イモータル平原北部(仮)の戦い(超・後編)

陰の奮闘

「ガサ・・・」
ジョゼフは作戦通り、セイクレッドの陣を奇襲をしたかった。
だが、ここまで来るだけでかなり苦労した。
東に陣を張るアウトローが幾度も攻撃をしてくるのだ。
おかげで夜も寝れない。
奇襲部隊が奇襲されちゃ世話ないが。
アウトローはアーミィの命令で、本陣に敵をいれないように言われているので、とりあえず頑張っている。
国王の命令には逆らえない。
アウトローは五十人くらいの斥候を使っていた。
「・・・奴らが奇襲?俺らにやられまくっているくせにな。」
斥候の報告を受け、アウトローは笑った。
「はあ。近くの森に待機しています。」
「奴らが動くまで待ってるか。」
アウトローは斥候を陣から出すと、陣内の兵を動かした。
敵の攻撃の勢いを、こちらの一斉攻撃で衰えさせるためである。
「いいな。奴らはバカだから、雑草が多いあの道を通る。俺が合図したら一斉に射かけろ。」
アウトローは、一言多く、命令した。
アウトローは他の隊のところへ行き
「奴らの退路をふさいどけ。」
と言った。
ふさぐ、と言っても、少人数の隊だ。
よほど運がよくないと突破されるだろう。
まあ、そこは訓練を受けた兵に任せるとしよう。
そんなころ、ジョゼフは奇襲を始めようとしていた。
「・・・もう夜だ。奇襲してもいいだろ。」
誰に言っているのかわからないので、独り言だろう。
「奇襲するぞ!定位置につけ!」
兵はこそこそと、茂みに隠れながら進んでいく。
アウトローの陣の兵が見えるほど近づくと、皆足を止めた。
「・・・よし・・・。かかれ!」
一斉に茂みから兵が飛び出し、陣へ走り出す。
「来たか。まだ撃つなよ!」
アウトローは天幕から出て来て、言った。
ジョゼフの兵が、陣の柵から百メートル近くになったとき
「今だ!一斉に撃て!」
と、アウトローが命令した。
柵の間から、何本もの矢が飛び出し、奇襲の勢いは衰えた。
「くそ!退くぞ!」
ジョゼフはそう言って、きびすを返した。
「逃がすな!火矢を放て!」
用意されていたのか、十人くらいの兵が火矢を放った。
一条の炎が夜空を照らすと、重力に素直に従って落ちていった。
茂みに火が移る。
そんなに思ったほどは火は移らないが、驚かすには充分だ。
「さ、全員かかれ!」
アウトローは陣から出て行った。
兵もその後を追う。
火に怯えながらも、ジョゼフ隊は逃げていた。
退路をふさいでいる隊により、退却は困難となった。
「もうあきらめな。」
後ろから、アウトローの声がした。
「貴様、よくもハメたな。」
この声に含まれる成分は怒りしかないだろう。
ジョゼフは振り向くと、アウトローを睨んだ。
「怒るなんて誰でもできる。もっと俺を楽しませてくれよ。暴れるとか、さあ。」
「あいにく、敵を楽しませる趣味はない。消えろ。」
「俺もそんな趣味ねえよ。・・・射かけろ!」
月光に光る矢が、ジョゼフ目指して一直線に進んでくる。
「退け!」
ジョゼフは背にニ、三本矢が刺さった。
それでも馬を走らせて退く。
「追え!・・・やれやれ。おとなしくない奴だな。」
アウトローは矢の刺さった背を追った。

さあ、あの本陣に向かって走ろう!

「カツカツカツ・・・」
ジョゼフの奇襲部隊は、アウトローにやられ、逃げている最中だった。
必死で逃げても、相手は目をそらしちゃくれない。
ああ、世の中ってなんて残酷なんだろう、とジョゼフは本気で考えていた。
そんなことを考える余裕はあるようだ。
かと言って、いつ死ぬかわからないのは変わらない。
ひたすら本陣へ走っているが、敵味方の姿が見当たらない。
「本陣まで攻められたのか・・・?」
ジョゼフは顔をしかめた。
・・・遠くから、馬の蹄(ひづめ)のような音がした。
「敵か味方か・・・。」
ジョゼフは、その音源の方向に向かなかった。
なんにせよ、今は逃げなければ。
音は近づき、やがて背後で悲鳴や鉄の音が聞こえた。
ジョゼフは後ろを向いた。
「!・・・味方だ!よし、皆、かかれ!」
逃げていたジョゼフの隊は反転し、アウトロー隊に向かっていった。
ジョゼフは味方の部隊の将を見つけた。
「フュリアスか。」
「ジョゼフ、無事なら本陣に戻れ。敵が攻めて来てる。」
「なら、フュリアスは何故こっちに?」
「近かったからだ。早く行け!」
「ああ!」
攻めかかっている兵を戻すのは一苦労だった。
フュリアスは敵将を探した。
早く本陣に戻らないと。
「どこだ!敵将ー!」
叫んだのはアウトローだった。
「おい!俺を呼んだか?」
フュリアスはアウトローに近づいた。
「お前が敵将だな?いくぞ!」
「元気なこった・・・。」
アウトローはフュリアスに斬りかかった。
フュリアスは、それを槍で軽く受け流し、アウトローの胴体へ槍を走らせる。
シュッと、空気と共に、アウトローの腹は斬られた。
かすり傷だが。
アウトローはフュリアスが槍を引く隙に、馬の足を斬った。
骨を断つことは出来なかったが、馬は痛みで立ち上がった。
「くそ!」
フュリアスはそのまま後ろへ落馬した。
フュリアスは、冷たいものが首にくっつくのを感じた。
「覚悟はいいか?」
見上げると、アウトローがいた。
「・・・いや、まだこの世には未練があんだ。」
「どんな?」
「お前を殺すことだ!」
フュリアスはアウトローの足に蹴りをいれた。
アウトローはバランスを崩して倒れこんだ。
「今度は俺の番だ!」
・・・だが、フュリアスの番は来なかった。
フュリアスが槍を突き刺そうとしても、アウトローは避けた。
そして、素早くフュリアスの懐まで行き、体当たりしてフュリアスを倒した。
「ハアハア・・・。このままやってもらちがあかねえ。突破するぞ!」
アウトロー隊はフュリアス隊を突破した。
将が倒れこんでいるのだから、いとも簡単である。
「追うぞ!」
フュリアスは立ち上がりながら言った。