ハイ城攻防戦(後編)

ハイ城包囲再び

「バサッ・・・」
天幕に誰か入ってきた。
「マッチか。」
フレイムは言った。
「はい。この先、戦をどう進めますか?」
「前の戦いで皆士気がない。もう潮時か・・・。」
「ハイ城を包囲すればいいはずです。士気もじきに上がります。」
「そうか・・・。敵は暁光山砦を捨てているしな。包囲といくか。」
フレイム軍はハイ城包囲に取りかかった。
捨てられた暁光山砦を悠々ともらい、ハイ山ふもとに再び陣を敷いた。
ここまでは順調に進んでいった。
「順調に進みすