ハイ山の戦い

「ザッザッザッ・・・」
セイクレッド軍はスピア高峰のアーマメント軍を撤退させ、ハイ山へと来ていた。
「・・・じゃ、各自、俺が指示した通りに動けよ。解散だ。」
作戦会議をしていたのだが、陣を敷いておらず、馬上での(セイドは乗れない)会議だった。
セイクレッド軍は三手に分かれた。
本軍のアーミィ軍は、ハイ山に陣取るアーマメント軍の内、フュリアス軍を誘い出し、手薄になった陣をソルジャー部隊がまたしても奇襲を行い、セイド部隊はハイ山に隣接している暁光(夜明けの光)山を制圧しに行った。
「おい、フュリアス!」
アーミィが直々に挑発している。
「誰だ?てめえは!」
フュリアスはいきなり挑発に乗っている。
「俺はセイクレッド王、アーミィだ!フュリアス、お前に俺を殺す自身があるなら、来い!」
フュリアスが陣から出て来た。
「アーミィ!俺と勝負しやがれ!」
ドリズルがフュリアスを止めようとしているのが見えた。
「フュリアス、上官の命令に従え!」
「ドリズル、ここは俺が突撃してやる!」
「・・・早く来い!おじけづいたのか?」
「フュリアス部隊、突撃!」
フュリアスは騎乗し、走り出した。
「フュリアス!止まれ!」
ドリズルの制止も空しく、フュリアスは聞く耳を持たない。
「よし、来たな。退け!」
アーミィの号令で本軍は退き始めた。
「追撃だ!」
フュリアス部隊は迷いの欠けらもないように、ただただ走り続けていく。
その様子をドリズルはじっと見つめ、そして兵士達に命令した。
フュリアス部隊がいなくなり、ドリズル軍は多少の混乱を強いられたが、そこはドリズルの力の見せ所。統率のよく取れた軍である、混乱はすぐに収まった。
「・・・アーミィのことだ。奇襲が来るだろう。全隊、奇襲に備えて構えろ!」
ドリズルは命令した。
その途端にソルジャーの奇襲部隊が姿を現したのである。
「うろたえるな!冷静に対処すればよい!」
ドリズルは槍を握り、走り出した。
ソルジャーは、自ら先頭に立ち、アーマメント兵を薙ぎ払っていた。
「邪魔だ!ドリズルとかいう奴を出せ!」
やれやれ、なんでドリズルの周りには突撃バカばかりが・・・。
「私だ。私がドリズルだ。」
「お前か!覚悟しろ!」
ソルジャーが斬りかかって来るが、ドリズルは至って冷静である。
ドリズルの背後から一矢の矢が射られ、ソルジャーの左手に刺さった。
「痛ッ・・・。」
「どうした?来ないのか?」
「くそっ・・・。ドリズル・・・!・・・・・・奇襲部隊、突撃だ!俺に構うな!」
「将なくして兵は動けん。ソルジャー、だったか。覚悟はいいか?」
「・・・」
ソルジャーはふっと笑った。
「いいわけねえだろ!俺の息子はまだ未熟だからな!」
ソルジャーは薙刀を振り回し、ドリズルを引かせた。
ソルジャーは陣内を走り回って行った。
奇襲部隊がアーマメント陣内で奮戦している頃、セイド部隊はハイ峡谷へ来ていた。
「ドリズルなら、何か策があるだろうな・・・。」
セイドは兵に警戒するように言った。
ハイ峡谷の谷底ではないが、一応伏兵などを警戒しないと、全滅の可能性も考えられるからだ。
「アウトロー。」
セイドが呼ぶと、呼ばれて走って来る犬のごとく、アウトローが現れた。
「なんだ?」
「アウトロー連隊は、私の本隊から離れ、突出してくれ。暁光山へ向けてな。」
「警戒するように言ってから言うことか?」
「お前の連隊で敵の伏兵を看破しようと思う。」
「・・・要するに、俺は囮か?」
「少し違うが、まあ、似たようなものだな。」
とセイドは肯く。
「わかったよ。やればいいんだろ、やれば。じゃ、俺の隊には特別に休憩をくれよ。」
「いいだろう。その分、頑張って来い。」
「おう!アウトロー連隊、暁光山へ一足先に行くぞ!」
アウトロー連隊は次々に本隊から離れていく。
「・・・さて、アウトロー連隊の様子を見ながら進むか。」
本隊はゆっくりと、確実に進軍していった。
ハイ峡谷の谷底を見下ろすと、そこには小さな川がゆっくりと流れていた。

ドリズル奮戦

暁光山の戦い

「たったったっ・・・」
アウトロー連隊は敵の伏兵に出会わなかった。
「・・・おかしいな・・・。敵が一人もいないなんて・・・。」
辺りを何回見渡しても、敵らしい姿どころか、味方の兵以外の誰の姿も見えない。
「・・・探す必要はないしな。俺達は暁光山へ突撃だ!」
暁光山へ着いたが、やはり敵の姿は見えない。
「辺りを探せ!セイドが困らないようにな!」
連隊は散り散りになった。ここを襲われたら全滅だろう。
だが、私はそんな酷なことはしない。
「・・・いないのか・・・。おい、セイドに知らせてやれ!」
連隊の一小隊が来た道を戻っていく。
前方から小隊がやって来た。
「セイド将軍、この先に敵は一人もいませんでした。」
兵士はひざまずいて言った。
「そうか。・・・おかしいな・・・。アウトローはまだ探しているか?」
「はっ。恐らく。」
「そうだな・・・・・・。よし、伏兵に怯えず、そのまま進軍するか。」
「では、そのように伝えてきます。」
「ああ、頼む。」
本隊は暁光山へ着いたが、伏兵など見当たらない。
「・・・伏兵を探せ!いればその場で斬り捨てろ!」
セイドは命令した。
いくら探しても、一向に敵兵は出て来ない。
いや、そうでもなかった。
フュリアスはアーミィの挑発に一時乗っていたが、奇襲部隊を退かせたドリズルに一喝され、暁光山へ来たのである。
それに、ドリズルは暁光山が攻められることはわかっていたので、伏兵を配していたのだ。森の奥深くに。
「敵軍が来ました!」
見張りが叫んだ。
「来たか。伏兵が来るだろう!構えろ!本隊は応戦だ!」
セイドが命令すると、兵はせかせかと走り出し、セイドの近くへ集まって来た。
敵軍は猛然とかかってくる。
「・・・フュリアスだな、この動きは。」
本隊はフュリアス軍との戦闘を開始し、アウトロー連隊もフュリアス軍に呼応して出て来た伏兵の応対で余裕がなかった。
兵力ではほぼ互角。フュリアスの突撃と、セイドの統率力が勝敗の鍵を握っていた。
まあ、フュリアスの突撃は逆落としなら効果は倍増なのだが、今はその逆で、山を登ってきているのだから、勢いがセイド本隊より劣っている。
「フュリアス!勝負は決まったな!」
「ぐっ・・・。退け!こんな山を取られたところで、大した問題ではない!」
「追撃するな!我らの任を果たすのが先だ!」
アウトロー連隊はとっくに伏兵を倒していた。
セイドは部隊を集結させ、アーミィに託された任務を果たす準備を始めた。