初めての殿軍
ワイルド山の戦い
〜デザート〜
「バサ」
天幕にセイドが入ってきた。
「セイド殿、どうしましたか?」
椅子に座っていたスプレンダーが立ち上がり、聞いた。
「なに、ちょっとした疑問があるだけです。フュリアスをどう料理するのかと思いまして。」
「フュリアスですか。一応殿軍のようですが、下手に攻撃すると痛い目に遭うでしょう。」
「確かに・・・。レシピがあれば、簡単に料理できますが・・・。」
「セイド殿の創作料理では?」
「私は・・・適当に攻撃していれば、フュリアスも役目を終え、退くと思います。」
「しかし、今こそフュリアスに打撃を与えておけば、後々少しは有利になるのでは?」
「・・・なら、私が奇襲します。将軍はその混乱を正面から衝いてください。」
「フュリアスがそう簡単に混乱しますか?」
「両側面からの挟撃では?」
「わかりました。」
「では、早速兵を手配します。」
「本陣の守備はどうしますか?」
「敵には本陣を攻撃する余裕などないでしょうから、守備はいらないでしょう。」
「わかりました。」
奇襲は、急いでいるわけでもないので、明日の夜になった。
フュリアスの陣では、フュリアスは誰かと話していた。
「・・・で、殿軍がちゃんと出来てるかどうか心配になったのか?」
「ああ。フュリアスに死んでもらっては困るからな。」
ドリズルである。本隊はイモータルへ退いたが、ドリズルはこうしてフュリアスを心配して戻ってきたのだ。
「俺は子供じゃねえよ。」
「私からすれば赤子同然だ。」
「やれやれ。それで、奴らはどうすんだ?」
「敵はここにはフュリアスしかいないと思っているだろう。適当に奇襲でも仕掛けてくるはずだ。前と同様、陣内にて包囲する。」
ヴィクトリィの奇襲の時と同じ策である。
「じゃ、その後、俺が敵本陣に突撃すればいいんだな?」
「成長したな。・・・まあ、そんなところだ。物資は別の所に移しておけ。」
「わかった。」
フュリアスは物資を陣から少し離れた所に集め、突撃部隊の編成を急いだ。
いつ奇襲が来るかわからないからだ。
急いでいるフュリアスとは反対に、ドリズルはのんびりと火計工作を始めた。
奇襲がいきなり来るとは思えないからだ。
ドリズルがいるとは知らないセイド、スプレンダー軍は、既に勝ったかのような余裕を持っている。
ワイルド山の戦い
〜おしぼり〜
「ガサ・・・」
セイドはフュリアス陣の北、アウトローは南を奇襲するところだ。
ドリズルの火計部隊も息を殺して待っている。
フュリアスの突撃部隊はワイルド山南の森に隠れている。
フュリアスも、待ちきれずに突撃してしまうということはなく、冷静に機を待っていた。
「行け!」
アウトローの奇襲はセイドの奇襲より早かった。
これが吉と出たか凶と出たか、セイドの奇襲部隊はドリズルの火計を受けずに済んだ。
「敵が火を放つとはな・・・。ドリズルめ。撤退は見せかけだったか。」
実際は違うが、結果的には同じだ。
「アウトローを救出するぞ!火ごときにひるむな!」
セイド奇襲部隊は燃えるフュリアス陣内に侵入した。
「くそっ!奇襲はお見通しだってのか!多分、セイドが来てくれる!それまで耐えろ!」
「多分」はない方が良かったかもしれない。
「火の手が上がったな。敵陣に突撃だ!」
フュリアス部隊は突撃を開始した。
スプレンダーはフュリアス陣の火の手を見た。
「セイド殿は火を放つとは言っていなかったが・・・まあいい。行くぞ!」
スプレンダー部隊はワイルド山からフュリアス陣へ向かった。
・・・フュリアスの突撃は無駄であった。
「ん?敵がいねえぞ。敵の策かもしれねえ!気をつけろ!」
フュリアス部隊は陣内の隅々を探したが、敵兵の姿はなかった。
「なんなんだ、一体・・・。陣に帰るぞ!敵がいないんじゃどうしようもねえ!」
兵の士気が一気に下がった。せめて一人くらいはいてくれよ・・・。
スプレンダー部隊により、ドリズル部隊は退かざるを得なくなった。
そこへやる気のなくなったフュリアス部隊が来て、ちょうどいい獲物となった。
「くそ・・・。退け!退け!」
フュリアス部隊も退き、ワイルド山はセイクレッドとブライトの両国の領土となった。
ブライトを攻めるにあたってはいい拠点だしな。