セイクレッド雪原迎撃戦
白山兵糧庫
「・・・」
ゼロス軍はあの悲劇が起こったセイクレッド雪原に来ていた。
「あまりここに来たくないな・・・。」
「ゼロス将軍、敵将はセイド。兵数は十万です。どうしますか?」
ジミーは言った。
「そうか・・・。敵兵糧庫は白山にあるんだろうな。よし、ジョゼフと私とで、軍を二手に分ける。ジミーはジョゼフ部隊、フィリップは私の部隊に来てくれ。」
「はっ。」
全員いるのだ。作戦会議中だから。
「では、私の部隊は白山の兵糧庫に奇襲を掛ける。ジョゼフ部隊は雪原を進み、敵に遭ったら戦え。適当にな。」
「はい。」
「・・・解散。各自、行動に移れ。」
そして、夜になった。奇襲は夜がいいのだ。
ジョゼフ軍もまだ動いていない。準備だけしたのだ。
「奇襲開始だ。あの『悲劇』を繰り返さないようにな。」
ゼロス部隊は進軍を開始した。
「将軍、奇襲部隊が動き始めました。」
伝令が言った。
「わかった。皆、進軍開始。雪原をただ歩いていればいい。」
ジョゼフ部隊も進軍を開始した。
白山の悲劇。あの火計で、五万もの兵が死んだのだ。たった一回の火計で。
「あの悲劇は繰り返すものか・・・。」
そう呟いた。心の中で言っているつもりだったが。
「兵糧庫が見えます。」
「そうだな。突撃開始!一泡吹かせてやれ!」
ゼロスの号令で奇襲部隊は足を早め、兵糧庫の守備部隊を混乱させた。
「わっ!敵だー!奇襲だ!」
「兵糧庫を焼け!」
「はっ!」
兵糧庫に火が付けられ、セイクレッド兵はますます混乱した。
セイドはこの炎を見ていた。
「ゼロスだな。まあ、しかし、無駄なことをする。あの兵糧庫は囮だということに気付かないなんてな。よほど焦っているんだろう。」
白山が燃えていく。だが、悲劇のときの火に比べれば、こんな小さな炎・・・。
「・・・そうだな。奇襲は成功したようだし、ジョゼフと離れているのだから、合流を試みるはずだ。ジョゼフ軍の迎撃に向かう!」
セイドは行動を始めた。もっとも、既に動いていたが。
奇襲部隊は奇襲に成功したので、ジョゼフ軍に合流するため、白山を駆け下りた。
暗くて周りがよく見えない。
「うらーっ!行くぜ!」
アウトローの伏兵である。暗闇に隠れていたのだ。
「伏兵か!混乱するな!冷静に対処しろ!」
とは言っても、誰だって不意打ちされれば、少しぐらい慌てふためくだろう。そこを突かれているのでは、混乱がそう簡単に治まるとは思えない。
「おらっ!ゼロス!てめえ、俺達の邪魔なんだよ!とっとと消えやがれ!」
「挑発にわざわざ乗るか!誰にも私の邪魔はさせん!」
「んだと?セイクレッドの力を思い知れ!・・・ちっ、これもセイドのため・・・。退け!」
「逃げるのか?」
「へっ、悪いが、俺は武人でもなんでもねえ。ただの盗賊だ!」
「盗賊なら盗賊らしく、こそこそと盗んでいろ!」
「バカ言え。おめえらなんざから、盗むもんなんてねえよ!」
アウトロー部隊は退いていく。
「セイドの策だろうな。追撃せず、ジョゼフ部隊と合流するのだ!」
ゼロス部隊はジョゼフ部隊を探しながら、進む。
一方、ジョゼフ部隊はセイド軍と激戦中だった。
「ん?あの人影は・・・ジョゼフ部隊か?」
その影は争っていない。つまり、偽者ということだ。
「合流するぞ!」
ゼロス部隊が近寄ると・・・。
「待っていたぞ、ゼロス!」
ギフトである。
「貴様・・・!」
「俺らに勝てるか?そんな兵数で。」
「くっ・・・。突破する!こんな奴らに構うな!」
ゼロスは突撃し、ギフト部隊を突破した。
「・・・おう、アウトロー。行くか。」
「ああ。俺達でゼロスをあしらってやろうぜ。」
「おう!」
ギフトとアウトローは、片腕を相手の片腕にガシッとぶつけた。
「ジョゼフ!」
ゼロス部隊はジョゼフ部隊のところまで来たのである。
兵数も完全にセイド軍の方が上。
それを気合で吹き飛ばすのだ!・・・ってなんで主人公の敵国を応援してるんだ。
「まだだ!まだ勝機はある!今は耐えろ!」
「よっしゃ、突破するぞ!道は開けた!」
ジョゼフの命令でゼロス軍は突破に成功した。
・・・いや、正確に言えば、成功させてくれたのだ。
「・・・ギフト、アウトローに任せるか。ゼロスを殺したら、後が大変そうだからな。」
セイドは激戦の傷痕を見た。せっかくの美しい雪が鮮血に染まっている。ま、これはこれでまた、違う美しさがあっていいのだが。
突破できるか!
