スピア高峰の戦い

二次奇襲

「ザザザザザザ」
ソルジャー隊による奇襲が開始した。
「急げ!手柄を取られる前にな!」
ソルジャーが急かすが、もう全速力で走っているのだ。無理である。
アーマメント本陣に着いた頃、まだロイアル部隊は到着していない様子。
「敵襲ー!奇襲だー!」
敵兵が叫んでいる。
「構うな!セイド隊と合流しろ!」
奇襲部隊は突撃し、敵陣を駆けた。
「セイド!」
「親父か!」
前哨隊は包囲され、奮戦しているところだったので、奇襲部隊との合流で助かった。
「もうじきロイアル殿の部隊が来る!耐え抜け!」
セイドはそう言って、兵の先頭に立った。
奇襲部隊と合流しても、たかだか百人程度。敵陣内で戦うには心細すぎる兵数だ。
ま、ソルジャーの奮闘でなんとか生き残っているが。
「・・・敵も収拾がついてしまったか。」
セイドは味方の部隊を見渡した。
「こんな兵数では全滅するな・・・。かといって、ここまで来て退くわけにもいかない。・・・」
と悩んでいるところへ・・・
「セイド、何やってんだ!戦え!」
と、アウトローの声。
「・・・そうだな。ここは戦うか。無理に退いても死ぬだけだ。」
セイドは決心し、剣を再び強く握る。
アーマメント軍の将はフュリアスである。
「あの程度の兵に何をぐずぐずしている!俺が出る!」
と、憤然として言い、槍を握った。
「フュリアス将軍、あの程度は我々で対処しますから、どうかここに留まってください。」
と兵が抑える。
フュリアスが出ると大暴れするので、陣が今以上にメチャクチャになってしまうからだ。
フュリアスは兵の言葉など聞く様子もなく、ズンズンと歩いていった。
「おい!アーノルド・クルーセイドはどこにいる!」
「ここだ。」
セイドが右の剣を上げた。
「貴様か!覚悟しろ!」
フュリアスが槍でセイドを突こうとするが・・・
バキッと音がした。フュリアスの槍が折れたのである。
セイドの前にはソルジャーが立っていた。
「てめえ、割り込んで来るな!どけ!」
刃のない槍を振り回しても怖くない。
「セイドはな、俺の子だ。てめえごときにやられてたまるか!」
フュリアスは近くのセイクレッド兵から槍を奪い、構えた。
「来い!」
「・・・味方はまだか・・・。」
こんなことを言って隙をつくっている場合ではない。
セイドはその場から消えた。危ないのだ、こんな奴らの近くは。
ソルジャーとフュリアスが対峙している頃、ロイアル部隊は全力で走っていたのだが、木などが邪魔をし、思うように進めない。
「ええい、こんな木なんかに邪魔されている間にも、味方はやられているのだぞ。もっと急げ!」
ロイアルは先頭に立ち、槍を振り回しながら言った。遅い奴は殺す、と表現しているのである。
足は速まったが、少しだけだ。だが、あともう少しでアーマメント本陣に着く。
「お、本陣が見えたぞ!急げ!味方を救出しろ!」
部隊はいきなり速くなり、ロイアルを驚かせた。
「かかれ!」
アーマメント本陣は既に混乱も治まっており、前哨隊と奇襲部隊は絶体絶命の危機。
それをロイアル部隊が救った。
「やっと来たか!」
セイドは歓喜を声を上げ、剣を握り直した。
ロイアル部隊により勢いのついたセイクレッド軍を相手に、暴走している将がいる軍など恐れるに足らない。
「退け!もう無理だ!」
フュリアスは退くように言うが、ロイアル部隊の突然の出現で兵は混乱して、思うように動いてくれない。
「あ〜、もういい!」
フュリアスは一人で逃げ出した。
「将軍!」
将が勝手に逃げていくので、兵士達は動揺を隠せない。
降伏する者まで出て来たが、セイクレッド軍はそんなことで勝った気にはならない。
セイドは右の剣を掲げ
「本陣の兵に構うな!フュリアスを狙え!」
と命令した。
しかし、いくら探してもフュリアスはいない。逃げたのだから、本陣を探しても意味がない。
「・・・本陣にはいないようだな。外を探せ!」
セイドは命じ、走った。

