レイニー平野の戦い(中編)

調虎離山

「ザッザッ・・・」
足音を表現したが、もちろんのこと、ここレイニー平野には雨は降っている。
天幕の中へ入ったのはフィリップである。
天幕の中ではフレイムとマッチが二人で作戦会議をしていた。
「フィリップか。何の用だ?・・・そうだ。作戦を聞いていくれないか?」
フレイムが聞いた。
「はっ。」
作戦内容はマッチによって説明される。
「フィリップ、お前には山に陣を敷くヴィクトリィ軍を誘い出して欲しい。」
「誘い出す?どうやって?」
「陣を敷き、常に出陣体勢をとれば、敵も焦り、攻撃を仕掛けてくるはず。三、四度目の攻撃が来たら退いて誘うのだ。」
タイトルの調虎離山とは、敵を誘って地の利を奪うことである。誘いが鍵となるのだ。
「はい。」
「では、私の指すところに陣を敷け。」
机の地図に目を向け、指差した。
フィリップは承知し、天幕から出て、自分とフレイムから借りた部隊を指揮して陣を敷きに行った。
「・・・フィリップに任せていいのか?」
「大丈夫です。いくらフィリップとはいえ、この程度のことで失敗するとは思えません。」
「そうだな。ただ陣を敷いて、攻撃を待つだけだからな。」
フレイムですら、フィリップの能力を高くは見ていない。少しは使えるのだが・・・。
フィリップは策の鍵となる誘引を任され、いつもより自信過剰になっていた。
「この策を成功させれば、確実な地位を得られる。簡単なものだ。」
フィリップは高笑いをして、常に武器を離さずにいる兵士達の迷惑となった。
ヴィクトリィはフィリップが山の近くに陣を敷いたことを知り、早速攻撃することになった。
「ジョーンズ、本陣は任せた。さあ、敵陣を奪う取るぞ!」
ヴィクトリィは意気揚々と出陣した。
ヴィクトリィ部隊はフィリップ陣に突撃した。
「フィリップ!出て来やがれ!」
フィリップは天幕内に隠れていた。
「誰が出て行くか・・・。ここで耐えなければ・・・。」
ヴィクトリィは隠れているフィリップを見付けた。
探しているので、数多い天幕の中をいちいち見ていたのだ。
「な・・・。」
「貴様がフィリップか?何でもいい。覚悟!」
「ま、ま、待ってくれ!味方になるから!裏切るから殺さないでくれ・・・。」
「ふん、情けねえ将だな。・・・まあいい。のろしで裏切りを命令する。それまでに備えておけ。」
と言うと、ヴィクトリィは天幕から出ていった。
「た、助かった・・・。ハア・・・。」
フィリップは冷や汗を大量にかいていた。
「退くぞ!また後で攻める!」
ヴィクトリィは退いていった。
フィリップは部隊の内、隊長クラスを集めた。
「さて、皆を集めたのは他でもない・・・。俺はブライトに降る。お前達はどうする?」
「は・・・どういうことですか?」
兵の一人が聞いた。
「お前達はブライトに降るのかどうかと聞いている。」
「な、何故、ブライトに降るのですか?まだこの戦の勝敗は決していませんが・・・。」
「俺は、この戦はイモータルの敗北に終わると見た。だからだ。」
一言二言では説得力がない。
「・・・わかりました・・・。我らはフィリップ様に付いていきます。」
「将軍補佐官」といわれたくないため、「様」を付けて呼ぶように教育してある。
現実逃避、とも言えるようなものだ。
山の方でのろしが上がり、ヴィクトリィは、フィリップ陣を無視し、フレイム軍本陣へ向かった。
フィリップ部隊も付いていった。
ブライト軍は有利になったが、フレイム相手にどう勝つのか。

混戦

「バサ」
斥候が天幕に入ってきた。
「どうした?」
マッチは聞いた。
マッチは本陣とは別に陣を構えている。
「はっ。フィリップ将軍補佐はブライト軍に裏切り、敵と共に本陣へ向かっています。」
「フィリップ・・・ただ待っていることすらも出来ないのか!仕方ない。敵本陣へ向かうぞ。敵を誘い、本陣の安全を確保する。」
「はっ。」
マッチはハリボテ山脈のブライト本陣へ向かった。
「ん?あれは敵か。よし、奴らを叩き潰せ!本陣はその後だ!」
ヴィクトリィはそう叫んで、先頭に立ってマッチ部隊へ突っ走っていった。
フィリップもそれに付いていった。
マッチはヴィクトリィが追って来ているので、攻撃されないように速度を上げた。
斥候がフレイムの元に着いた。
「申し上げます。敵部隊がマッチ部隊を追撃しております!」
「マッチが追撃されている・・・?まあいい。その敵を追撃し、マッチを救出する。行け!」
「はっ。」
フレイムはマッチの援護のため、ヴィクトリィ追撃を開始した。
フィリップは、フレイムがフィリップの裏切りに怒って攻撃してくることを恐れ、マッチ部隊を迂回して本陣へ戻ることにした。
ヴィクトリィは逃げるマッチ部隊しか目になかった。
斥候はマッチ部隊が山にかなり近づいてきたのを見て、本陣へ戻った。
「ジョーンズ様、敵が迫っております!」
「わかった。」
ジョーンズは兵を集め、いつでも落石が出来るようにした。
落石準備は、ある程度は既にしていた。
マッチ部隊は少しキツイ傾斜を登ってくる。
「今だ!落石開始!」
岩や木が転がされ、マッチの兵を次々と倒していく。
「よし、矢を射かけろ!」
ところどころにある柵が邪魔をして、マッチ部隊は思うように進めない。
しかも、後ろにはヴィクトリィがいるので、苦戦は確実だった。
フレイムの救出がなければ、マッチ部隊は全滅していたことだろう。
「一旦退け!」
フレイムの命令にフレイム、マッチ部隊は一斉に退き始めた。
「追うな!まずは態勢を整える!」
ヴィクトリィは珍しく追わない。成長したのだ。
フレイムとマッチは本陣に戻り、再び攻撃出来るように態勢を整えた。
両軍が退いて少し経ってから、フィリップは本陣に戻ってきた。
ヴィクトリィは罰を与えるのも面倒なので、一切の罰を与えなかった。