枯山城の戦い

「ザッザッザ・・・」
時間を戻そう。まだ、アーミィ軍が枯山の麓に来ていないところまで。
枯山城へ向かっているのは、セイド、ソルジャー、チェリー、アイリーンの4人と、3000の兵だ。
枯山城は堅固な城で、火の玉を使う投石器と、両端にある山によって今まで守られてきたと言ってもいいだろう。この城は、征北将軍のフレイムによって作られたもの。まあ、セイド達で破れるかは、これを読めばわかる(そりゃそうだ)。
「チェリー、大丈夫か?昨日は疲れたろう。」
言っているのはセイド。自分も疲れているが、隠している。
「大丈夫です。セイドこそ、疲れた顔をしていますけど・・・」
隠せなかった。ま、別に隠すものでもないが・・・
「バレたか・・・ま、いい。枯山城は堅固な城と聞く。チェリー、何か枯山城について知ってることはないか?」
「・・・ありまあせん・・・ごめんなさい・・・」
何を悲しんでいるんだ?と、書いた自分も思ってしまう。とりあえず、セイドの役に立てなかったことを悲しんでいることにしよう。
「何もあやまる必要はない。しかし、何故知らないんだ?」
「私は桜城で生まれたもので・・・」
「桜城とは?」
「イモータルの南雨地方・・・南にある城です。」
「なるほど。なら知らないな。まあいいか。必ず、弱点があるだろうから。」
セイドは結論を出した。そして、足の少し遅い、チェリーを促して、走った。セイドもチェリーも馬に乗っていない。
こちら、ソルジャー、アイリーンの方は・・・
「いやいや、セイクレッドの酒の方が美酒だ。あの深い味わいは、一度飲んだらやみつきになって止まらん。」
何を話しているかわかるだろう。『酒』についてだ。今、言い争っている。
「いや、イモータルのワインの方が美酒と言える。
あの甘く・・・それでいて、ちょうどいい苦さがある。あれほどのワインはないわ。」
「ほう。では、いつか飲み比べでもやるか。」
ソルジャーが提案した。
「賛成。言い争っていても、本当の味はわからないし。」
そんな会話をしている内に、枯山城についてしまった。
そこには、異様な光景があった。枯山城の白、山の緑、堀の青、枯山の土色・・・それらはセイド達を圧倒する巨大さだった。
「これが・・・枯山城・・・か・・・。」
セイドは圧倒されたまま、言った。
強風が吹き荒れる。両端の山にぶつかった風が、集まっているのだ。これでは矢も射れない。
「こいつを俺達で破るのか・・・面白ぇじゃねぇか!」
は・・・?と言いたい。ソルジャーがバカ言っている。しかも、やる気マンマンだ。
「親父、何考えてんだ!こんな、見た目でも堅固そうな城を・・・」
「なんでもかんでも、見た目で判断しちゃいかん。」
あなたが父と暮らしているなら、何度か聞いた事があるだろうせりふだ。
「よーし。・・・」
突撃ー!と、ソルジャーが叫ぼうとしたのを、セイドが
「やめろ。」
と止めた。
「何故、止める?あんな城、俺が突っ込んで・・・」
まだ、バカを言っている。
「そんな無謀なマネはやめろって言ってんだ、親父。」
セイドには、恐ろしいものが見に付いている。それは、威厳だ。親のソルジャーさえ、逆らえない。これは『恐怖』からではなく、『信用』から来ているのだと考えられる。
「・・・わかった。」
叱られた子供のように、シュンとなって、セイドの威厳の強さを実感した。

・・・布陣を終えたセイド軍は、のんびりとしていた。中には寝ている者もいる。・・・もちろん、叩き起こされたが。
「あんな城、どうやって落とすんだ?」
セイドが自分に聞く。自分で分かってないのに、自分で分かるわけがない。
「攻撃を仕掛けたらどうだ?」
どこからか、ソルジャーが来て、言った。まだ、戦いたいようだ。
「確かに、そうしなければ敵については分からない。だが、被害が出るのは極力避けたい。被害を最小限にしながら、敵の情勢を知るにはどうすればいいか・・・」
「なら、俺が行って来てやろうか?」
まだ、変わってない。
「さっきも、止めろと言ったばかりだろう?」
「わかってる。だが、戦わぬ限り、どうしようもないのは事実だろう?」
「そうだが。・・・」
セイドは、何千の兵士の命を預かる身。
そんなことは、一般市民のセイドにとっては、初めてのことだった。何故、こんな事をするのか、アーミィを疑った。今まで、考えたことも無い。『責任』と『悩み』がセイドの小さな背にのしかかる。・・・セイドは小柄だというのに(?)・・・。
「・・・・・・親父、私は親父の考えに乗る。全軍で突撃し、親父達に活躍してもらい、城門を破り、城内へ侵入する。これだけの事をやれば勝てる。」
セイドは『責任』を放置した。少し、やけになっているのだ。
「いいのか?」
ソルジャーが不安げに聞く。一般市民として生きてきた間で、セイドがやけになるところなど、片手で数えるくらいしかない。
「ああ。親父、思う存分暴れてくれ。それが、この軍を勝利へ導いてくれる。」
「わかった。暴れてやるか。」
ソルジャーは不安の声もなく、満足げに言った。
「全員、隊列をつくれ!」
セイドが命令すると、兵士達があわただしく動き始める。隠れて寝ていた兵も、隊長に殴り起こされた。こりずに寝ていた兵も。
「そのまま、隊列を乱さず、突撃!」
ソルジャーを先頭に、兵士が続いている。セイドも先頭に立って、走っているのだが、ソルジャーの方が大きいので、そっちの方が目立つ。
走り続けていると、枯山城から兵が出るのが見えた。
「よーし!あの守備兵どもを、残らず踏み潰せ!」
叫んでいるのは、ソルジャーだが、セイドもそう叫びたいようだが、あえて口に出さなかった。言わなくても、ソルジャーが言うからだ。
「おー!」
と、兵士達が答える。
兵士達は行動でも答えた。守備兵をことごとく蹴散らしている。
投石器から火の玉が飛んでくるが、兵士達はそんなことは気にもせず、突撃を続けていた。
チェリーは歩兵だ。アイリーンのように足が速いわけでもないので、セイドを幾度となく心配させたが、なんとか城門近くまで来れた。
「チェリー、この城門はかなり重い。魔法でなんとかできないか?」
セイドはチェリーを頼る。チェリーもこれで、『恩返し』が出来るというものだ。
「はい。やってみます。」
と言って、なにやら呪文らしき言葉を言っている。人間の声に限りなく近いが、どことなく、天の声という感じもする。だが、チェリーはれっきとした(?)人間だ。
ドンッ!
城の内側で、音がした。投石器の火の玉が爆発したわけではない。吊り城門(というべきか?)が、ギギギギと音を立てながら、ゆっくり降りてくる。・・・ダンッ!という音がしたと思うと、ワーッ!という音同然の声が聞こえる。
チェリーのもともとの白い顔に、うす青い色が浮き出る。
「チェリー、大丈夫か?」
セイドは戦いたいが、チェリーへの心配の方が、それに勝っている。
「・・・大丈夫です・・・」
「そんなわけないだろ。そんな青い顔してれば、誰でも分かる。私が傍にいるから、城内に入るぞ。」
「・・・はい・・・ありがとうございます・・・」
セイドは剣を構える。その顔はいつもとは変わって、キッとした顔だった。

堅固

枯山城陥落

「タッタッタ・・・」
ザクッ。
敵兵は士気もなく、ただ、やられるだけだった。
ソルジャーと数人の兵は、すでに宮内に侵入していた。
「まずいな・・・このままでは城が落ちる。・・・仕方ない、全軍、退却せよ!」
枯山城の守備将、ジョゼフが命令した。セイド軍の勢いは増すばかりだ。
逃げる途中、宮内で、ジョゼフはソルジャーにばったり会ってしまった。
「邪魔だ。そこをどけ。」
ジョゼフは、手を横へチョイチョイと振る。
「俺とやりあう気か?いくぞ!」
ソルジャーが薙刀を構えて、走ってくる。ジョゼフはそれを身軽によけ、ソルジャーの背を剣で斬る。
「ちっ・・・」
「退くぞ!十文字川まで退け!」
ジョゼフが命令しても、兵はほとんど死んでいるので、聞こえるわけがない。
建物には敵味方の血が入り乱れており、黒ずんでいた。・・・悲鳴が聞こえ、どこから敵兵が飛び出てくるか分からない。・・・ジョゼフは恐怖を覚えた。
目の前に敵兵がいた。後方にも敵兵がいるので、苦戦はしたが、ジョゼフの武を前には倒れるしかなかった。
「はあ・・・はあ・・・もう、味方はいないのか?」
ジョゼフの視界の中には、味方の兵が1人もいなかった。
もうすぐ、吊り城門が見える。あれを下ろせば、逃げられる。
だが、そう簡単には逃がしてはくれない。兵士がいるのだ。
「あの程度なら、簡単だな。」
ジョゼフは余裕を言いながらも、油断はしない。
兵が気づいた。槍を構え、今にも突こうとしているが、ジョゼフは走っていった。
兵が槍を前に出すが、ジョゼフの剣をもってはじかれた。もう1人、敵兵はいるが、ジョゼフの左手の剣によって同じことをされた。瞬時に剣を敵兵の首へ持っていく。兵は槍を振る前に、血まみれになった。死んだのだ。
ジョゼフは吊り城門を下ろし、早々に枯山城から立ち去っていった。
これにより、セイド軍が枯山城を落としたことになった。
・・・祝いの席で、セイドは酔いつぶれていて、ソルジャーとアイリーンはひたすらに酒を飲み続けていた。その光景を見て、チェリーと兵士達は、ただ、ため息を吐くだけだった・・・