フュリアスボロ負け

「タッタッタッ・・・」
セイド前哨隊、ソルジャー奇襲部隊、ロイアル部隊は合流し、総合してセイド部隊と言おう。
セイド部隊はフュリアスの後を追うため、アーマメント本陣から出て行った。
セイドはしばらく走っていたが、目を丸くして足を止めた。
「前方で戦が起きているな。何故だ?」
アウトローがセイドに近寄って来た。
「ま、敵なら倒せばいいだけだ。そうだろ?」
「そうだが・・・。」
どうも答えようがない。
セイドは仕方なく突撃命令を下した。
戦っていたのはアーミィ部隊とフュリアス部隊のようだ。
「あ・・・国王!」
兄上、と言いそうになった。
「なんだ、セイドか。」
「国王は、本軍を連れて、正面突撃すると言っていたが・・・。」
「敵を騙すには、まず味方から、というだろう?」
「そうだが・・・。」
「こいつらは突撃の準備中だったらしく、俺を部隊で混乱させてやった。セイド、さっさとアーマメントを滅ぼそうぜ。俺は休みたい。」
「・・・奮戦しろ、と?」
「わざわざ言わなくても分かるだろ?さすがは俺の弟だ。」
自分を褒めているのと変わらない。
「じゃ、手始めにフュリアスでも斬りますか?」
「ああ。」
話の内容が恐ろしい。戦時下に置かれていれば、こんなもんか。
セイクレッド軍はフュリアス軍を完全に退かせた。
フュリアスは悔しがっていた。いつもセイクレッドには勝てないのだ。
セイドはアーミィに呼ばれ、軍から離れた所へ来ていた。
「セイド、やっと来たか。」
「兄上、何の用ですか?私は軍を集結させておきたいのだが・・・。」
「・・・セイクレッドがアーマメントを取ったら、その後どうなると思う?」
「無論、兄弟国を滅ぼしたのだから、イモータルが攻めて来るだろう。」
「セイクレッドではなく、ブライトではないか、攻められるのは?」
「・・・確かに。軍事力の低いブライトを攻めてからの方が効率がいい。」
「・・・セイクレッドを攻めて来ようが、俺だけで充分防げる。だが、ブライトは・・・。」
「ブライトは私に任せてください。兄上がセイクレッドを防ぎ、私はブライトを守る。これでいいだろう。」
「イモータルにゼロスがいることを忘れるな。こいつだけは俺じゃ防ぎ切れるかどうか・・・。」
「・・・憶測で結論を出そうとするのはやめよう。何にせよ、大陸を制覇すればいいだけだ。」
アウトローの性格が移ったらしい。
「そうだな。柄にもなく悩んだ。思慮はセイドに任せるか。」
「だったら位をもっと上げてください。」
「それは無理だな。」
「私はアウトローの分の仕事もやっているのに?」
「それは勝手にやってるだけと見なされる。位を上げたいなら、そうだな・・・この先のアーマメント軍との戦いで活躍させてやるか。」
「ありがとうございます。」
「じゃ、俺の仕事も少しは手伝ってくれ。」
「それはお断りします。」
セイドは即答し、二人は同時に笑い出した。やはり兄弟だ・・・。
フュリアスはセイクレッドにはどうしても勝てないようで、退却中も悩んでいた。
「・・・俺の突撃戦法は悪くないはずだ。なんで負けるんだ?」
突撃バカではいくら考えても、突撃以外の策など出まい。そこはドリズルにも注意されたが、フュリアスはそんなことではめげない(?)。
ドリズルは濃霧半島にはおらず、アーマメント首都、牙城から軍を率いてハイ(高い)山へと向かっていた。
ハイ山と言っても、さほど高い山ではない。
昔、現アーマメント領とは国境山脈で分けられており、アーマメントへ調査しに行った人達がハイ山を見て「高い」と思ったので、それだけでハイ山と名付けられてしまった。歴史なんて、いい加減なものさ。私がつくっているのだが・・・。