった。
必死にもがくが、首筋を槍の刃先で軽く突かれて、フィリップはピタッと止まった。そんなに我が身が可愛いか。武人なら潔くないと・・・。

ジョゼフの策

「パチパチパチ・・・」
拍手ではない。テラーの奇襲部隊が来た森に火が放たれたのだ。
「くそっ!早く出ろ!こんなつまらねえ所で死ねるか!」
テラーが叫ぶように言った。
なんとか奇襲部隊が火の中から逃げられたのだが、一難去って、また一難。ジョゼフ軍が待ち構えていた。
「・・・なんだ?相当ヒマみてえだな。こんなところでわざわざ待ってるなんてよ。」
テラーはジョゼフ軍全兵に、吐き捨てるように言った。ペッ、と唾も出してみせる。
「お前がセイクレッド騎士団団長、テラー・セイクレッドか?」
ジョゼフが一歩、前に出た。騎乗しているのは言うまでもない。
「ああ、そうだ」
「ずいぶんと荒っぽい言葉遣いだな。セイクレッドは教育がなってないようだな。」
「なんとでも言え。何を言われようとも、俺はセイクレッド人だ。」
「まあ、いい。・・・この軍勢に呑み込まれるか?それとも、炎に包まれるか?」
「どっちもいやだね。」
「そんなに生きたいのか。武人として、潔く死ぬなり、軍門に降るなりしないのか?」
「誰がそんなことするか。俺はな、アーミィ殿の命令を命を賭けてやり遂げるからな。」
テラーとシックは、全く違う人間のようだ。生きるは恥だから、死にたいというシック、命令に従い、絶対やり遂げると使命感を持つテラー、この二人はたったの一つしか位が違うんだから驚きだ。
「そうか。死ぬ気か。この軍勢を突破できたら、そんなことは何度でも言っていいぞ。」
「へっ。てめえごときに俺の言動を制限される筋合いはねえよ、バカめ。」
バカめ、と書くと、どうしても司馬懿を思い出してしまう。バカめ=司馬懿という等式が私の脳内で成り立っているのだろうか。
「確かにそうだが、今、この状況下に置かれて、まだそんなことが言えるのか?」
「言える、だって?俺は言ったぜ。言ったのに、お前らは何もしねえじゃねえか。」
「・・・突撃命令を出して欲しいのか?」
「そんなことは自分で決めな。」
「・・・全隊、突撃!目標、セイクレッド騎士団長、テラー・セイクレッド!」
ジョゼフが槍を縦に振った。ジョゼフ軍の兵が来る。
「うし、全員、俺に続け!」
テラーはそう言って、側面に位置している山に向かった。
「逃がすな!追え!」
ジョゼフもあきらめない。
だが、雪の上も軽快に走る程のたくましいセイクレッドの馬に、草原を走り慣れた馬が追いつくわけがない。テラーはすぐに山を下り、本陣に退いた。
ジョゼフ軍も追撃するが、無駄だとわかって、軍を止めた。無駄だとわかるまで、なんの意味もなく走り、疲労したのだ。
兵士達は雪に仰向けになって寝始めた。
「・・・疲れた・・・。」
ジョゼフはそう呟いて、馬の首に倒れた。うまく落ちないようにバランスを取りながら。
ジョゼフ軍はセイクレッドの寒さに体を震わせながらも、寝て、疲労回復、というわけにはいかなかった。
「う〜、さみ〜・・・。」
やはり、雪の中でぐっすりと眠って、かつ疲労回復、さあ、元気に行こう、という人間はいないのだろう。寝ても起きてもブルブル震えている。
「・・・フィリップはどうした?迎えくらい、来てくれもいいと思うが・・・。」
間諜が来た。
「あの・・・フィリップ部隊は敵の挑発に乗り、三つ子砦で包囲されています。どうしますか?」
伝令!なんて言える程、体力はない。
「・・・そんなもの、知るか。フィリップの陣を探し、そこで我が軍を休める。フィリップには構うな。」
「はい。」
間諜はフィリップ部隊の本陣を探しに行った。
この待っている間が、何時間にも思えるが、実際は、ほんの少ししか経っていないのだ。
「フィリップ部隊の陣は、ここから南東にあります。」
「そうか。全員、南東のフィリップ本陣を目指して行くぞ〜・・・。」
どうも覇気がない。
陣に到着し、まず、体を温める。
ジョゼフは、セイクレッド騎士団の使者と会っていた。
「・・・で、どうしろと?」
ジョゼフは言った。
「どうしろって・・・そちらの武将を捕らえているんですから、それを助けるために、軍を退いてくれと言っているんです。」
騎士団の使者は、何度も同じようなことを言わされている。
「・・・フィリップごとき、どうでもいい・・・。殺すんなら、こっちに血が飛ばないように気を付けて殺してくれ。」
フィリップをこのように扱うのは、ちょっとなあ・・・。
「勝手に殺していいんですか?」
「ああ、勝手にどうぞ。」
「な・・・!公開処刑しますよ。」
「いいぞ。奴の死ぬ時ぐらい、見送ってやってもいいな。」
「・・・・・・イモータルの団結なんて、そんなものだったんですか。がっかりしました。」
「・・・なんとでも言え。挑発していることは目に見えているぞ。」
「帰ります・・・。」
騎士団の使者は帰って行った。
・・・、フィリップを少し酷く言い過ぎたか。奴らは捕らえたフィリップをとにかく有効利用したがるだろうから、こちらはそれを拒否していけばいい。そして、隙を突いてフィリップを助けてやろう。
「なんだと!?それで帰ってきたのか!?」
いきなり怒鳴っているのは、テラーである。
「は、はい・・・。ジョゼフも中々譲らないので・・・。」
と小さくなっているのは、先程の使者である。
「なんの収穫もなしに?冗談も程ほどにしろ!・・・まあ、いい。フィリップなんて、くれてやる。奴の装備を全て奪って、衣服だけで帰してやろう。恥をさらしてやる。」
八つ当たりである。
「は、はい・・・。」
「もっと大きく!」
「は、はっ!」
使者も大変だ。
翌日、フィリップは衣服だけ着せられた状態で、ジョゼフ軍に返された。だが、怒っていたのはフィリップだけで、ジョゼフ軍の人間はたいした反応を示さなかった。とことんフィリップは嫌われ者なのである。