かまくら村の戦い
猛吹雪
「ゴオオォォォ・・・」
ゼロス軍は吹雪の中を歩いている。
神紅半島に入るくらいの所にある、かまくら族の本拠地に向かっている。
セイクレッド軍も、騎士団を除けば、全軍いる。
「・・・作戦会議はこれにて終了する。各自、話し合った通りに動いてくれ。」
ここはかまくら族の本拠地、かまくら村である。・・・他に名前という名前がないのだ。
作戦会議議長のアーミィが言った。
かまくら族族長、ヘイムはかまくら族の兵士を集め、猛吹雪の中を平然と入って行った。吹雪なんて、もう何度見たことか・・・。
アーミィ部隊とセイド部隊で、かまくら村の物資を全て、他の所へ輸送している。ここに戦火が及ぶと、後が大変なのだ。
残りの軍はかまくら村の近くで、適当にヒマを潰している。
猛吹雪の中を進むゼロス軍。
「ん?吹雪が止んだぞ。今だ!急げ!」
吹雪が止んで、速くなったものの、まだ遅い。
かまくら軍は待ち構えているのに、ゼロス軍にはわからない。
「ぎゃっ!?」
「なんだ?景色が崩れた?」
前方で兵士が景色の壁に潰された。いや、正確には、かまくら族が作った雪の壁に当たって、その壁が崩れたのである。壁の奥にはかまくら兵が。
「な・・・!雪の壁とは・・・。」
「射ろ!」
かまくら兵の隊長が言うと、矢がゼロス軍に向かって放たれた。
「もう、いい。逃げるぞ!」
かまくら兵が言った。
「逃がすな!追え!」
だが、しばらく進むと、また雪の壁が。
「わっ!?」
雪の壁はたいして殺傷能力はないが、どこにあるのかが点で分からないので、士気が下がる。進軍速度を更に落とし、士気を下げることが目的で作られたのだ。
「またか。用心して進め!」
逃げたかまくら兵の姿はもう見えない。
ここは雪原だが、森がないというわけではないので、木々に隠れて進むこともできる。
・・・もう、雪の壁に当たること十数回。
ゼロスも雪の壁を避けることをあきらめていた。
「今度は柵です!」
柵がある。
敵兵の姿は見えないが、後からでてくるんだろう。
「構わず進め!かまくら族に我らの力を思い知らせるのだ!」
ゼロス軍は進軍を続行した。
柵を越えていく。どうしてか、敵がいない。
「・・・敵兵がいると思ったが・・・。では、この柵はなんだ?」
柵を完全に越えてしまったが、敵はいない。
「ジミー、かまくら村に先に行ってくれ。私は軍を休める。」
「はい。では、千くらいでいいですか?」
「ああ、任せる。」
ジミーは千の兵を集め、かまくら村に突撃した。
それまでの道、敵兵の姿はなく、かまくら村に入っても、敵がいた跡すらない。
「なんにもないな・・・。かまくらしかない・・・。」
「どうしますか?もしかしたら、敵が潜んでいるかも知れません。」
兵士が言った。
「そうだな。辺りを探って欲しい。敵がいても、すぐに報告するんだ。」
「はっ。」
兵士達は辺りを探すが、やはり、何もない。
「・・・何もないわけがない。どうしようか・・・。」
「ゼロス将軍を呼びましょうか?」
「・・・敵の策かも知れないけど、そうしてくれ。」
「はっ。」
兵士は戻り、ゼロスに話をつけた。
「ジミー、敵がいないそうだな。」
「はい、どうすればいいのか・・・。」
とその時、かまくら村を包囲するように、声がした。
「敵だー!」
「敵ですよ。」
ジミーが言った。
「包囲されているだろう。急いで退くぞ!」
ゼロス軍はかまくら村から逃げようとするが、かまくら村の入り口にも敵がいる。
「アーミィ、貴様か!」
「ゼロス、おとなしく降伏しろ。まあ、このまま戦っても、捕まっても、どちらにしろ殺すがな。」
「私を殺せるものか!全軍、突破するぞ!」
「ここで倒さなくてもいい!適当に戦え!」
交戦状態になったが、それも少しの間のことで、すぐに、ゼロス軍はかまくら村から逃げていた。
ゼロス包囲戦
