ワイルド山防衛戦後編
ワイルド山包囲網
「・・・」
フュリアスの奇襲部隊は静かにブライト軍本陣へ向かっていた。
・・・伏兵も配置され、準備万端だ。あとは奇襲が成功すれば・・・。
「・・・行くぞ・・・。」
フュリアスは奇襲はあまり好きではない。どちらかというと、いや、何よりも、突撃が好きなのだ。
そんなフュリアスでも懸命に冷静になろうとしている。
火矢を放った。
本陣に火が放たれ、ブライト軍は混乱した。
「かかれ!」
フュリアスは先頭に立ち、突撃命令を下した。
ブライトネスは安全なところへ避難させられ(本人は嫌々)、本陣はヴィクトリィらが守っている。
「火だ!行くぞ!」
伏兵部隊はワイルド山への突撃を開始した。
「奇襲は成功したか。ワイルド山へ突撃せよ!」
ドリズルの本隊もまた、ワイルド山へ突撃を開始した。
「包囲されてるみたいだな・・・。」
ヴィクトリィは呟いた。
「やれやれ、私達はこの戦で何度窮地に立たされたことか。」
スプレンダーはため息をついた。
ジョーンズはブライトネス護衛に行ったため、ここにはいない。
「ヴィクトリィはどこだ!?いるなら出て来い!」
「団長、ご指名です。」
「へいへい。俺を狙う物好きもいるもんだな、ドリズル同様。」
面倒くさそうにヴィクトリィはフュリアスの元へ行く。
「貴様がヴィクトリィか?覚悟!」
「こっちが返事する前にやるな!全く・・・。」
ヴィクトリィとフュリアスは何十合か打ち合ったが、二人だけでは決着がなかなかつかない。
スプレンダーは、卑怯と思いながらも、フュリアスに槍を突き出した。
が、どこからか矢が飛んで来て、それがヴィクトリィの足に刺さった。
フュリアスは避けきれず、肩に槍が刺さったが、平然としている。
「どっちも手出ししやがって・・・これじゃ一騎討ちじゃねえな。」
ヴィクトリィは矢を抜いた。
「この決着はあとにするか。」
「どっちかが生きてたらな。」
フュリアスもヴィクトリィも背を向け合い、敵兵を倒しに行った。
ブライトネスはワイルド盆地から逃げようとしていた。
が、ドリズル軍が待ち受けていて、突破できないでいた。
「グローリー王の仇、ここで取る!」
仇のスプレンダーはこの盆地にはいないが、ドリズルからすればブライト軍自体が仇なのだろう。
援軍はセイド軍
「ガサガサ・・・」
セイドは旧アーマメント領南部の調査のため、アウトローと共に五千の兵を連れてきた。
調査だけなら五千もの兵はいらない。アーミィが言うには、「アーマメントの残党がいるかもしれない」ようなので、五千の兵を連れてきたのだ。
「残党がいる、か・・・。せっかく休めると思ったのに・・・。」
セイドが珍しく愚痴をこぼす。
「まあ、いいじゃねえか。」
アウトローはアーマメント攻略時にはあまり活躍できなかったので、ここで活躍しようと思っているのだ。
「珍しくやる気だな。」
「まあな。ここで活躍しときたいし・・・。」
「そうか。じゃあ、調査はアウトローに任せるか。」
「戦だけ俺に任せてくれ。」
「私は休みたいのだがな・・・。」
斥候がセイドの元へ来た。
「申し上げます!この先にドリズル軍のものかと思われる陣を発見致しました!」
セイドはため息をついた。
「・・・ハア、面倒だな。その先も調べてくれ。」
「はっ。」
「セイド、大丈夫かよ?」
「お前に心配されるほどではない。」
「相変わらず可愛くねえな。」
セイド軍はドリズル軍本陣を軽く調べた。
「この陣はドリズル軍のものだな。だが、焼けているのが気になる・・・。ブライト軍がいるのだろう。それに炊煙がまだ残っているから、まだ戦は終わっていないようだな。」
「セイド・・・疲れてたんじゃねえのか?」
「疲れているだけだ。それ以外は普段と変わらない。」
「そんなもんなのか?」
「そうだ。全隊、南へ向かうぞ。ブライト軍がいるかもしれない。」
セイド軍はワイルド山へ向かい、ドリズル軍を確認できた。
「さ、この山で孤立している軍を救援するぞ。アウトロー連隊は西にまわって行け。本隊は正面からだ。」
盆地にいるブライトネスは頑張っていたが、かなり厳しい戦況だった。
流れ矢がブライトネスに刺さった。
「ぐっ・・・。」
「ブライトネス様!」
「ジョーンズ、この程度の傷、大したことはない。機を見て退くのだ。」
「しかし・・・!」
そんな中、アウトロー連隊が来て、戦況は一変した。
ドリズル部隊は後方からの攻撃に耐え切れず、やむなく退いていった。
「・・・そなたが救援に来てくれたのか・・・?」
ブライトネスはアウトローを見付け、聞いた。
「ああ。さ、安心するのはまだ早いぜ。まだ敵は残ってる。」
「うむ。」
「ブライトネス様、さきほどの傷が・・・。」
「確かに、この状態で戦っても足手まといか。」
「本国へお退きください。」
「そうだな。ではジョーンズも退いてくれ。兵は疲労している。」
「はい。」
「全軍、魔学都へ撤退だ!」
ブライトネス、ジョーンズ部隊が退いていく様子を、アウトローはボーッと見ていた。
「あれが国王みたいだな・・・。まあいい。山頂に行くぞ!」
アウトロー連隊はワイルド山山頂に向かった。
セイド部隊も来ているので、フュリアスや、ドリズルの残した殿軍は一旦退き、ヴィクトリィ、スプレンダー部隊の救出も成功した。
「国王は逃げたか。」
ヴィクトリィはアウトローの話を聞いて呟いた。
「団長、どうしますか?」
「・・・俺も本国へ帰る。スプレンダー、フュリアスを頼む。」
そう言って部隊をまとめ、退いていった。
「セイド、俺達はどうすんだ?」
「私達は残る。」
「じゃ、ここに少しの間居させてもらうか。」
「いちいち陣を築くのも面倒だしな。スプレンダー殿、ここに居させてもらいたいのだが・・・。」
「わかりました。あなたの軍が入っても場所は余る程ありますから。」
フュリアスはこれからどう料理されるのか・・・心配だ・・・。