中央拠点争奪戦
中央拠点守備陣
「ザー・・・」
雨が力強く降っている。
中央拠点内部、兵はキビキビと動き、各自の仕事(一般兵は見張りや睡眠)に励んでいた。・・・できればツッコミしてもらいたい。
「・・・ここ中央拠点は敵が最も欲しがる場所だ。挟撃されることを覚悟で、守って欲しい。」
会議議長のマッチが言った。
この議論にはマッチだけでなく(一人で議論できないので)、ジョゼフ、アーマメント軍からフュリアスが来ていた。
「だが、ブライトが攻めては来ないだろ。」
フュリアスが言った。
「フュリアス殿、それなら、フュリアス殿には東についてもらいます。ブライト軍が攻めて来たら、一番に分かりますから。」
マッチが挑発的なことを言った。
「それは挑発か?」
「いや。それより、アーミィが心配です。一体どんな策で来るのか・・・。」
ジョゼフが突然立ち上がり
「それなら心配ない。セイクレッドはイモータルに比べれば、寡兵ですから、奇襲を仕掛けてくるはず。奇襲ならば、隊を厚くし、敵に備えていれば、敵は何も出来ずに退くでしょう。」
「・・・その裏をかくこともできます。ジョゼフ将軍には西に陣を敷き、わざと兵を少なくしておきます。敵の奇襲にかかり、混乱しているように見せかけて、中央拠点に侵入させたら、一挙に包囲し、撃破する。これはどうですか?」
「それはいい策だ。それでいこう。」
「フュリアス殿は東に陣を敷いて、ブライト軍に備えてください。」
「おい、俺はあんな弱小軍と戦うのか?面倒だな。」
「私はイモータル皇帝より中央拠点守備の任に就かされたのだが?」
マッチが言った。
「む・・・そうだな・・・。でも、権力は無駄に使うもんじゃないと思うな。」
「こうしないとフュリアス殿は落ち着かないからな。」
「ま、そうなんだが。」
議論はここで終わった。
それぞれ陣を敷き、敵を待った。
ジョゼフ陣は兵をわざと少なくしており、中央拠点内には多くの兵を配備している。
・・・セイドはアウトローに書類を渡した。
「ん?なんだ、これ?もっと仕事しろってのか?」
「そうじゃない。お前じゃ仕事を渡しても無駄だからな。」
「セイドの一言一言が心に深い傷をつけるんだけど・・・。」
「いいから受け取れ。」
アウトローは渋々、例の書類を受け取った。
「えーと、何々・・・。『アウトロー、貴殿をセイド軍一個連隊隊長に任命する。セイクレッド国王。』・・・。なんだ、こりゃ?」
「そのままだ。お前を私の軍の連隊隊長にする、ということだ。」
「仮だけど、もうなってたんじゃねえか?」
「仮が正式になっただけだ。」
「正式になったとなると、セイドに任せっぱなしってのはできないな。ああ、どうしよう・・・。」
そんなに仕事したくないのか。
「連隊というと、大体千五百ぐらいはあったな。アウトローで足りるかどうか・・・。少なくとも、アウトローが三人はいないと無理だろ。」
連隊の数は旧日本陸軍の小隊(何の隊か忘れた)の人数から計算して、適当に出しました。
「酷いこと言うなよ・・・。でも、本当にキツイよなあ、千五百って・・・。」
「ま、任せるぞ。私は助けないからな。」
「へいへい。」
セイドはそう言うと、師の旗がたなびく天幕へ足を運んだ。
「セイドか。どうした?」
もちろん、この軍の師といえば、アーミィに他ならない。総大将なのだから。
「兄上の策、聞かせて欲しいのですが。」
「まだだ。いくら弟と言えど、そんな簡単に口を割りはしない。」
「そうですか。」
行動に移すべき時、その時にしか言わないのが、アーミィのやり方だった。
「じゃ、このまま動かないで?」
「そうだ。作戦も流れるように進ませるから、行動のときに言う。それまで自分の仕事をしろ。」
「はい。」
イモータル本陣。
ここはいつでも、将達が歩き回っている。ヒマなのではない。
マッチはゼロスに、中央拠点の守備陣について説明し、答えに期待した。
「・・・なるほど。セイクレッド軍に備えて、そんな陣を敷いたのか・・・。」
