イモータル平原北部(仮)の戦い(激・後編)
本陣奮戦
「カンッ・・・カキンッ」
イモータル平原北部(仮)の南側にある、イモータル軍本陣は、暑苦しい熱気で包まれていた。
セイクレッド軍とイモータル軍全員が集結しているからだ。
狭くてまともに戦えない。
暑苦しくて、汗で武器を持つ手がすべる。
風が強かったのが、唯一の救いだった。
テラーはフュリアスを探した。
今度こそ決着をつけないと。
・・・まだフュリアスは来ていない。
ジョゼフもまだである。
テラーはフュリアスを探すのに夢中で、フレイムが視界に入っても気にならなかった。
フレイムはテラーを見付け、さっそく斬りかかることにした。
兵は適当に馬が蹴ってくれる。
「敵将!覚悟!」
フレイムの槍はテラーの馬を突き刺した。
「危ね!」
テラーはなんとか馬から降り、怪我をせずに済んだ。
「・・・お前・・・フレイムか?」
腰の辺りで燕尾型になっている服を見て、言った。
「・・・そうだ。」
「・・・フレイム・・・エドワードの仇、取らせてもらうぜ!」
テラーはフレイムの馬の首を突き刺した。
フレイムはうまく馬から降りたので、大した痛みもない。
テラーは間髪を入れずに、再び槍を突き出した。
フレイムは巧みにそれをかわす。
「私への恨みはそんなものか?」
「黙れ!もうすぐ、その減らず口、叩けなくしてやるからな!」
テラーはフレイムへ向かって走り出した。
フレイムの槍を、テラーは自分の槍で受け流し、フレイムに体当たりした。
倒れるフレイムを、地面に着かせる前に蹴る。
「貴様への恨みはこれだ!」
テラーは槍をフレイムの首へ走らせた。
興奮していて、テラーは刺した感覚もなく、何も見えなかった。
「ぐわっ!」
何か知らないが、とにかくテラーはひどい痛みに襲われた。
「ハアハア・・・。」
倒れるテラーを見下ろしていたのは、フレイムだった。
「・・・恨みなどと・・・感情で動いては・・・な。人として・・・の理性はどう・・・した・・・?」
フレイムは生と死に溢れる戦場に倒れた。
・・・テラーの槍はフレイムの首に刺さらなかったのだ。
興奮状態からか、狙いが定まっていなかったのだろう。
倒れた二人を、周りは死体とみなし、特に気にはならなかった。
今は亡き仲間のために戦うテラーを。
皇帝への忠義を捨てないフレイムを。
毎日毎日、必死で生きている二人を。
それを、もう見慣れた、何の変哲もない死体として片付けたのだ。
人は自分を中心に世界を回しているから、仕方がないが。
セイドは倒れているテラーを見つけた。
セイドはテラーを近くの兵と共に、適当な馬に乗せた。
「国王の所まで行かせろ。ここは危険だ。」
セイドはその兵に命令した。
フレイムは敵味方の死体の山で見えなかった。
・・・セイクレッド軍はイモータル軍の反撃により、退かざるを得なくなった。
平原北部(仮)の中央まで退いたが、ジョゼフ、フュリアス隊が待ち受けており、挟撃された。
アーミィの命令で、側面から無理にでも逃げることになった。
が、うまく逃がしてもらえなかった。
平原北部(仮)の西部を、密かに走り続ける者達がいた・・・。
本陣陥落
「ザッザッザッ・・・」
セイクレッド軍本陣を目指すはフィリップ隊であった。
西部といっても、落石をした崖は避けている。
セイクレッド軍が全軍、イモータル本陣へ行ったので、ガラ空きの本陣を狙おうというのだ。
陣が見えてきた。
・・・やはり、人影はない。
「よし、行け!本陣を焼くぞ!」
兵達は走り出し、なにやら持っていた草を天幕の近くに置いていった。
草を全て置くと、兵はフィリップの元へ来た。
「火矢準備!」
別に叫ばなくてもいいのだが、なんとなくそうしてしまう。
五人程度の兵が火矢の準備を終えた。
「射ろ!」
火矢がセイクレッド陣へ火を移し、焼き始めた。
炎があまり大きくならないのは気のせいか。
「次へいくぞ。」
フィリップは焼いた陣を避けながら、前へ進んだ。
・・・アウトロー隊は陣の天幕に隠れていた。
まだ焼かれていない方の陣である。
のこのことやって来るフィリップ隊を見て、アウトローは
「来たか・・・。数も少ないし、装備も貧弱だな。」
フィリップごときに負ける気はない。
・・・フュリアス隊との戦いでかなり傷ついたが、これなら勝てる。
フィリップ隊が火矢の準備をする。
なにかの草を持ってきたときはさすがに緊張したが、もう大丈夫だ。
「撃て!」
フィリップが命令したのが聞こえた。
「今だ!行くぞ!」
アウトロー隊が一斉に天幕から出て行く。
「!なんだ!?」
フィリップは混乱している。こんな中隊、破るのは容易い。
「かかれ!こんな雑魚共、早く片付けろ!」
アウトローはフィリップを目指した。
こんな雑魚がよくここまで生きれたもんだ。
だが、ここでその奇跡も終わる。
「フィリップ!」
アウトローはフィリップの馬を斬った。
「わっ!」
フィリップは落馬し、体を強く打った。
「フィリップ、てめえの命、ここで終わりだ!」
アウトローは剣を高く上げ、フィリップ目掛けて振り下ろした。
ガンッ。
「な・・・なんだ・・・?」
アウトローの剣は天高く上がり、ギュルギュル回っている。
「ひ、退け!退くぞ!」
フィリップは立ち上がり、誰が見てもわかるぐらいに、必死に走り始めた。
剣はやがて、横になった状態で地面に激しくぶつかり、その衝撃で酷く折れた。
「・・・あいつが俺の剣をはじくなんてな・・・。」
アウトローは折れた剣の所へ行くと、その柄の部分を拾い上げ
「ここで休憩だ!奴らは追わなくてもいい。」
と言った。
ふと、振り返ると剣が落ちていた。
アウトローの折れた剣ではない。
どう見たって、ごく普通の、折れていない剣だ。
それを座り込んで見た。
「フィリップの剣かな。戦場で武器を手放すような奴に負けたのか、俺は。」
なんとも普通の口調でいった。
怒っても、悔しんでもいない。
燃えている陣に近くでの休憩は、かなり暑かった。
・・・セイクレッド軍はイモータル軍からなんとか逃げた。
被害が酷いので、全軍でさっさと退いてしまった。
イモータル軍はセイクレッド軍を追撃せず、退いた。
フレイムは本軍と離れてフィリップを待ち、合流して一緒に退いた。
両軍とも、無理はひかえたいのだ。