「ザクザクザク・・・」
雪ばかりで進みにくい。まあ、これはセイクレッドに来てからずっと言っていることだが。
「・・・敵の追っ手も来ないようだが、まだ安心できん。休みはまだまだだ。」
ゼロスは自分に言い聞かせた。
そうだ。ここで休んでは、部下達に示しがつかん。大将の私が休んではならんのだ。
「前方に敵本陣を確認しました!」
「なにっ!本陣だと?」
眠気は一気に覚めた。この寒さのおかげもある。
「よし、敵本陣を突破する!セイドの策かも知れんからな!」
アーミィだけでなく、セイドまで。アーノルド(ソルジャーの子)兄弟を恐れ始めている。
本陣は簡単に突破できた。だが・・・。
「申し上げます!敵本陣から敵軍が出撃しています!」
「前方から敵軍です!」
一度に二人の間諜が言うな。
挟撃されているようだ。前方はギフト、アウトロー。後方はアイリーンとロイアルの親子である。
「面倒だ。側面から逃げる!」
ゼロス軍は横から逃げ始めた。
「わあっ!て、敵軍が森にも・・・!」
森に隠れていた伏兵が出てきた。将はソルジャーである。
「むっ、ソルジャーか。」
「また会ったな、兄貴。」
「今はお前と戦っている場合ではないのだ。退け!」
「とことん逃げるつもりか?どこまで逃げられるんだろうな・・・。」
ゼロス軍は退き、ソルジャー部隊は追撃する。
もう、何時間走り続けたことか・・・。なんとか逃げられているが、少しでも足を止めたら、その時点で死が待っているだろう。足がしびれても、走ることを余儀なくされた。
「な!?敵軍がまだいるのか!」
前方にセイド軍が。しかも、相当な数。隊列もさぞ厚いことだろう。
「ええい!突破しろ!生きたければな!」
そして、雪を朱で染めた。
「ゼロス将軍!」
ジョゼフが呼んだ。
「わかっている!炎だ!放て!」
近くの森に火を付け、その中へ飛び込んだ。
「・・・入れないようにか・・・。森の火を強める!燃えるものは投げ込め!」
セイドの命令に従い、燃える物を投げ込んで焼いた。炎がどんどん強くなっていく。
「ぜえぜえ・・・。追っ手は来ないな・・・。」
ゼロスは倒れた。安心したのである。敵の術中にいるよりは、この炎の中にいる方が、ずっと安心だ・・・。
「ゼロス将軍、急ぎましょう!」
ジミーに起こされた。ま、炎の中で安眠するよりはいいか。
「・・・そうだな。このまま、鐘楼へ退くのだ!」
「はい!」
だが、安心できる炎の森を抜けた先は、地獄だった。
セイド軍が待ち構えていたのである。
「・・・突破する!構わず突破しろ!」
ゼロスを先頭に、ゼロス軍は突撃した。
相当な被害を受けた。どんどんゼロス軍の兵士が死んでいく・・・。
ゼロス達は突破したが、味方の兵は全滅したようだ・・・。
「追撃しなくていいぞ。私が行く。全軍、豊城へ退き、国王の命令に従ってくれ。」
「はっ。」
「では、行ってくれ。」
セイド軍は撤退していく。セイドはそれを見送り、見えなくなると、ゼロス達が逃げて行った方へ走り始めた。
・・・まだ馬に乗れないのは、遺伝か?それとも・・・。