魔学都攻防

脱出

「ガンッ」
ヴィクトリィとスプレンダーは、いつもの槍と同じ長さの棒で手合わせしている。
言うまでもないが、ここは魔学都である。
ガンガン打ち合っていたが、やがてそれもおさまった。
「なんだ、腕が落ちたな、スプレンダー。」
「団長は相変わらずです。」
二人共ハアハア言っている。
手合わせでここまでやるか、と聞きたくなるほどだ。
突然、ヴィクトリィは棒をスプレンダーに突いた。
スプレンダーは瞬時に避けて、逆にヴィクトリィを棒で叩いた。
「やれやれ、隙を突いても駄目なのか。」
「団長の考えることなどすぐにわかりますから。」
上官に向かってサラッとこんなことを・・・よく言えるものだ。
「スプレンダーにゃ勝てねえわ。その力をイモータル軍に見せ付けられりゃいいのにな。」
「私一人では軍を退かせることは無理です。」
そこへ、セイドがやって来た。
「二人共、何をやっているのだ?」
「ん?まあ・・・久しぶりの手合わせをして、話してるだけだ。」
「敵は攻撃の準備をしています。こちらも迎撃の準備をしなくては・・・。」
「・・・おい、セイド、このまま俺らと一緒にいるつもりか?」
「何を言う。私の軍なくして魔学都を守るつもりか?」
「いや、そうでなく、セイド殿も死ぬ可能性があるということです。」
「同盟国を最後まで守らないでどうする?」
「・・・あのなあ、本当にこの国を守ろうとしてんなら、もっと援軍をよこして来るはずだろ。」
ヴィクトリィは、セイドの考えてもいなかったことを言った。
「・・・では、セイクレッドはブライトを捨てるつもりだと?」
「そうだ。」
「・・・私の軍だけでこの国を守ってみせる。」
「そりゃ無理だ。もう皆、死を覚悟してんだぜ?守られても困るだけだ。」
「そうです。仕方がありませんが、セイド殿はセイクレッド領に戻っていただきたい。」
「・・・わかった。私がいても邪魔なだけだな。」
「では、団長と私の部隊で護衛致します。」
「俺も?」
スプレンダーは無視して続けた。
「騎士団で護衛しますから、安心してください。」
「そちらの方が兵も少ないのだから、私の軍だけで突破する。」
「いいえ。せめて、死ぬ前に良い事の一つくらいはやらせてください。」
「・・・わかった。護衛を頼む。」
「ま、こっちの方が少ないんだから、やるのは敵陣を崩すことだけだ。他はそっちでやれよ。」
「突撃バカには突撃が一番だからな、ヴィクトリィ。」
「なんだと?」
「まあまあ。事実ですが、ここは抑えて・・・。」
「なんなんだ、お前ら・・・。」
ということで、セイド軍は全員、魔学都から出て行った。
ブライト聖騎士団を突撃をおかげで、セイド軍は全員、ほぼ無傷で逃げ切れた。
「さーて、城に戻るぜ!後は奴らだけでなんとかなるだろ。」
ヴィクトリィはほとんど最後尾になってから退き始めた。
殿の役目である。
セイド軍はまず、牙城を目指して逃げていった。

滅亡

「ギギギギギ・・・」
城門が開かれた。
セイド軍を護衛したブライト聖騎士団は城門をくぐって、雪崩れのように城内に入っていく。
敵がどんどん城門に近づいてくる。
ただ、最後尾のヴィクトリィがまだ戻っていないので、城門を閉じるに閉じれない。
ヴィクトリィは城内に入った。敵と一緒に。
城門は閉じられなかった。
敵は、ゼロス率いる部隊は、魔学都城内へ侵入し、各城門を楽々と開いた。
北、西、南の三方向からイモータル軍が城内へ入る。
魔学都には東の城門がないからだ。
イモータル兵が続々と侵入する中、ヴィクトリィとスプレンダーは特に奮戦していた。
ヴィクトリィは敵兵の中を駆け巡っていた。
その様子をフュリアスは見ていた。
「なかなかの奴だな。討ち取って手柄にするか。」
と言って、ヴィクトリィに向かった。
「おい、お前!俺と勝負しろ!」
「お前と、だと?いいぜ。」
自然と兵士が二人を避ける。
ヴィクトリィとフュリアスは円状に広がった兵に囲まれた。
「いくぞ!」
「おう!」
何十、何百合も打ち合っても、一向に決着が付かない。
「おい、そろそろ決着を付けようぜ。」
ヴィクトリィは言った。
「そうだな。」
二人共息を切らしているのに、止めようとしない。
フュリアスは一瞬の隙を突いて、ヴィクトリィの馬を蹴った。
「くそっ!」
ヴィクトリィは体勢を整えようとしたが、馬はそのまま倒れた。
「どうした?ここで終わりのようだが。」
フュリアスはヴィクトリィの首に穂先を当てた。
「殺すなら殺せ。」
ヴィクトリィは潔く言った。
「この世に未練はないのか?」
「ある。お前を殺せなかったことだ。」
「それは残念だな。殺したかった奴に殺されるとは。」
フュリアスは躊躇せず、言い終わったと同時にヴィクトリィの首を衝いた。
「よし、お前ら!もう見るもんはない!早く敵を斬って来い!」
フュリアスは走り出した。
ヴィクトリィの死はブライト軍には伝えられなかった。
敵がいては伝えようにも、その前に殺されるからだ。
スプレンダーは、宮内の玉座がある部屋の前の廊下で奮戦していた。
ジョゼフはスプレンダーを見付けた。
「そこのお前、勝負!」
「貴様はジョゼフ!覚悟しろ!」
兵士を薙ぎ倒すと、スプレンダーはジョゼフに向かって走り出した。
「貴様のあの非武士道精神、今度こそ叩き直す!」
スプレンダーはすごい剣幕で言った。
「言ってろ!臨機応変って言葉を知らねえのか!」
先ほどのヴィクトリィとフュリアスの一騎討ちと違い、こちらは五合ほどで決着が付きそうだ。
「覚悟してもらいたい。」
スプレンダーは、倒れたジョゼフの首に穂先を付けていた。
「覚悟?覚悟なら出陣前にしている。」
「そうか。では、これで終わりだな。」
スプレンダーは刺すために、槍を少し上げた。
その時、一本の矢が飛んできて、スプレンダーに当たった。
鎧に当たったので、矢ははじかれたが。
「隙あり!」
ジョゼフはスプレンダーに、槍を遠ざけさせられていたので、腰の剣でスプレンダーを斬ろうとした。
だが、スプレンダーはそれを避けた。
そして、あの矢を射った人物が出て来た。
グロウである。
だが出て来ただけで、それ以上近づかない。
剣と槍では剣が不利だ。ジョゼフはジミーと違って剣術は得意ではないし。
ジョゼフは剣でスプレンダーの槍を押さえ、その瞬間にスプレンダーに体当たりした。
「な・・・!」
スプレンダーは倒れ、ジョゼフは槍で刺した。
「ぐ・・・・・・。」
ジョゼフは続けて刺した。
スプレンダーからは生気が感じ取れなくなった。
グロウは歩き出し、ジョゼフの近くに行くと
「お前はここにいて、敵が来たら倒せ。俺はブライトネスをやる。」
と言って、玉座へ進んでいった。
「はっ。」
ジョゼフは条件反射のように返事をし、一礼した。
グロウは見ていないが。
玉座には、ブライトネスが偉そうに、足を組んで座っていた。
「ここ勝負しようか、ブライトネス。」
ブライトネスは立ち上がった。
「この戦の勝敗は決した。せめて敵総大将を討ち取ってみせん。」
「では・・・いくぞ!」
二人共大きなマントを着ているので、走るとマントが舞って恐い。
大きなマントは威厳を示すためなのだろうか。
打ち合うたびに、ガンッガンッとすごい音がする。
・・・ジョーンズはブライトネスの元へ行こうとしていた。
「お前、ブライト軍だな?ここは通さねえぞ。」
ジョゼフは言った。
ジョーンズの目には、ブライトネスとグロウが一騎討ちをしている様子が映った。
「王が・・・。そこをどけ!」
ジョゼフを刺そうと槍を突き出したが、ジョゼフはそれを掴み、槍でジョーンズを刺した。
「くそ・・・。・・・そこをどけ!」
「まだ言うか。いいだろう。これで最後にしてやる。」
ジョゼフは掴んだジョーンズの槍を足で折った。
「あっ・・・。」
ジョゼフは瞬時にジョーンズの首を突き刺した。
ジョーンズの体が倒れた。
「皇帝の邪魔をするな。」
ジョーンズの体を見つめながら、ジョゼフは呟いた。
ブライトネスもグロウも、槍は折れ、体中が傷だらけだった。
今は帯剣していた剣で闘っている。
空を切る音が何度もした。
「ぐふ・・・・・・。」
グロウの剣がブライトネスの腹を、鎧のすき間から刺していた。
グロウは剣を抜くと、腰の鞘に剣を納めた。
「ハアハアハア・・・・・・。」
剣は腸の辺りまで刺さっていたので、ブライトネスは即死はしなくとも、長く生きることは無理となった。
ブライトネスは最後まで立ち、グロウを斬ってやろうと思っていたが、その願いは叶わなかった。
ブライトネスは倒れ、数秒して息もしなくなった。
ブライトはイモータルに呑み込まれてしまった。