鐘楼シンフォニー

二つの塔

「ザッザッザッ・・・」
ゼロス達は、なんとかセイド軍を突破し、逃げているところだ。
「・・・あれは、鐘楼シンフォニーだったな。」
ゼロスは雪原の先に立ち続ける、二本の塔を見て言った。
「あの中はどうなってるんでしょうか?」
このゼロスに対しての口調、ジミーである。
「行ったことがないな。いや、そんなことより、早く逃げないと。」
その話にしたのはゼロスなのだが・・・。
「ゼロス。」
呼ばれて、振り向いてみると、セイドが立っていた。
「お前、たった一人で何故、来た?」
「ゼロスにだけ用がある。他は勝手に帰っていい。」
「・・・将軍、どうするんですか?」
「お前達は行け。私はセイドについていく。」
「わかりました。」
ジミー達が南へ進んでいく。
「ゼロス、こっちへ・・・。」
セイドが手招きをして、ゼロスを誘う。
二人が着いた場所は、さっき話していた鐘楼、シンフォニーの東側の塔である。
塔内に入り、どんどん奥へと進んでいく。
やがて、かなり堅そうな扉が目に付いた。
「この扉は?」
ゼロスが聞いた。
「開ければわかる。」
「なら、開けるぞ・・・。」
ゼロスが扉に手を伸ばし、取っ手を引っ張ろうとするが。
「開かないな。どういうことだ?」
「鍵はない。力ずくで壊せばいいだろう。」
二人同時に体当たりしてみるが、ビクともしない。
「どうすれば開くんだ?」
セイドが扉に手を付けると、扉が勝手にギィィと音を立てながら開いた。
「?まあ、とにかく中へ・・・。」
奥の部屋に入ると、剣が一本、台に刺さっているだけだった。
その剣は、別になにか装飾されているというわけではなく、えらく質素な感じの剣だった。剣はただの市販の剣のようだが・・・。
「なんだ、この剣は?」
セイドが抜こうとして、剣に手を掛けた。
剣は意外にあっさりと抜けた。のはいいのだが、その後、剣が鳴り始めたのだ。
先程の扉が開く音とは違い、軽く、高い、キィィィという音がする。
「な、なんだ?これは?」
「セイド、もう一つの塔にも、同じ物があるかもしれないぞ。」
「行ってみるか。」
敵同士であるはずのセイドとゼロスだが、やはり、同じ血が流れているのだ。
もう一本の塔でも、全く同じ事が起こった。
あの質素な剣を持ってきて、もう一本ある、それと全く同じ剣を近づけた。
音が弱まり、やがて、消えてなくなった。
「なんだったんだ?」
「そんなことわからん。」
そして、セイドとゼロスを、あのアネクメーネ砂漠でアウトローが見た白が包む。
「やっ!クロース神様。」
セイドが・・・いや、セイドに入っている別の精神が言った。
クロース神様と呼ばれたのはあの質素な剣で、その二つの剣は交差したまま、宙にふよふよと浮いている。
「クルーセイドか。ここまで来させて、悪いな。」
神様があやまるのも妙である。
「いいんですよ。どうせ、ここへ来るのは私達だけど、ここまで運んでくれるのはこの肉体ですから、楽なもんです。」
「おい、セイド。少しは口を慎め。」
と、ゼロスの別の精神が突付く。
「いいだろ?クロース神様も承諾してくれてるんだし。」
「お前って奴は・・・。」
ゼロスの別の精神は呆れている様子。
「我らは雑談をしに来たのではない。わざわざお前達を呼んだのも、用があるからだ。」
「ま、そりゃね。なんの用もなく神様が来ちゃ、世も末ですから。」
「・・・いいか。クルーセイドは、ウラヌス、セレネと話しただろう?ゼロスも知っているだろうが、あえて言っておく。光の力が増幅しているのだ。これをどうやって止める?」
「光の力の増幅については、難しいところです。ここ、生命世界でも神霊世界でも、光は強いですので。方法は・・・。」
「いいたくはないが、ないだろうな。神である私ですら出来んのだ。ここに生きる小物や、お前達のような小さな神霊では、光に勝てまい。」
ここに生きる小物とは、ずばり言おう。生命のことである。
「光には闇で相殺すればいいのですが、あいにく、光が強くなれば、闇が弱くなるのは当たり前ですから、今の闇では光に太刀打ちできません。」
「んじゃ、どうすんの?」
「それを今、検討しているのだろうが。」
「まあ、それにしても、こっちに長時間、居たくないね。吐き気がしてくる。」
「人間の血ばかり見ているからな。」
「全く。生命世界にいても、何にも学ぶことなんかないよ。」
「学ぶことは大切だぞ。だいたいお前は勉強に対する熱心さが・・・」
ゼロスの別の精神による、長い長い、お説教である。長さで言えば、時間のない神霊世界でも長いと感じる(生命世界に一度でも行ったことがあるやつだけ)くらいである。
「・・・であり、お前は生命世界について何も学ぼうとせず、ただゴロゴロと主人を監視しているだけだ。つまり、お前は怠け者というわけだから、どうせ、この会議をしても大したことも言わずに・・・」
主人とは、このセイドにいる別の精神で言えば、セイドである。
精神を入れさせてもらっている肉体の元からあった精神のことだ。
「やめろ。今はそんなつまらないことで言い争っているヒマはない。」
「はい・・・。」
「・・・要は光の力をなくせばいいんだろう?だったら、光が物質肉体化したときを狙えば・・・。」
セイドの別の精神が言った。
「どうして光が物質肉体化する?力が大きく、強いのなら、物質化する時点で自らに大きな負担がかかる。そんな無謀なことをするわけがない。」
「いや、それはありうるぞ。強大な力があるのなら、それらを全て自らの内に存在させているままでは、生命世界に物質化した光の力を置くはずだ。力があり過ぎると、自らを滅ぼす要因にもなりかねないからな。」
「じゃあ、私の策を採用してくれますか?」
「光が物質肉体化したらな。」
「それじゃ、会議は終わりだな。帰ろ。」
セイドにいる別の精神は消えた。同時にセイドを包んでいた白も消えていた。
「我らも帰るか。生命世界にいると苦しくなる。」
「はい。」
ゼロスを包んでいた白も消えた。
っと、言い忘れていたが、あの質素な二本の剣も白に包まれていたのだ。
二本の剣を包んでいた白も消え、質素な剣はカンカンと落ちた。
「・・・ゼロス、もう、帰っていいぞ。私は豊城に戻る。」
「ああ・・・。」
二人は塔から出て、それぞれ違う道を進んだ。
剣は置いたままである。
・・・話がこれしかないので、一つのまとまりだけです。すいません。