アバンダンス平原の戦い(後編)
「カツカツカツ・・・」
フレイムはドリズルの部屋へ向かっていた。
ここはイモータル軍本陣の西部砦である。
「ドリズル将軍、少し聞きたいことが・・・。」
ドアを開けると、ドリズルは異様な目で剣を見ていた。
魅入ったかのような目である。
「ド・・・ドリズル将軍?」
「ん?ああ、フレイム将軍か。何の用かな。」
突然、異様な目からいつものおだやかな目に戻った。
全く動じてもいないのが余計に恐い。剣を隠しもしないのだ。
「え、えーと・・・敵をどうやって城から出させるか聞きたいのだが・・・。」
「今は挑発や攻城塔を仕掛け続けるしかない。」
攻城塔とは、移動式の矢倉で、城壁の敵を倒し、架橋して城内へ侵入する兵器である。
「わ、わかった。じゃあ、失礼する。」
フレイムは部屋から出た。
フュリアスはドリズルの部屋から出たフレイムとすれ違ったが、フレイムはひどく悩んでいるようだった。
「大将、フレイムが悩んでたぞ。また剣いじってたのか?」
「ああ。見ろ、この剣の美しいこと。この世の万物どれにも勝る美しさだ。」
この剣はグローリーとの誓いの剣ではない。
ドリズルが牙城で見つけた美術品の剣を持って来たのだ。
勝手にではなく、ちゃんと手続きはした。
光り輝くような美しい剣ではあるが、ここまで魅入るほどだろうか。
「あーはいはい。で、今回の作戦はどうすんだ?」
「作戦?先ほどフレイム将軍にも言ったが、挑発や攻城塔を仕掛け続けるしかない。」
「なんで?大将だったらいつもはそんな作戦じゃねえぞ。」
「仕方がないのだ。敵は籠城しているのだから。」
「北部砦は制圧したんだから、そこから魔学都に行けないか?」
「魔学都の守りは厚い。城から敵が出てきたら挟撃されるぞ。」
「ちぇ。今回は俺の突撃は不要みたいだな。」
フュリアスは部屋から出て行こうとする。
「どこに行く気だ?」
ドリズルは呼び止めた。
「北部砦さ。敵といつまでもにらめっこする気はねえからな。」
「北部砦から奇襲をかけるつもりか?」
「そんなとこだ。じゃあな。」
フュリアスは部屋から出て行った。
北部砦にはジョゼフとジミーがいる。なんとか止めてくれるだろう。
美しき剣
総攻撃
「ザッ」
ゼロスは馬を止めた。
アバンダンス城西郊外では、ゼロス率いる部隊が何百もの攻城塔を並べていた。
並べ終わり、全員が整列した。
「よし、全隊、アバンダンス城と落とせ!かかれ!」
ゼロスが命令すると、ゼロス部隊は進軍し始める。
アバンダンス城北郊外でも、ドリズルが同じように攻めていた。
セイドは西の城壁に立っていた。
「あの程度・・・いいか、私の合図で火矢を放て。それまで構えろ。」
北の城壁でも、スプレンダーはそんなことを言っていた。
攻城塔が近づいてくる・・・。
「今だ!火矢を放て!」
セイドもスプレンダーも命令し、攻城塔に火矢を放った。
だが、攻城塔の前面には鉄板が取り付けられており、火矢が効かない。
「横が開いているぞ!横から矢を放て!」
セイドはそう命令した。
スプレンダーは
「車輪を射ろ!移動できなくするのだ!」
と、命令した。
次々と攻城塔が焼かれ、壊れていく。
「あれだけの攻城塔を破壊するとはな・・・力攻めは無理か・・・。」
ゼロスは呟いた。
「一旦退け!このまま戦っても無駄だ!」
ゼロス部隊は退いたが、ドリズル部隊は退かない。
「将軍、こちらの被害が大きいようです!」
兵士がドリズルに言った。
「まだだ、まだやれる!全員で突撃だ!なんとしてもこの城を落とす!」
「ですが、味方が・・・!」
「早く行け!敵は疲れているぞ!」
疲れているように見えるのは士気が低いからで、士気が低いのは死にもの狂いで突っ込んで来る敵兵が怖いからだ。
フュリアスとジョゼフ、ジミーは魔学都へ向けて進軍していた。
ドリズルの期待は見事にはずれていたのだ。
ジョゼフは魔学都攻撃を反対するどころか賛成していたのだ。
魔学都が攻撃されていることはアバンダンス城のブライトネスに知らされていた。
「魔学都が攻められているだと!?援護に行くぞ!」
「ここは攻められています。下手に兵を動かさない方がよろしいかと。」
斥候が言った。
「都が攻められているのだぞ?魔学都が落ちてはここにいても意味がない。助けに行くべきだ!」
「わ、わかたりました・・・。」
ブライトネスが魔学都へ向かったことにより、アバンダンス城は守備は手薄となった。
ドリズル部隊はかなりの無理をしながらも、城内へ侵入出来た。
「守りが手薄だな。西門を開け!ゼロス将軍を迎え入れるのだ!」
西門が開かれた。
「西門が開いたか・・・。罠かもしれんが・・・まあよい。全隊、城内へ侵入せよ!」
ゼロス部隊は城内へ入った。
この時、セイドとスプレンダーは城を捨ててブライトネス部隊の元へ行っていた。
アバンダンス城はイモータル軍に制圧された。
ブライト軍は魔学都防衛に専念したが、フュリアスの突撃陣はなかなか崩せず、苦戦を強いられていた。
「・・・おし、全軍、敵陣を潰せ!いくぜ!」
ヴィクトリィ、ロイアル軍は、北側からフュリアスの突撃陣へ突撃した。
フュリアス、ジョゼフ軍は、思わぬ方向から敵が来たもんだから、それに対応しようとして陣形は崩れた。
「敵の陣形は崩れた!攻め続けろ!」
セイドは命令すると、自分も敵兵に向かった。
ヴィクトリィ、ロイアル軍の援軍のおかげで、魔学都を守りきれた。
ブライト軍は魔学都に入城し、連戦の疲れを癒した。
イモータル軍はアバンダンス城を本陣とし、魔学都を攻撃するチャンスを待った。