イモータル平原北部(仮)の戦い(前編)

ドリズルの策

「カツカツカツ・・・」
ドリズルは歩いていた。
そりゃ目的地はある。いや、目的人か。
フュリアスに会うのである。
「おい!そんなんでよく騎兵になれたな!もっと早く動け!」
フュリアスは自分の突撃部隊、まあ騎兵部隊に訓練をさせていた。
十人程の小規模な突撃陣で、その陣形を戦闘になっても崩さずにいれるか、という訓練である。
「フュリアス、相変わらずだな。」
「ドリズルか。・・・まあな。で、何の用だ?」
「今回の作戦のことだ。」
「ああ。敵はアーミィだから、確実にやれってか?」
「それもあるが、今回の作戦では、お前は敵別働隊の撃破が任務だ。」
「それで?」
「突撃陣は敵を一人たりとも逃さないものにしてくれ。」
「なんだ、それならもう取り入れてんぞ。今訓練させてるのがそれだ。」
「さすがフュリアスだ。訓練が終わり次第、指定した場所へ行って欲しい。」
「おう。ドリズルはどうすんだ?」
「私は本隊にいる。作戦を聞いていなかったのか?」
「いや・・・自分のことしか聞いてなかった・・・。」
「これからは他の者の命令も聞いておけ。」
「わかったよ。」
フュリアスは兵の動きを見ることに専念した。
ドリズルは自分の部隊へ戻っていった。
フィリップ隊とフレイム隊は本陣から西へ動いていた。
「フィリップ、もう裏切りはしないだろう?」
進軍しながら、フレイムはフィリップに話しかけた。
「はっ。策とはいえ、裏切りはもうしないようにします。」
「当然だ。国への忠義を捨てた勝利などいらん。」
フレイムは怒っているようだ。
レイニー平野で、フィリップが裏切ったのが本音だったのを知っているからだ。
まあ、利用するだけ利用して、邪魔になったら捨てればいいのだ。
しばらく歩いて、森が見えてきた。
フレイム隊は森へ、フィリップ隊はその森より北の山へ向かった。
それから二日経ち、フュリアス隊は前の四カ国で戦ったときのセイクレッド軍本陣から更に西の所へ向かった。
「ジョゼフ。」
ドリズルはジョゼフを呼んだ。
「なんだ?」
「今度の作戦では本軍の護衛を任せていたが・・・。」
「ああ。護衛なんてつまらないから、他のにしてくれるのか?」
「そうだ。本陣の奇襲を頼む。」
「奇襲か・・・。東からしかできないけど、まあいいか。」
セイクレッド軍の西部には山があり、守備隊が置かれているからだ。
正面から奇襲なんて難しいだろう。
「アーミィのことだ。きっと何か策がるはず。その策を崩すための奇襲だぞ。」
「それはそれは・・・。責任重大だな。アーミィの策を必ずや崩して見せよう。」
「頼むぞ。」
ドリズルは自分の部隊に進軍命令を下した。

「ドドドドドドド」
ドリズル隊がセイクレッド陣へ向かって進軍している。
フュリアス隊は既に指定の位置に行っていた。
「なんだ、ありゃ?敵か?」
旗を掲げていないので、セイクレッド兵は敵か味方かわからなかった。
ドリズル隊はセイクレッド軍の防衛線が薄い部分を攻撃し、突破した。
「敵が前線を突破しました!」
アーミィは大して驚いた様子もなく
「そうか。敵将は?」
と聞いた。
「まだわかりません。旗を掲げていないので・・・。」
「では見に行くか。」
アーミィは天幕から出て行った。
「このまま突き進め!」
ドリズル隊はまさに破竹の勢いだった。
が・・・竹を切っていれば、竹が倒れるのが現実。
「かかれ!」
ロイアルとアイリーン隊の伏兵である。
この伏兵でドリズル隊の勢いはなくなった。
「これ以上進ませるな!」
ロイアルが叫んだ。
アイリーンは将らしき人物を見つけた。
ま、ドリズル隊はそんなに巨大な部隊でないので、将を見つけるのにさほど苦労はしない。
「将だな?覚悟!」
と斬りかかった。
ドリズルは驚いたが、すぐに槍を構えた。
アイリーンの剣が二本とも、ドリズルの槍に叩き付けられた。
ジーンと手がしびれる。二人共だ。
だが、アイリーンは体勢を整え、再び斬りかかった。
ドリズルは、しびれる手を無理に使って槍で防いだ。
その後も何合も打ち合ったが、結局、決着がつかないまま二人は離れ、一騎討ちを中断した。
そのまま続けてもやられるだけだ、と思ったのだろう。
アーミィはロイアル、アイリーン隊とドリズル隊の戦闘を眺めていた。
「ん?あれはドリズル?」
アーミィはドリズルとアイリーンが戦って、離れていく様子が見えた。
「ドリズルか・・・。一人で突っ込んでくるなんて、策がありますって言ってるようなもんだ。」
アーミィは自分の直属の部隊を連れ、前線を越えていった。
敵がいれば、すぐに包囲されてやられるだろう。
かなりの危険が伴ったが、軍のためである。
「敵を見つけたらすぐ倒せ!」
アーミィ部隊はそのまま南下していった。
アーミィ部隊がいなくなると、ドリズルはまた一騎討ちを申し込まれた。
今度はアイリーンではなく、ロイアルである。
やれやれ・・・親子そろって・・・。
「お前がこの部隊の隊長か?覚悟!」
そうかどうかは言ってないのだが、斬りかかって来る。
ガンッと槍が交わる。
「聞いておいて返事も待たずに斬りかかるか・・・。礼儀がなってないな。」
「やかましい!人が気にしてることを・・・。」
一応、自覚はあるらしい。自覚があるだけマシだ。
ドリズルは別に、ロイアルの礼儀を正そうとしているわけではなかった。
自分の身を守ることだけで精一杯なのだ。
ロイアルは一旦ドリズルから離れると
「覚悟しとけ!今から地獄に落としてやるからな!」
ビシィッとドリズルを指差し、猛然と走って来た。
「疲れさせるか。」
ドリズルは向きを変え、ロイアルに背を向けたまま駆けていった。
「おいこら!逃げるな!」
ドリズルは振り向きもせずに走っている。
声がするので追いかけていることがわかるので、見る必要がないのだ。
「ここらでいいか。」
ドリズルは馬を巧みに操り、ロイアルを向くと、ロイアルに負けないくらいの勢いで走った。
馬の走る勢いも加わって、ドリズルの槍はかなりの力を持っていた。
ロイアルはそれを何とか受け止め、いや馬は止まらないので「受け流して」だが、まあとにかくやられなかった。
「痛ってー・・・。なにすんだよ!」
「・・・。」
一騎討ちを挑んでおいて、それはないだろ・・・。
ドリズルは呆れていた。
「じゃあな!これじゃ俺が負けちまう。」
自分が勝つ戦いしかやらないのだ。
ロイアルが逃げていく。
ドリズルは追わず、戦況をしばらく見ていた。
倒して倒され・・・こんな戦況では、なんとも微妙だ。
兵はどちらが多いのかわからないのに・・・。
ドリズルは少ししたら退却命令を下そう、と思いながら闘った。

作戦開始