スピア高峰前哨戦

前哨隊任命

「ヒュウウウ・・・」
冷たい風が吹いている。
ここは、タイトルにある、「スピア高峰」ではないが、そこに近い場所である。
アーマメント軍は前回の戦で多くの兵を失った。
そこをセイクレッドは狙い、攻めて来たのである。
しかし、雪国の軍と山岳国の軍とではえらい違いがある。
本国は騎士団とかまくら族に任せ、セイクレッドはいつものメンバーで攻めている。
「・・・私が前哨隊に?」
セイドは、アーミィに呼ばれてこの天幕へ来たのだが、前哨隊に任命されるとは思っていなかったのである。
「ああ。敵に大した将はいない。セイド、お前の前哨隊が、敵の伏兵がいるであろう所へ行き、伏兵を出させて敵の陣形を崩す。俺の本隊は正面から、父の部隊は北から奇襲、ロイアルの部隊は南から強襲して、敵陣を総崩れにさせる。」
と、アーミィは作戦内容を説明した。
「どうしても私でないとならないのか?」
「他に誰がいる?」
セイドには、別働隊長という大役が務まりそうな人間は思い当たらなかった。
「私がやります。」
「頼んだ。地図で敵の伏兵地点を説明する。」
一通りの説明が終わると、セイドは天幕から出て行った。
「また、私が別働隊か・・・。」
毎回、こんな役をやらされている気がしてならないのだ。
「セイド、どうした?浮かない顔して。」
アウトローが、セイドの下を向いた顔を覗き込むように見て、言った。
「アウトロー。私は前哨隊長に任命された。少数精鋭でいくから、アウトローも来てくれ。」
「俺が?わかった。行ってやるよ。その代わり・・・」
「仕事を頼む、だろう?わかっている。仕事はやってやるから、前哨隊に入ってくれ。」
「それならいいぜ。」
「では、色々と勧誘してこい。精鋭を連れてくるのだぞ。」
「おう。じゃあな。俺はちょっと寝てから・・・」
「まだ昼だぞ。寝ないで起きろ。上官の私が走り回っているのに、部下のお前は寝ているなんて、不公平だろう。仕事、やってやらないぞ。」
「や、やるって。ちょっとした冗談だよ。」
それにしては目が眠そうにトロンとしているが。
「まあいい。やってくれ。」
「おう。」
セイドはまず、アイリーンとロイアル・・・は南にいくんだった・・・を探した。
陣内にいないことはわかっている。アイリーンなら、ギフトと手合わせでもして、圧勝しているのだろう。
セイドは陣から出て、山を登っていった。一人でだ。
アイリーンとギフトが打ち合っている。
剣はもちろん(?)、真剣である。
何合か打ち合っていたが、やがて、アイリーンの左手の剣がギフトの首に触れた。
「負けだ。くそっ!」
「まだまだね。これじゃやりがいがないよ。」
ギフトも負けたので、何も言えない。
これじゃ言われたい放題である。
「ギフト、アイリーン、話がある。」
セイドが止めた。
「なんだ?」
「私の前哨隊に入って欲しい。」
「前哨隊?」
「ああ。敵陣を崩すためのな。」
「私は入るわ。」
「俺も入るか。ヒマ潰しにはなりそうだしな。」
「二名加入、と。アウトローはどうしているか。」
アウトローは、サボっていた。
いや、ちゃんと何人もの兵士を誘ったのだが、アウトローでは説得力がなく、誰も入ろうとしなかったのだ。
「なんで俺はダメなんだよ。」
アウトローは嘆いていたが、すぐに立ち直った。
「ま、いいか。俺は前哨隊に入ってるんだし。セイドが何とかしてくれるさ。」
要するに、勧誘したくない、いや、寝たいのである。
そして、アウトローはすぐさま、地面に眠り込んだ。
起きてみると、朝で・・・はなく、夜だった。
「アウトロー、起きろ。」
セイドがアウトローを軽く蹴りながら言った。
「ん?もう朝か?」
「何を言っている。前哨隊だろう、お前は。」
「あ、ああ、そうだったな。じゃ、行くか。」
「ああ。」
セイドの前哨隊は陣から出て行った。
前哨隊にはセイド、アウトロー、ギフト、アイリーンの他、ウラヌスが入っていた。
兵数は三十人。これだけで敵陣を崩すのだ。
「・・・敵もたったのこれだけでやられたら、さぞ悔しいことだろうな。」
セイドは前哨隊を見渡しながら言った。

陣崩し

「たったった・・・」
前哨隊はたったの三十人で、敵の伏兵予想地点目指して進んでいた。
「確か、この辺りだったな。」
セイドは辺りを見渡して言った。
「何がだ?」
アウトローは話を聞いていたのだろうか?
「あのな、アウトロー、この前哨隊は敵の伏兵を看破するのが目的だ。」
「ああ、そうだったな。」
と肯(うなず)いて見せるが、なんだかわざとらしい。
「あそこだ。」
セイドが指差した先には、伏兵にちょうどよさそうな森があった。
「あの中に敵がいるのか?」
ギフトが言った。
「多分な。」
「俺達は伏兵を引きずり出せばいいんだろ?」
「ああ。」
「それなら簡単じゃねえか。」
「だが、そう突出するな。一人では危険だ。」
「わかってるって。」
と言いながら、ギフトは今にも走り出しそうだ。剣も抜いて握っている。
「おい、ギフト、俺を忘れるなよ。」
「ああ。」
森に近づくと、敵の伏兵が一斉にかかってきた。
「全力で戦え!ここで死ぬわけにはいかない!」
前哨隊の奮戦に、敵の伏兵部隊は動揺している。
「今だ!突破するぞ!」
セイドの号令で、前哨隊は伏兵部隊を突破する体勢をとり、突破した。
「この勢いで進め!」
やがて、二つ目の伏兵地点に到着した。
ここにも伏兵がいたが、前哨隊は突破した。
敵の伏兵部隊は前哨隊を追撃している。
前哨隊はアーマメント本陣に着きそうな勢いで走り続け、本当にアーマメント本陣に着いた。
「敵だ!」
「奇襲だー!」
本陣は混乱した。たったの三十人の兵に。
「火を付けろ!」
本陣に火が放たれた。これを合図に、ソルジャー隊の奇襲、ロイアル部隊の突撃が行われるのだ。
火が付けられ、本陣は収拾もつかないくらいに混乱している。
本陣に放たれた炎が、スピア高峰の頂上まで届きそうなくらいの勢いで燃え上がっていた・・・。