アバンダンス平原の戦い(前編)
三百人の援軍
「コツ・・・コツ・・・」
セイドはこのアバンダンス平原の南にある城、アバンダンス城内を歩いていた。
少し雨が降っていて、城内は霧が出ているようでカッコイイ。
宮内に入り、ブライト軍総大将、ブライトネスを捜した。
「おお、セイド殿か。」
ブライトネスは振り向いた。
「はい。一つ、用件があります。」
「なんだ?」
「このまま睨み合っていても意味がない。こちらから動くのがいいいかと。」
「攻めろと言うのか?どこから攻める?」
「北、西を同時に攻めます。」
北部砦と西部砦のことである。
このアバンダンス平原は豊かなため、農作物を各地方の城や砦に集めるのだ。
北は北部砦、西は西部砦、南はアバンダンス城、東は魔学都である。
「我が軍は敵軍よりも兵が少ない。軍を分けるのは愚策ではないか?」
「レイニー平野のヴィクトリィ将軍が来るはず。それまで頑張れば敵の士気は下がり、勝機を掴めます。」
「うむ・・・では、北部砦にはスプレンダーを向かわせよう。」
「西部砦は王と私がですか?」
「うむ。さあ、早く進軍の準備をせよ!」
「はい。」
セイドは自分の兵の元へ行く途中、スプレンダーに会った。
「スプレンダー将軍、北部砦を攻撃してください。」
「北部砦?まあいいですが・・・。」
「気が進みませんか?」
セイドは敬語が苦手である。似合わないしな。
「いや、団長がいないと戦をやる気がしなくて・・・。」
ヴィクトリィはまだロンリー高野からフレイムらを追っているので、ここまで来るのはまだ先だろう。
「そうですか。では・・・。」
セイドは外に出た。
まだ雨が降っている。無論、レイニー平野程ではないが。
スプレンダー部隊は北部砦へ向かった。
ブライトネス、セイド部隊は西部砦へ向かった。
スプレンダーは北部砦までの道に伏兵にちょうどいい場所があることを知っていた。
その茂みに近づいていく。
前もって兵には伏兵がいるかもしれないと言ってある。混乱することはないだろう。
茂みの前で止まると、敵はバレていることを理解し、飛び出してきた。
「応戦しろ!この程度、我らだけでも充分だ!」
スプレンダーは敵兵を突き刺した。
戦闘が始まってすぐに敵は退き始めた。
「この機を逃すな!追撃だ!」
敵兵は砦に入ろうと急ぐ。
スプレンダーは門が開いている間に迅速に砦へ侵入しようとした。
「門を閉めますか?」
兵士が聞いた。
北部砦はジミーが守っている。
「駄目だ。味方を全員砦に入れる。」
「しかしそれでは敵が入って来ます。」
「敵を門で食い止める。そこから押して門を閉めるのだ。」
「わかりました。」
ジミーは見張り台から降り、門の前に行った。
「全隊、ここで敵を食い止め、押し返す!味方を救うのだ!」
伏兵が門をくぐると、間髪入れずにスプレンダー部隊が侵入する。
「ここでふんばれ!敵を食い止めろ!」
「敵を倒せ!全滅させろ!」
門では奮戦が長く続いた。
だが、魔学都の部隊が援軍に来たので、北部砦はスプレンダーの手に落ちた。
ジミーはわずかな兵と共に退いた。
「追撃はするな!王とセイド殿の援護に向かうぞ!」
スプレンダーと魔学都の部隊は西部砦へ向かった。
本陣強襲
「ザッザッザッ・・・」
ブライトネス、セイド部隊は西部砦へ向かっていた。
西部砦はイモータル軍の本陣。攻撃するのも容易ではない。
だが、西部砦の前に陣を敷いていたゼロスがどこかへ行ったため、攻撃も少しは楽になった。
西部砦が見えてきた。
「敵陣は無いな・・・。よし、西部砦を落とすぞ!」
セイドは命令した。ブライトネスの兵も肯いたりして反応してくれた。
ブライトネスとしては複雑な心境である。
西部砦は難無く開門され、ブライトネス、セイド部隊は中へなだれ込んだ。
「・・・どうも簡単に行き過ぎだな・・・。伏兵もいないようだが・・・。」
セイドは考え込みながらも兵の指揮は怠らなかった。
「突っ込め!敵を一人残らず始末するのだ!」
ブライトネスは、セイドの悩みなど無視するように叫んだ。
ジョゼフはグロウに逃げるように言っていた。
「ですから皇帝、このままここにいては危険です!お逃げください!」
「俺も一人の武士だ。それに、こんなつまらんところで死ぬとは思えん。」
「しかし・・・!」
「くどいぞ、ジョゼフ。俺も戦うぞ!」
「・・・はあ・・・わかりました。ですが、私の近くにいてください。」
「わかった。さあいくぞ!」
本陣を攻められ、近くには友軍もいないという、絶体絶命な状況下に置かれてもこんなに元気でいられる皇帝は、単にバカなのか、それとも勝算があるのかはわからない。
グロウはジョゼフよりも前を走り、敵兵を勢いに任せて槍で突き刺す。
「皇帝!私よりも前に行かないで下さい!」
ジョゼフが叱ってもグロウは聞く耳を持たない。
「やれやれ・・・。」
ジョゼフはグロウより前に行って敵兵を刺す。
弟ジミーとは違って剣術は得意ではない。
剣術といっても、ジミーはサーベルで、両刃の剣とは違うが。
イモータル兵はグロウの参戦で勢い付いて来た。
「むう、わしも戦うぞ。」
ブライトネスは槍を持ち直す。
「危険です!お下がりください!」
護衛の制止も無視してブライトネスは進んでいく。
ブライトネスとグロウは、敵味方の兵を間にして、出会った。
どちらも王にふさわしい衣服を着ているので、敵の王だということはすぐにわかった。
「貴様がブライトネスか?覚悟しろ!」
グロウからブライトネスに向かっていく。
「皇帝!私の前に行かないで下さい!」
ジョゼフの制止も振り切って(?)。
「王、ここは私が!」
ブライトネスの護衛が言ったが、ブライトネスは
「敵はわしと戦いたいのだ。わしがいく。」
と言って、護衛を下がらせた。
「ブライトネスだな?」
「うむ。貴様はグロウか?」
「ああ。ここで俺が勝てば、我が軍の勝利だな。」
「わしが負けるわけがない。いくぞ!」
「おう!」
グロウとブライトネスは何十合も打ち合った。
意外にも、ブライトネスとグロウは同等の力である。
この一騎討ちはまだまだ続いていく・・・。