三対一作戦
裏切り工作
「カツカツカツ・・・」
セイドはアーミィに呼ばれて、総帥の旗の立つ天幕へ行った。
「兄上、なんですか?」
「セイド、早速だが、お前にはアーマメントに行ってもらいたい。」
「何の用で?」
「アーマメントにはイモータルから裏切ってもらうため、その仲介役をかって出て欲しいのだが。」
「アーマメントがそう簡単に裏切りますか?」
「そうさせるのがセイド、お前の仕事だ。よろしく頼むぞ。」
と、肩をポンと叩かれる。
「まあ、やってみますが、失敗の可能性も考えておいて下さい。」
「わかっている。とにかく、失敗しないようにしてくれ。」
「わかった。」
セイドは天幕から出て、アーマメント陣へ向かった。アーミィ直筆の手紙を手に。
「・・・ということで、ガヴン・グローリー王に会いたいのだが。」
応対は一般兵だった。
「しかし、そう簡単に会わせるわけには・・・。」
さっきからこれである。こんなんで話が進むか!
「これでは話が進まない。誰か責任者を呼んでくれ。」
苦情を言いに来たんじゃないが。
責任者が出て来た。この軍、いや、国の責任者、グローリーである。
「お前は誰だ?」
グローリーが聞いた。
いきなりそう言われても・・・。礼儀ってもんを知らんのか!
しかし、そこを抑えるのが仲介役。
「私はセイクレッド軍歩兵前線部隊少将、アーノルド・クルーセイドという者です。」
「セイクレッドの少将がなんでこんなところにいる?」
「単刀直入にいいますと、アーマメントにはイモータルから裏切ってもらいたいのです。」
「裏切る?我らが?」
「はい。それを願いに来たんです。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ。な?」
「この戦争が終わるまでなら、いくらでも。」
グローリーは下がっていき、将を呼んでいた。
遠くからでもわかった。呼ばれた将がドリズルだということを。
「セイクレッドが裏切って欲しいだとよ。どうする?」
「我らがイモータルに裏切れるわけがない。・・・そうだ。私の策、採用してくれますか?」
ドリズルはグローリーの耳になにか小さな声で言うと、グローリーは肯(うなず)いた。
「なるほど。いい策だ。じゃ、そいつを使わせてもらおう。」
グローリーが戻って来た。
「クルーセイド殿、待たせたな。裏切りの件、引き受けたぞ。」
「ありがとうございます。では、早速、出撃準備をして下さい。」
「もうやるのか?」
「善は急げ、ですから。」
「そうだな。よし、そこのお前。」
グローリーに呼ばれた兵士はビクッとして
「な、なんですか?」
と聞いた。
「お前、我が軍全軍、出撃するように言いに行け。皇帝がそう言ったとな。」
「は、はいっ!」
シャキッとして、兵士は走って行った。
「・・・この陣を通行しますが、いいですか?」
「ん?ああ、もちろんだ。」
「では・・・。」
セイドは従者に懐から出した手紙を渡すと、
「さ、行ってこい。」
と言った。
この従者が行ったのはブライト陣である。
「・・・なるほど。ブライト軍にもイモータル軍撃破を手伝えと。」
ブライトネスが従者の話を聞いて、言った。
「はい。我らセイクレッドはアーマメントとの同盟を果たし、出撃準備を整えております。後はブライト軍が来てくれれば、イモータルを完全に滅ぼせる日が近づきます。」
「わかった。大軍で行こう。それまで待って欲しい。」
「はい。わかりました。」
セイクレッド軍は既に出撃準備は出来ており、アーマメント軍と共に戦いに行くだけだ。
「申し上げます!アーマメント軍、ブライト軍、進軍開始しました!」
膝を付いている間者を見て、アーミィは
「よし、我が軍も遅れず、進軍開始!目標は中央拠点だ!」
と命令して、走り出した。
中央拠点の防備は、アーマメント軍がいなくなった分、薄く、簡単に落とせた。
「この勢いでイモータル軍を倒せ!」
アーミィはそう言って、再び走り出す。
イモータル軍は真っ先にグロウを退かせていた。皇帝が死んではならない。
イモータル軍は軍を三手に分け、中央はゼロス、東はフレイム、西はマッチが軍を率いて撤退中。
そして、この三ヶ国混合軍は、中央はアーマメント軍、東はブライト軍、西はセイクレッド軍で追撃中。
