ワイルド山前哨戦

奇襲と強襲

「ヒュウウウ・・・」
セイクレッドがアーマメントを攻めている間、ブライトも行動を見せていた。
ブライト軍はアーマメントを攻撃していた。
ブライト軍はアーマメント南部のワイルド山を攻撃目標にしたが、グローリー軍が待ち構えている。
ま、セイクレッド軍を防ぐためにドリズルもフュリアスも、しまいにゃ国が誇る精鋭、騎城壁まで出てりゃ、人手も少なくなるわな。
・・・ちなみに、ワイルド山の名の由来は、この山が渋くてカッコイイオジサマのようだからではなく、道という道もないほどに荒れているから、荒々しい性格の山だと調査隊は思ったのだろう。
「・・・グローリーを殺せるな、その策だと。」
ヴィクトリィが言った。
騎士団は山岳では使えないので連れてきていないが、ヴィクトリィもスプレンダーも来ている。ブライトも人材が少ないのだ。
「うむ。だからこそ、油断はならぬぞ。焦りも抑えるのだ。」
「団長はいつも焦りますから。」
ブライトネスとスプレンダーはヴィクトリィを見る。
「俺はそんなバカじゃねえよ。とにかく、強襲は任せてくれ。」
「では、スプレンダー、ヴィクトリィよ、グローリーを持ってきてくれ。」
「はい。」
ブライトネスとジョーンズの部隊は、ワイルド山の西側のワイルド盆地へ、ヴィクトリィとスプレンダーの部隊はワイルド山山頂のアーマメント陣へ向かった。
スプレンダーが奇襲し、混乱したところをヴィクトリィが正面から強襲。グローリー軍をワイルド盆地へ追い詰めるのだ。
奇襲部隊が、道なき道を静かに走り続けて早三十分。
まあ、この時代に現代のような正確な時計はないので、時間など対して気にすることはないのだが。
「・・・行こう・・・。」
スプレンダーは奇襲部隊の内、数人の兵士を連れ、グローリー陣の背後へ行った。
時々ある茂みに何度か身を潜めながら進み、遂に見張りを捕らえ、口を強くふさいで殺した。
スプレンダーを先頭にして進んでいく。
スプレンダーは、先に進んで、木の後ろへ回った。
槍も敵兵の視界に入らないようにした。
顔を出し、敵兵の様子を確認すると
「よし、いくぞ。」
と、手招きした。
この数人で敵を混乱させ、奇襲部隊の本隊で突撃し、その後をヴィクトリィ部隊が続いていく作戦である。
奇襲別働隊は隠れもせず、ただ一直線に、視界に入っている敵兵を目指して走る。
「あ・・・。敵襲だ!」
敵兵はようやく気付いたようだ。
「これで敵も混乱する。団長がちゃんとやってくれればいいが・・・。」
上司を心配する部下というのも少々変な感じである。
「敵だと!?すぐに応戦しろ!」
グローリーと他の将達は、天幕内で作戦についてあーだこーだと無駄な話し合いをしていたが、グローリーがその無駄話を取り止めにした。
外に出てみると、すでに戦闘が始まっていた。
グローリーも戦闘経験は豊富である。戦いながら確認しただけでも、ゆうに数百人を超していた。
「どこだ?グローリー、いたら返事しろ!」
もちろん、口調と状況をみれば、予想はつくだろう。ヴィクトリィである。
騎乗して、辺りを探している。
・・・ヴィクトリィの叫びはグローリーにも聞こえていた。
「王、ここは危険です。お逃げください。」
グローリーの護衛の一人が言った。
「何を言う。王である俺が戦わないでどうする?」
「ですが、王を異常なまでに狙う者もおります。ここはどうか・・・。」
ヴィクトリィのことである。
「断る。俺は戦うぞ。」
護衛は呆れた顔をしたが、すぐに顔つきが変わり、勇敢な感じの表情である。
戦闘のプロは一つのことに夢中になったり、まどわされたりしないものだ。
ヴィクトリィの叫びは、スプレンダーにも聞こえていた。
「団長・・・。やれやれ・・・。」
心配的中、とでも言おうか。
スプレンダーは足を速め、グローリーを探した。ヴィクトリィも、どうせそこにいるのだろう。

