牙城の戦い
追撃阻止
「ガサガサ・・・」
山岳国なので、アーマメントは険しい山、深い森が多い。
ハイ山の包囲を突破し、全速力でアーマメント首都、牙城へ向けて進軍している身には、かなり厳しい環境である。
そして、ドリズル、フュリアス部隊や騎城壁が追撃して来る可能性が高いため、その追撃を阻止するための部隊が置かれた。
もちろん(?)、別働隊の大将はセイドで、その下にギフト、ロイアルがいる。
「・・・で、俺が伏兵なんてやるのか?」
作戦会議でセイドの発言にギフトが文句を言った。
「ああ。」
「ロイアルみたいに正面から攻撃したいぜ。」
「お前じゃ突出するだろう。ロイアル殿のような歴戦の将がいい。」
「ちょっと待った。」
とロイアルが口を挟む。
「何ですか、ロイアル殿?」
「わしは歴戦の将ではない。イモータル南部は平和だったぞ。」
「・・・とにかく、ギフトよりは戦の経験があるでしょう?」
「うむ。そうだな。」
「なら、歴戦の将ということにしてください。」
「わかった。」
「・・・俺はどうなるんだ?変わるのか?」
「いや、絶対に伏兵をやってもらうからな。」
「・・・わかったよ。」
「では、作戦開始だ。」
作戦内容はさほど難しいものではない。
まず、ロイアルが敵を誘い、ギフトの伏兵で混乱させる。
そこをセイド部隊が通過し、奥にいるであろうドリズル部隊に猛攻を加え、後はそれぞれ勝手にやってろ、というもの。
勝手にやってろ、というのはいい加減だが、そこは臨機応変にやってもらうのだ。
ロイアル部隊はフュリアス部隊の突撃を受けていた。
「もういいだろう。退け!」
「逃がすか!追え!」
しかし、フュリアスの追撃を拒もうとする者がいた。
「フュリアス、待て!」
「あ、ドリズル?」
「フュリアス、追撃はよせ。」
「敵がせっかく逃げてくれてるのに、追撃しないなんてもったいないだろ。」
ま、突撃バカなんてこんなもんである。
「追撃して兵を無駄に兵を失った方がもったいない。」
「そうか?」
「そうだ。追撃せず、敵の動きを見ておけ。」
「・・・そうだな・・・。」
フュリアスは肯いた・・・が。
「なんてな!ドリズル、俺に説教は聞かねえぜ!」
「やれやれ、無理はするなよ。」
フュリアスはさっそうと駆けて行った。
「フュリアス、覚悟しろ!」
ロイアルが叫ぶと、ギフトの伏兵部隊が近隣の茂みから湧き出て来るようにして出て来た。
「伏兵がいたか・・・。死なねえようにしろ!」
「フュリアス、俺と勝負だ!」
と名乗り出たのはギフト。
「誰だ、お前は?」
「俺はギフトだ。名前なんていい。とにかく勝負!」
「無名武将が何言ってんだ。まあいいか。来い!」
フュリアスが構える。
「おい、お前、馬から降りろよ。どうみても俺が不利だろ。」
「そっちが勝負仕掛けといて、言うことがそれか?降りるかよ。」
フュリアスは槍でギフトを突き刺そうとする。
「じゃ、俺が馬に乗るから、お前降りてくれ。」
と言いながら、ギフトは馬を斬る。
馬が大きく鳴きながら立ち上がる。
「危ねえなあ。」
フュリアスは鎧を着けているので、そのまま背中から落ちた。
「さ、これで冗談は終わりにしようぜ。」
ギフトの剣先がフュリアスの首に刺さりそうである。
「終わり?なんでだ?」
「対戦相手がいなきゃ戦えないだろ?」
「一人で戦ったらどうだ?」
想像すると何だか悲しくなってくる。
「お前としか戦えないわけじゃない。」
「・・・雑談は終わりにするけどな、俺は終わらないぜ。」
フュリアスはさっき落ちた衝撃で放してしまった槍を瞬時に掴み、ギフトを叩く。
刃の部分ではないが、それなりに痛い。
ギフトは剣で槍を切ろうとしたが、切れなかったので、すぐに逃げた。
フュリアスはそれを見送った。
セイド部隊はドリズル部隊を攻撃していたが、意外にも敵部隊の兵が多く、逆に退かざるを得なくなってしまった。
フュリアス部隊は一応撃破したが、ドリズル部隊と合流してしまった。
とりあえず、敵の追撃はいくらか阻止できたが、結果は微妙である。
アーマメント首都降伏
「ヒュウウウ・・・」
牙城付近には風が吹いていた。
強い風はセイクレッド陣の旗をたなびかせる。
「牙城をどうやって落とすか、だ。」
アーミィは言った。
作戦会議には議長アーミィの他、ソルジャー、さほどの将ではないがアイリーン、まだ将でもないのにウラヌスが出席している。
アウトローは作戦会議を辞退している。
「山から下りて、その勢いで城に入ったらどうだ?」
ソルジャーも少しは考えるようになっている。成長したのだ、この歳で。
「牙城に隣接している山へ行くにはかなり遠回りになる。それは無理だな。」
「降伏勧告はどうだろう?」
ウラヌスが意見を言う。
「降伏するかどうか・・・。少なくとも、アーマメントはセイクレッドよりも軍事力に長けているから、誇りに賭けて、そう簡単に降伏はしないだろう。」
アイリーンが不満そうな顔になり、手を挙げた。
「アイリーン。」
「はい。国王、そんなに否定的に考えられてはいい案も捨てることになります。少しは認めてください。」
国王が元一般兵士に説教されている。
「そこまで否定はしていないと思うが・・・。」
「しています。」
「認めるからそんな怖い顔するな。・・・では、降伏勧告を一度してみる。その後はその時考えるとしよう。これでいいな?」
最後に「これでいいな」と言ったが、アーミィとしては、アイリーン一人に対して言ったのだろう。
「わかった。で、誰が言うんだ?」
「ここは王である俺が言おう。」
そして翌日、アーミィは牙城の目の前に来ていた。
「牙城にこもる者ども!我らは騎城壁をも破ってここまで来た!今更お前らごときが勝てる相手ではない!降伏すれば、殺しはしない!」
城壁から将らしき人物が出て来た。
「騎城壁が破れようとも、ドリズル将軍やフュリアス将軍がいる!」
「それも撃破してここまで来たのだ!」
「撃破」ではなく「突破」だが、セイクレッド軍によって西側の情報が全く来ないので、牙城の兵には分からない。
「そ、そんなはずはない!」
かなり動揺しているようだ。
敵将の横にいる見張りが後ろへ下がった。
その見張りは矛先を敵将の首目掛けて突き出す。
・・・敵将が城壁から落ちてきた。
「我らはセイクレッドに降伏します!」
敵将を殺した見張りが言った。
「・・・罠でもないだろうな。よし、入城するぞ!」
牙城の城門が開かれ、セイクレッド軍は悠々と入城していく。
こうしてセイクレッド軍はアーマメント首都、牙城を落城させたのだが、まだドリズルやフュリアスが生きている。
アーミィはそれより、旧アーマメント領の治安回復などに力を入れていたため、ドリズル、フュリアス部隊が旧アーマメント領南部へ向かったことに気付かなかった。
騎城壁はセイクレッドへ向かったが、三つ子砦でテラー率いるセイクレッド騎士団にあっさりと負けた。