豊城一斉蜂起戦
入城
「ザクザクザク・・・」
雪を踏み、遅いながらも進み続けるゼロス達。豊城は近い。
あの五人の生き残りの内、一人が間諜として働いている。
その間諜が帰ってきた。
「どうだった?」
ゼロスは聞いた。
「はっ、それが・・・。豊城が包囲されています。」
「予想はしていたが、そうか・・・。」
豊城にはわずか五千の兵しかいない。ジョゼフ軍もセイクレッド騎士団の牽制のため、まだ三つ子砦の辺りにいる。
それに比べて、豊城を包囲しているセイクレッド軍だけでも、実に五万はいるのだ。本当は七万くらいいるのだが、何しろ間諜が一人なので、全部探せなかったのだ。
「引き続き、敵の陣容を探ってくれ。」
「はっ。」
間諜は行ってしまった。
「ジミー、ジョゼフ軍は恐らく、まだセイクレッド騎士団の牽制をしているだろう。ジョゼフ軍の元へ行き、豊城に攻撃するように言ってくれ。騎士団は私がうまく追い払う。」
「わかりました。では、行ってきます。」
ジミーも行ってしまった。
これで残るはゼロスも含めて、たったの五人。
これで七万の軍を戦うのか?騎士団も止めて?無理だ。
と思うだろうが、ここがゼロスの真髄の見せ場。騎士団も止めてみせるし、豊城にこもる兵士も助け出してやる。
だが、それにはまず、豊城へ入城しなくてはならない。
「・・・そうだな・・・。我らの存在に敵は気付いていないはず。後方から奇襲を掛け、兵糧庫を焼けば、敵の戦意は落ちる。その隙を突いて、豊城へ入るか。」
それをするにも、兵糧庫を位置、薄い敵陣を探す必要もある。間諜に任せるしかない。
間諜もジミーも、一人なので、敵は見つけてもたいして構わなかった。間諜は一兵卒だし、ジミーもまだ、小隊長格の人間が着る鎧なので、目立たなかった。
「・・・ということです。」
間諜が言った。
「なるほど。兵糧庫は後方からすぐに攻められるところにあるのか。薄い陣もその近く・・・。よし、今夜、夜襲を仕掛ける。覚悟しておけ。」
「はっ。」
夜、暗闇の中で月光を照り返している雪が白く光る。
「慎重にな・・・。」
慎重に慎重に・・・。
「兵糧庫だ・・・。行くぞ・・・。」
ザッ、と動きが速くなり、兵糧庫の守備兵が気付いた時には、既に兵糧庫が火の海だった。
「敵襲ー!」
「構うな!誰も我らを怪しく思わん!」
体中鉄で覆われている人間(ゼロスのことだ)は、どう見ても怪しいだろう。
「行け!」
「奇襲だ!敵だ!」
「敵は混乱している!今のうちに豊城に入るぞ!」
ゼロス達は騒いでいる敵陣から逃げ、豊城に入城した。
「ゼロス将軍!」
「帰ったぞ。私が指揮をする。いいな?」
「はい!」
豊城にこもり、すっかり戦意がなくなっていた兵士達も活気付いた。
「ジミーはジョゼフ軍を連れて来る。それまで耐えろ。・・・騎士団はどうするか・・・。」
作戦会議である。といっても、ゼロスと二人の将しかいないが。
「豊城に来るまでの間に、ちょうど崖があります。そこから落石をすれば・・・。」
「そうだな。だが、そこまで行くには、敵軍がいる。これだけでそいつらを突破できるか?」
突然、この二人の会話に入れなかった将が立ち上がった。
「俺に任せて下さい。俺が囮役に出ますから、その間にゼロス将軍が行けば・・・。」
「今は兵がいないのだ。囮作戦は却下する。無駄死のうとするな。」
「ですが、他に方法は・・・!」
「あくまで囮作戦をしたというのか・・・。わかった。採用する。その囮役には私が出る。二人共、協力して落石の準備をするのだ。」