「ザッザッザッ・・・」
雪原を走り続けるが、敵は追撃を止めてはくれない。
「ジミーはどうしたのか・・・。」
ゼロスは悩みながら逃げていた。ジミーを連れてこなかったのだ。余りにも急いでいたから。
「ぜ、前方に敵軍が!」
「何っ!?」
森の伏兵が出てきたのだ。
しかも、ここは先程の柵があって、思うように動けない。ただでさえ、雪に慣れていないので、遅いというのに。
「ええい!後方からも敵が来ているのだ!前面に攻撃を集中させろ!こんな簡単に負けてたまるか!」
兵士達は奮起し、この慣れない辺境の地で、激戦を繰り広げた。
「よし、いいぞ!ここまま突破だ!」
ゼロスを先頭に敵軍を突破する。
だが、ここでも雪の壁が。崩されなかったやつがまだあるのだ。
「くっ・・・。ジミーも心配だが、こいつらを無事に帰さねば・・・。」
ゼロスは悩んだ。責任感が今までよりも重くのしかかって来る。
「・・・何も悩むことなどなかったな。皆、このまま退き、豊城に逃げ込め!私はジミー部隊を助けに行く!殿軍も任せろ!」
「ですが、将軍!」
「お前らは早く逃げろ!征東将軍の命令だぞ!」
「は、はっ!退けー!」
ゼロス軍は退いた。ゼロスを残して。
「行くか。」
ゼロスはジミーを探しに走る。
「・・・妙だな・・・。敵が見当たらない・・・。」
さっきだったら、どこを見ても、視界に敵兵の姿があったが、今はいなくなっている。
「また、何か策があるんだろう。」
向こうからジミーがやって来た。五人だけ、兵士が生き残っている。
「ジミー、早く逃げるぞ。豊城まで逃げ切れば、後は何とかできる。」
「将軍、敵の追っ手が迫ってきます。」
「ああ、わかっている。行くぞ!」
急いでも、当然、雪に慣れていりセイクレッド軍の方がずっと速い。
それなのに、追撃して来ないのだ。不思議に思ったが、そんなことより、自分の命が大切だ。
柵も雪の壁も越え、少し安心してきた。
「ハアハア・・・。少しだけ、休むぞ・・・。」
ゼロスは馬から落ち、仰向けになった。雪がクッション代わりになってくれたので、落馬してもたいした怪我はしていない。
セイクレッド軍は来ない。
だが、あきらめたわけではないだろう。きっと、まだ、この先には伏兵でも・・・。
・・・止めよう。悩んだところで、今の兵数では何もできん。
「しょ、将軍!起きて下さい!敵です!」
ジミーがゼロスを揺さぶる。
「なんだ?」
「敵です。」
「味方の間違いじゃないな?」
「はい。」
「・・・せっかく休んでいたのに・・・。退くぞ。」
「ですが、包囲されているんです。」
「それを早く言え。・・・アーミィだな?」
ゼロス達を包囲している兵士の中から、アーミィが歩いてくる。
「ゼロス、私の勝ちのようだが?」
「寝言は寝て言うものだぞ、アーミィ。」
「わざわざ教えてくれてありがたいが、そんなことはとっくに知っているのでな。・・・さて、どう料理して欲しい?」
「料理?こんな鎧を料理しても、食えたものではなさそうだが?」
「ゼロスの姿焼きなんかは美味そうではないが、イモータルに大打撃を与えられるな。」
「そうか?私を殺したら、イモータル軍が総力で攻めるだろう。」
「総力で掛かってこようとも、セイクレッドと比べれば微々たるもの。軽く踏み潰してくれる。」
「もう、おしゃべりはよそうじゃないか。」
「何でだ?せっかく、死ぬ前に話し相手になってやろうと思ったのに。」
「私は死なん。お前の父親、私の弟との決戦の時が来るまでな。」
「なら、今ここで殺さなくてもいいな。道を開けろ!敵を逃がす!」
「ですが・・・!」
セイクレッド兵が抗議した。
「ここで殺さずともいい。後で殺す。」
「はい・・・。」
道が開かれ、ゼロス達は豊城まで逃げた。
追撃して来ない。
・・・ゼロスはアーミィに勝てないのだろうか?あんな小国王に。