ハイ城攻防戦(前編)
天梯車
「カーンカーン・・・」
フレイム軍はハイ城攻略のための兵器を作ろうとしていた。
城攻めなので、天梯車である。
今はそのための木材を取っているところだ。
指揮はギルトだった。
こんな仕事ばかりである。
大量に木を伐り、ふもとの陣までそれを運ばせていた。
「・・・よし、もうこれくらいでいいだろう。」
ギルトの言葉に、皆救われたようだった。
なんといっても重労働だ。
三日ほど大して休まずにやっているのだ。
アホみたいに疲れても仕方ない。
そして数日が過ぎ、天梯車が四つ作られた。
「・・・これならハイ城も落とせるだろう。」
フレイムは自信がついたが、やはり心配だ。
セイドのことだ。そう簡単にいくだろうか?
悩んでも仕方ないので、とりあえず天梯車を並べ、ハイ城へ進ませた。
「・・・来たぜ、セイド。」
ハイ城の城壁にはセイドとアウトローが立っていた。
「簡単に入らせたら疑われる。適当に火矢を放っておけ。」
「わかった。」
天梯車は¥が頑張って坂を登ってくる。
実際に頑張っているのは動かしている兵の方だが。
天梯車が近づいて来ると、アウトローは
「今だ!火矢を撃て!」
と言った。
二つ天梯車は焼けたが、残りは充分に天梯車として機能できる。
「来たな。退くぞ!」
アウトローの命令で、兵は全員城内に消えていった。
天梯車が城壁にぶつかり、橋を架けた。
「よし、城内に入るぞ!」
フレイムは言った。
城内に入ってみると、まるで迷路のようになっていた。
壁、建物がアンバランスに配置されている。
敵兵の姿は全く見えない。
「・・・とにかく進むぞ!」
フレイム軍はハイ城の迷路を進み始めた。
・・・城外の西側には、セイド軍がいた。
「あいつら、今頃迷路に迷ってんだろうなあ。」
「だろうな。アウトロー、チェリーと一緒にイモータル平原に行け。」
「わかった。」
「私は残りの兵でフレイムを殺す。」
「んじゃ、行こうぜ、チェリー。」
「はい。」
アウトローとチェリー、その部下はイモータル平原へ向かった。
セイドは本国から来た援軍と自分の部隊で、ハイ城を包囲した。
フレイムはハイ城からいつ出れるのか、迷路の中を彷徨った。
ハイ城完全包囲
「タッタッタッ・・・」
ハイ城城内はいい加減くたびれる。
迷路のようになっている上に、敷地が広い。
出れるのは一週間後かもしれない。
そんなフレイム軍をよそに、セイドは暁光山砦の修復をさせていた。
「もう今後ここで戦うことはないだろう。せめて元の姿に戻してやるか。」
ということである。
もう何日経ったのか、時間の感覚も狂ってきている。
食料はセイド軍が残したのか、有り余っていた。
「出口はどこだ・・・。」
フレイムは言った。
ギルトが走ってきた。
「フレイム将軍、出口です!」
「そうか!よし、急げ!」
城門が開いていて、その先には夢にまで見た「外」の世界が広がっていた。
だが、その希望は重い音にかき消された。
ゴゴゴゴゴと、城門が閉じたのだ。
「なんだ?」
外から城壁を越えて、火矢が放たれた。
火の雨を降らされ、フレイムらのいる辺りの建物に火が点いた。
「城門を開け!火を消せ!」
フレイムの命令に従い、兵は動いた。
だが、城門は外側から閉められていた。
火も、枯れ柴が隠されていたのか、なかなか消えない。
辺り一面、どこを見ても炎、炎、炎である。
「これもセイドの策か・・・。く・・・。」
フレイムは絶望せず、消火活動を止めなかった。
数十分後。
焼けた死体が心苦しくさせる中、城門が開いた。
「開いたか!出るぞ!」
フレイムの命令を聞く前に、兵たちは走り出していた。
どう考えても、これは罠としか思えない。
誰もがそう考えながら走っている。
城門をくぐると、一斉に矢が飛んで来た。
フレイムなどの将は幸い、兵達の体に守られた。
「セイド!どこだ!?私が相手をしてやる!」
フレイムはそう叫びながら、敵兵を切り伏せた。
・・・どうやらここにいるのは、伏兵だけらしい。
「セイド・・・。暁光山にいるはず・・・。暁光山に行くぞ!」
確証などない。直感である。
暁光山砦には、セイド部隊が待ち構えていた。
「来たか、フレイム。」
並ぶ兵達の前には、セイドが立っていた。
「セイド・・・。」
「ここに墓標を刻んでやろう。」
さっきとは違い、落ち着いている。
「これは私とお前の戦いだろう?兵は関係ない。休ませてくれ。」
「私は貴様とは敵対関係にある。休ませるわけがない。」
期待してはいなかったが・・・。
「そうか・・・。マッチ、兵を頼む。」
「はい。」
マッチは兵を連れて本陣に戻ろうとした。
「させるな!かかれ!」
セイドは命令した。
「く・・・セイド!お前との戦いはまた後でだ!」
フレイムは軍に戻り、本陣まで全力で走った。
「・・・戻れ!城に戻るぞ!今は放っておけ。」
セイドの命令に、兵達は渋々、きびすを返した。
草木は風に揺れ、サーサーと心地よい音を響かせていた。