二対二作戦
「ダッダッダッ・・・」
三軍は分かれて追撃している。
「前方に敵軍発見!待ち構えています!」
マッチ軍を追っているセイクレッド軍である。
アーミィはそんなこと言われても動じない。
「奴らは我らだけで倒すのだ!かかれ!」
と突撃命令を出した。
「アーミィともあろう者が、突撃してくるとは・・・。策が成功すればいいのだが。」
マッチは心配な様子。
セイクレッド軍がかなり近づいている。
「退け!これだけでは無理だ!」
「待て!逃がすな!」
だが、もう追撃は出来なくなってしまった。
両脇の森から伏兵である。
「伏兵か・・・。少数で追撃しても、また敵の策にかかるだけ。今は伏兵に応じていろ!追撃は止めだ!」
マッチ軍は悠々と退却できたのである。いや、退却ではなく、他の軍の援護に回ることが。
セイクレッド軍が伏兵に動揺している間、西のブライト軍も散々だった。
「む・・・どちらに敵がいるのだ?」
ブライトネスは困惑していた。東からも西からも敵の声がする。
「こんなところでぐずぐずしてはいられません。王、騎士団は東に当たります。王の本軍は西へ当たって下さい。」
ヴィクトリィが言った。
「うむ。わかった。」
ブライト軍は二手に分かれた。だが・・・。
「む?西には敵はいないようだな・・・。では東か?東へ向かえ!」
ブライトネスは東へ回った。
騎士団は東を当たっていたのだが、西側と同様、敵の姿は見えない。
「おかしいな・・・。あの声が幻聴だというのか?」
ヴィクトリィは辺りを見回しながら、自分の目でも確認した。敵がいない、と。
そこへスプレンダーが来た。
「団長、これはきっと、敵の罠です。少数部隊で声を出し、そこに気を取られている間に、敵本隊が撤退したのだと・・・。」
「取り逃がしたというわけか・・・。」
「はい・・・。」
「ヴィクトリィ!東はどうだ?」
ブライトネスが来た。
「敵はいませんでした・・・。西もですか?」
「そうだ。」
「敵を逃がしてしまった・・・。」
と、ヴィクトリィが嘆いているところへ
「火だー!」
という声が。
「な・・・火計か!」
ヴィクトリィが言った。
「国王、団長、私は兵の収拾をします。団長は騎士団で敵を止めて下さい!」
スプレンダーはこいうときにこそ実力を発揮するのである。
「わしは?」
「王は私と兵の収拾をしてから、撤退してください!騎士団で敵を食い止めます!」
「わかった。」
兵の収拾はつき、ブライトネスは逃げ、ブライト聖騎士団はフレイム隊と交戦中。火計による被害も多く、なんとかフレイム隊を退かせたときには、疲れ果ててしまっていた。
というこうとだ。
セイクレッド軍は伏兵を撃破し、ブライト軍は休憩中である。
さて、アーマメントは?なんていう方、察しが付くと思いますが、アーマメント軍はイモータルを裏切ってなどいないのでした。
「セイクレッド軍は大打撃を受けており、ブライト軍は疲れ果てている。ドリズル、お前の言ったとおりの戦況になったな。」
グローリーはドリズルを見て、言った。
「王、俺は中央拠点を奪取してくる。いいか?」
フュリアスが聞いた。
「ああ、いいぞ。中央を制しておけば、後々有利だ。」
「じゃ、行くか。」
フュリアスは自慢の「突撃」で中央拠点を落とすつもりである。
「さて、グロウ皇帝。これで我らを見直しましたか?」
グローリーが振り返ると、グロウが立っていた。
「ああ、さすがは弟国だ。フュリアスの援護に、フレイムをまわそう。フレイム!」
「はい。」
「フレイム、中央拠点へ行き、フュリアス部隊の援護にまわってくれ。」
「はっ。」
フレイムは自分の部隊を引き連れ、中央拠点へ進んでいく。
「申し上げます!セイクレッド軍、ブライト軍は森を通って、自陣に撤退した模様!」
「そうか。ここで決着は付けられないだろうな・・・。陣に戻るぞ。」
「はい。」
かくして、イモータル軍はアーマメントの策によって、生き長らえることが出来たのである。
この戦で、セイクレッド、ブライトだけでなく、勝ったように見えるイモータル軍、アーマメント軍もけっこうな被害を受けていた。
セイクレッド陣に戻って、アーミィはこう呟いた。
「アーマメントは心からイモータルに服してしるのだな。」
と。