「で、どうですか?」
「・・・陣形がまる分かりだな。アーミィなら、この陣形を打破する策ぐらい、すぐにやるだろう。中央拠点へ早く行け。落とされないようにな。」
「・・・で、この陣形はいいものですか?」
しつこいな、私(作者)と同じ名前なのに。私はしつこくないと自称しているのだが。
「まあまあだ。だから、早く行け。」
「はい!」
一回誉めるだけであんなに喜ぶんだから、よほど単純にできているのだろう。私もだろうか。
「・・・あの陣形、二部隊もあれば片付けられるものだが、マッチならなんとかするだろうな。」
ゼロスは心配でならなかったが、それより、今やってる書類を今日中に片付けられるか、という方が心配だった。
マッチはご機嫌である。
中央拠点への帰路、マッチはフレイムに呼び止められた。
「なんですか、フレイム将軍?」
フレイムはブライト陣を偵察していたので、まだ緊張がほぐれていないようだ。
「マッチ軍師、ブライト軍が動きを見せています。」
「私に言われても・・・。中央拠点に戻らないといけないので。」
「あ、ああ、そうだった。グロウ皇帝に報告しないと。」
「グロウ皇帝は今、援軍を呼びに都へ戻っています。現在のイモータル軍最高指揮官はゼロス将軍ですよ。」
「そうだったか?・・・まあいい。ゼロス将軍に報告するか。」
フレイムが行ってしまうと、マッチは、さっきの満面の笑みはどこへやら、悩み出した。
「ブライトが動きを?・・・あんな弱小軍がこの大陸最強の国に立ち向かうことがあるのか?いや、しかし・・・」
悩んでいると、いつの間にか、中央拠点に来ていた。マッチにはこういうことが多い。
「マッチ軍師、戻りましたか。」
ジョゼフが迎えてくれた。
「ゼロス将軍に報告したら、『アーミィなら、こんな陣は簡単に打破してしまう』と・・・。」
と残念そうに言う。
「では、陣形を変更しますか?」
「・・・ブライト軍に動きがあると、フレイム将軍が言っていましたし、ブライトも考慮して陣形を変えます。」
それすらもアーミィはお見通し、とマッチは思ってしまった。アーミィ恐怖症がゼロスから感染したのか?
・・・早速、作戦会議を行ったのだが、一向に作戦が出ず、困惑していた。
結論が出ないのでは、行動しようがない。結局、何もしないで一夜が明けた。
奇襲囮
「ザッザッザッ・・・」
セイドはアーミィに呼ばれて、歩いていた。
帥の天幕へ入る。
「セイドか。よく来たな。」
「兄上、なんですか?」
「セイド、お前が知りたがってた作戦についてだ。耳を貸せ。」
アーミィはセイドの耳にゴニョゴニョと言い、離れた。
「わかりました。決行は今夜で?」
「ああ。頼むぞ。お前だけなんだ、適任な奴は。」
「任せてください。」
アウトローにはいつも任されているが。
セイドは天幕から出て、自分の軍の駐留場へ向かった。
「アウトロー、連隊の方はどうだ?」
アウトローは振り向いて
「セイド、結構いいな、自分の隊を持つって。」
と言った。
「前から持っていただろう?」
「あれは・・・友人みたいなもんだから。赤の他人を従えるのが面白くてよ。」
従っている方は何も面白くない。
「アウトロー、先鋒は任せるぞ。」
「は?何が?」
「奇襲だ。中央拠点の西側、ジョゼフ陣へな。」
「俺達だけで?無理だろ?」
「無理じゃない。」
「なんでそう言い切れる?」
「カンだ。」
「ん・・・ま、まあ、いいか。俺の連隊が先鋒隊になるのか?」
「連隊から精鋭を選ぶ。それを奇襲部隊として編成するからな。」
「待っててくれ。今すぐ探すから。」
「今夜には奇襲開始だ。それまでに見つけておいてくれ。」
「任せとけ!」
アウトローはガッツポーズをすると、自分の連隊に集結の号令をかけた。
セイドはそれに感心してから、ギフトやロイアル、アイリーンが所属しているクルーセイド本隊へ向かった。
「ギフト。」
セイドはギフトを見つけると、すぐさま声をかけた。