「しかし、それではゼロス将軍に危険が及びます!」
「私は皇帝に言ったのだ。『三十万の兵で、セイクレッドを滅ぼしてみせます。』とな。この敗戦の責任は私にある。その罪を少しでも償いたいのだ。」
「・・・わかりました。」
コンコン、と扉をノックする音がする。
「入れ。」
「失礼します。」
「・・・で、どうした?」
「はい。敵軍は兵糧庫の奇襲を受けてから、前よりもずっと厚い陣を布いていますが、その分、空いた部分も多く、敵は困っているようです。それと、地味将軍がジョゼフ将軍の説得に成功し、ジョゼフ軍はこちらに向かっているとのこと。」
地味将軍、とこんな作戦会議室でも平気で言われ、それをごく普通に受け取っているのは、ジミーが親しまれている証拠か。
「わかった。下がっていいぞ。・・・作戦を実行する。豊城の守備隊長に言っておけ。敵の攻撃を受けているなら、ゼロスが来ても門は開けるな、と。」
「はい。」
「では、解散。」
この後、どんな悲劇が待っているのか、ゼロスにもわからないだろう。
蜂起
「・・・」
作戦実行の時が来た。城内は静けさに支配されていた。
「では、囮部隊は行く。伝令が来たら、工作隊は動け。それまで何もするな。」
「はっ。」
城門が開き、ゼロス率いる囮部隊は出撃した。
「敵だ!蹴散らせ!」
「適当に戦っていればいい!」
ゼロス部隊は敵部隊と激戦になった。
「退け!」
囮部隊は仕方なく、退き始める。それを敵部隊は追撃してきた。
「伝令、行け!敵は我らが抑える!」
伝令は豊城へ走った。
「伝令!工作隊、落石準備に行って下さい!」
「わかった。行くぞ!」
工作隊も出撃し、崖に向かった。
落石準備を始める。囮部隊は苦戦しながらも、懸命に戦っている。
「来た。ジョゼフ軍だ。」
崖の下をジョゼフ軍とジミーが通り、崖を抜けた。
「来るぞ。敵軍だ。」
テラーのセイクレッド騎士団も、ジョゼフ軍の追撃をしている。
「今だ!落石!」
号令で一気に岩を落とす。
「のわっ!?なんだ!?くそっ!」
テラーが落石に当たらないように退いた。
崖下は岩や石、ゴミで埋まり、騎士団の進軍を止めた。
「やった!成功だ!」
「急いでゼロス将軍を助けないと!」
「そうだな。」
工作隊は囮部隊の救援に向かった。
「ジョゼフ将軍!」
工作隊の将の一人が言った。
「なんだ?」
「囮部隊を務めているゼロス将軍を共に助けましょう!」
「そうか、わかった。ジミー、行くぞ!」
「はい!」
工作隊、ジョゼフ軍は囮部隊の救援に向かい、敵部隊は撤退を余儀なくされた。
「我らで活路を見出しましょう。」
工作隊の将が言った。
「そうだな。」
ゼロスが言った。
「伝令!豊城内で民が一斉に蜂起しています!」
な・・・!そうか。アーミィの策だな。今まで兵士を民に扮装させて、このときを待っていたのか。」
「将軍、早く!」
ジミーが言った。
「わかっている。行くぞ!」
だが、手遅れだった。豊城に着いたときには、既に門は開いており、中は敵味方の死体だらけだった。
「・・・駄目だ。退こう。」
ゼロスは下を向いたまま、言った。
「はい・・・。」
全員揃って、言った・・・。
ジョゼフ軍が来たことにより、兵数は一万になった。
だが、退き続けている。一万だけで七万に勝てるか!
「・・・恐らく、まだ民に扮した兵がいるはずだ。うかつに村には近寄れないぞ。」
ゼロスは言った。