ワイルド山防衛戦中編

希望は一般武将の手に

「ゴオオオオォォォォ・・・」
ドリズル軍本陣ではヴィクトリィ奇襲部隊が、炎とドリズル軍に包囲されていた。
「ヴィクトリィ!やっと見付けたぞ。」
ドリズルが現れた。
「・・・お前を殺せば、この窮地から逃れられるな。」
「それはどうかな。まあいい。皇帝の仇、取らせてもらう!」
「違う!奴は俺じゃなくってスプレンダーが刺したんだ!」
「今更言い訳など聞きたくない!潔く戦え!」
「え〜?なんで俺が・・・。」
と言いながらも、ドリズルと何合がやりあっている。
「そういや、味方が増えたような気がするな・・・。」
一騎討ちの途中にこんなのんきなことを言う余裕があるのだから、力の差は歴然か。
「のんきなことを言うな!」
ドリズルは必死である。
「騎士団長!どこですか!?」
「お、この声はジョーンズ・・・。おーい、こっちだ、ジョーンズ!」
「しゅ、集中しろ!」
ドリズルはとことん弱いようだ。
「ちっ、しゃあねえな・・・。ほら!」
ヴィクトリィは突き出してきたドリズルの槍を左手で掴んで折り、右手の槍でドリズルの首を狙った。
だが、ドリズルは素早く槍を避け、すぐに逃げた。
「くそっ、手柄を逃したか・・・。」
今(前もだが)のヴィクトリィには、手柄を立てる以外のことが頭にないようだ。
「騎士団長、ご無事で何よりです。」
「手柄は逃したけどな。さ、退くぞ!」
「騎士団長、森から退いてください。」
「何でだ?」
「崖での落石が失敗したからです。」
落石が失敗、つまり・・・スプレンダーが孤立しているということだ。
「・・・スプレンダーを助けるぞ!南から退け!」
「騎士団長!副騎士団長を救助していては我々まで・・・。」
「たまにはいいじゃねえか、俺達がこんなところで死ぬとは思えねえし。」
元犯罪者の勘なのか、自信満々に言った。
ジョーンズもヴィクトリィの説得は無理と判断した。いい加減な奴の意思は曲がらないのか。
「援軍は絶対に来る!それまで頑張れ!」
この戦況でたかだか一部隊に援護が来るとは思えないが、スプレンダーの頭にはこれしか無かった。
兵もさすがに疲労の色が出ており、旗色も病気なんじゃないかと思うくらい悪かった。
そんな時、スプレンダーの期待の星と、作者が勝手にした希望の星、ジョーンズが救援に来てくれたのだ。
ヴィクトリィの突出でかなりの混戦になったが、ブライトの旗色は急に良くなった。
「スプレンダー!よく生きてるな!」
「団長・・・。・・・この後どうするんですか?」
「どうするって・・・敵中突破しかないだろ?」
「私のことなど放っておけばすぐに逃げられたでしょうに。」
「まあそう言うな。せっかく助けられたんだから、少しは感謝してくれよ。」
「後でします。敵中を突破し、本陣へ帰還するぞ!」
挑発部隊、奇襲部隊、落石部隊の三隊はドリズル軍本陣も突破し、あとはジョーンズの通った道を戻れば、本陣に到着する。
ヴィクトリィを除いた三隊の全員が、まだ奮闘状態で、近寄ると熱い。

本陣突撃

「ワアアアァァァァ!」
ブライト本陣はフュリアス部隊が突撃している。
が、本陣は山頂のため、坂で勢いが衰え、柵や矢が邪魔をするので思うように進まない。
「ええい、こんなものに邪魔されてたまるか!柵を越えろ!」
フュリアスが叫ぶが、部隊にはもはや突撃の勢いはなく、やられっぱなしである。
ブライトネスはその様子を見ていた。
「我が軍の方が押しているな。作戦通りに事が進んでいれば、我が軍の圧勝か。」
作戦は完全に失敗しているが、ブライトネスはまだ知らない。
そういえば、ドリズルはどうしているだろうか?
ドリズルはヴィクトリィ、スプレンダー、ジョーンズの三隊を追撃していた。
「奴らを逃すわけにはいかん!ここで果ててもらうのだ!」
ドリズルは焦っていた。
・・・ヴィクトリィにあっさり負けたことに腹が立っているからかもしれない。
しかし、ドリズルの願いは届かなかった。
三隊はワイルド山のフュリアス部隊がいない、側面から本陣へ入っていった。
これでは追撃は無理だ。
「む・・・追撃は止めだ!誰か、フュリアスに退くよう言ってくれ!」
兵士達は悩んだ。あの激戦の中をすり抜けて生き抜けるかどうか・・・。
「では、私が行きます。」
一般兵の一人が言った。
「一人では死ぬ可能性もある。他に十人くらいは必要だ。」
成功すれば手柄になり、出世できる。
「私も行きます。」
こうして十二人の兵士が伝令になった。将来の出世のために。
フュリアスの元に着くまでに五人ほど死んだが、まだ七人も残っている。
「フュリアス将軍、お退きください!ドリズル将軍からの命令です!」
「わかった!全隊、退け!」
ブライトネスは少し前に出て
「追撃するな!休んで疲れを癒せ!」
の命令し、自分も休むため、本陣の中へ歩いていった。
「フュリアス、無事だったか。」
「なんとか。大将はなんでここに?」
「敵部隊を包囲したのだが、突破されてな。その上逃がした。」
「そりゃ気の毒に。で、本陣はどうする?」
「焼けた本陣を使う。多少の修復で充分だろう。」
「攻められたらすぐに落ちるな。」
「先手を取るまでだ。」
ドリズル軍は焼けた本陣を軽く修復した。
「・・・さてどうするか・・・。」
ドリズルは天幕の中で、足を組んで椅子に座っていた。
「・・・長期戦となれば、セイクレッド軍が来るだろう。ブライト軍を退かせなければな。」
ドリズル軍は流軍だ。王は死に、首都も落ちた。
そのため、頼れるのはイモータルだけだ。
「イモータルに逃げられればいいが・・・。」
ドリズルが悩んでいるところへ、フュリアスがやって来た。
「大将、作戦の方はどうだ?」
「・・・フュリアス、ブライト本陣へ奇襲を仕掛けてくれないか?」
「奇襲?」
「奇襲を合図に伏兵でワイルド山を包囲し、突撃する。」
「奇襲はあんま好きじゃねえけど、やってみるわ。」
「頼む。奇襲部隊編成も急いでくれ。今夜には奇襲できるように。」
「今夜か。わかった。」
「私は伏兵部隊の編成を担当する。」
ドリズル軍は大忙しで奇襲部隊、伏兵部隊の編成を行った。
ブライト軍もいくらかの警戒はしているが、今はとにかく疲れを癒さねばならない。