追い詰め

「バキッ」
剣や槍は丈夫に作られていないので、よく折れる。
予備の武器があるが、やはり武器が折れるとなると、心配になってくる。
ヴィクトリィはグローリーを見付けていた。
「・・・おい、俺はお見合いしに来たんじゃねえんだ。さっさとやろうぜ。」
ヴィクトリィは矛先をグローリーに向けると、グローリーの護衛がそれを槍で叩いて下げる。
「わかった。お前達は下がっていろ。」
護衛は渋々、グローリーの後ろへ下がった。
「じゃあ、やるとするか。」
「ああ。」
二人は何十合か打ち合ったが、ヴィクトリィはグローリーの槍をはじいて動かなくなった。
「・・・どうした?殺るなら早くしろ。」
「・・・ス、スプレンダー?こ、これはだな・・・。」
かなり焦っている。
ヴィクトリィの視線の先にはスプレンダーが立っている。
「団長、グローリーをここで殺してはならないと何度言いましたか?」
矛先を向けているところが怖い。
「そ、それが・・・グローリーが一騎討ちしたいって言うから・・・。」
責任を敵に押し付けるのは戦国乱世の常でもあるが、この場合は違うような気がしてならない。
「王が自ら一騎討ちを望む訳がないでしょう。グローリーも何か言ってください。」
敵に協力を求められても・・・。
「ま、まあ・・・奴から戦いたいと言ったから・・・。」
「そんな訳ねえだろ。な、スプレンダー、俺を信じてくれよ。俺はお前の上司だぞ?」
「信じれません。団長ですから。」
ヴィクトリィは元犯罪者だから、信じられないのは分かるが・・・。
「・・・っておい。お前、俺と戦わないのか?」
グローリーはこの雰囲気に乗せられていたが、正気に戻ったようである。
ヴィクトリィが口を開こうとするが、スプレンダーの厳しい視線がそれを止めさせた。
「・・・やりたいけど、ここは退こう。これでいいだろ、スプレンダー?」
「はい。」
騎士団の二人はグローリーの元から去っていった。
「・・・なんなんだ、あいつら・・・。」
グローリーは呆れ、不思議そうに言った。
ヴィクトリィとスプレンダーが見えなくなると、突然グローリーの横から
「味方の被害が増えつつあります!」
と声。
「いきなり言うな。耳鳴りがする・・・。被害が大きいなら、退くしかないか。あいつらの言ってたことは気になるが、それは後回しだな。退くぞ!」
途端に両軍の兵が動き回る。
「お、退いてるな。スプレンダー、追撃だな。」
「はい。」
ヴィクトリィには、スプレンダーが全く不服そうに言わないのが不服だった。あんなに攻撃するなと言っていたのに・・・。
ヴィクトリィはスプレンダーの真面目さがいまいち理解できていないようだ。
ヴィクトリィ、スプレンダー部隊は、ワイルド盆地へ撤退するグローリー軍を追撃する。
「ハアハア・・・やっと盆地か。」
グローリーはふう、と息をついた。
ワイルド盆地にはグローリー軍のもう一つの部隊が陣取っていた。
どちらが攻められても、撤退や援護が出来るように、この陣形を取ったのである。
「・・・せーの・・・。」
岩や大木が押され、ワイルド盆地の中央へ向かって、すごい勢いで転がっていく。
ブライトネス、ジョーンズの落石部隊が攻撃を開始したのだ。
転がる岩や木々に吸い込まれるように、ブライトネス、ジョーンズ部隊の兵士達が駆け下りていく。
グローリーも落石があるかもしれないと思っていたが、盆地の部隊を置いていくわけにはいかないので、ここへ退いたのだ。
盆地の部隊を置いて退いていれば、こんな惨事にはならなかっただろうに。
五万いた兵が、いまではたったの一万である。
「グローリー!」
ヴィクトリィはグローリーを見付け、呼んだ。
「貴様!」
「覚悟しろ!これで一番手柄は俺のものだ!」
ヴィクトリィはグローリーに向かって行き、 槍を突き出した。
グローリーはそれをかわし切れず、首元に軽い傷を負った。
「ちっ・・・。」
「とどめ、いくぜ!」
とやり合っているところへ、スプレンダーの槍がグローリーの首へ・・・。
グローリーは死に、ヴィクトリィは憤然とし、スプレンダーはヴィクトリィと何合もやり合っていた。
将二人のケンカで軍は混乱していたが、ブライト軍はグローリー軍を殲滅し、ワイルド山での戦に完全勝利した。
まあ、まだドリズルやフュリアスがいるがな。