「セイドか。なんだ?」
「今夜中央拠点西のジョゼフ陣へ奇襲する。アウトロー連隊の中から選りすぐりを探しているが、それだけでは足りないかもしれない。ギフト、本隊の指揮は一時的にお前がやっているよな?」
「そ、そうだけど・・・。俺は・・・」
「言うな。精鋭をこの中から選んでくれ。ロイアル殿にも頼めば少しは楽になるだろう。」
「なんで俺が。」
「さっき説明した。」
「あ〜わかりましたよ。俺がやってやる。」
「任せる。今夜は奇襲だからな。間に合うようにしてくれ。」
「任せとけ!じゃ、ロイアル殿を呼ぶか。」
この軍内では、ロイアルは頼れる兄貴になっていた。最も、兄というより、父のようだが。
「さて・・・。」
セイドはヒマになってしまった。アウトローとギフト、ロイアルは、セイドの分、忙しくなっただろう。
夜になった。
「・・・奇襲は私がやるから、アウトロー、ギフト、ロイアル殿は休んでいてくれ。」
「へ〜い。」
セイド奇襲部隊は中央拠点西のジョゼフ陣へ進んでいく。
ジョゼフ陣はもう目の前となった。
「・・・かかれ!突撃だ!」
奇襲部隊はジョゼフ陣へ奇襲をかけた。
「応戦しろ!この程度、なんともない!」
ジョゼフは、敵が奇襲したら退くように、と言われているので、退こうとしているのだが、どうしてもこう言ってしまう。
「もう充分だ!退け!」
「逃がすな!追え!」
つい、言ってしまった。
追撃するが、足の早さは奇襲部隊の方が速い。
「あいつら、なにをしに来たんだ?」
ジョゼフは悩んだあげく、マッチに相談することにした。
「マッチ軍師、先程、敵は俺の陣に夜襲をかけて来たのだが、すぐに帰ってしまったのだ。」
「それは・・・。何かの策かもしれない。用心しておくといい。」
「わかった。」
そこへ間諜が飛んで来た。
「どうした?」
「あ、あのっ・・・・・・ふう・・・。セイクレッド陣から敵部隊が中央拠点に!」
間諜は早口で言った。
「なるほど。先の夜襲は囮で、今度の夜襲で決める気だ。中央拠点内の兵は外の守備をさせ、敵に備えさせろ。」
「はい!」
間諜は走っていった。
二回目の奇襲部隊。これはセイクレッド騎士団団長、テラー・セイクレッドの部隊である。
「へっ、この寒いのにご苦労なこった。おし、行くぜ!中央拠点なんざ、俺達で落としてやれ!」
テラーは突撃命令を出し、自らを先頭として、突撃した。
「来たぞ!迎撃しろ!」
「セイクレッドの精鋭をなめるな!」
テラーの夜襲で、敵の目はテラー奇襲部隊に向いている。
「思い通りだ。さあ、空(から)の中央拠点を取るぞ!」
西側から進んでいる部隊は、アーミィの部隊である。
一回目も二回目も、全て目を逸(そ)らすためだったのである。
かくして、アーミィの部隊が中央拠点を落とした。
大した被害もなく、イモータル平原北部(仮)の要所、中央拠点を落としたのである。
「ゼロス将軍・・・。」
マッチはひたすらに小さくなっていた。
「お前、軍師だというのに、中央拠点を落とされたのか!真面目にやっていたのか!?」
軍師は関係ないのだが、怒るとゼロスに理屈は存在しなくなるのである。
「すみません・・・。」
「あやまって済むことではない!お前だけで中央拠点を取り戻して見せろ!」
「そんな・・・私一人じゃ・・・。」
「責任を勝手に降ろすな!全く、お前という奴は・・・・・・」
ゼロスの声がだんだん小さくなっていく。
マッチは顔を上げた。グロウが帰ってきている。
「グロウ皇帝・・・。」
「ゼロス、何を怒っている?」
「は、はい・・・。マッチ軍師が中央拠点守備に失敗しまして・・・。」
さっきのマッチのように小さくなっていく。
「中央拠点など、放っておけ。敵陣を取れればいいのだからな。」
「ま、まあ・・・そうですが・・・・・・。」
「マッチ、献策を頼む。これで失敗したら即刻打ち首、さらし首だからな。覚悟しておけ。」
それは、全く鶴の一声ではなかった。悪魔の一声だったのである・・・。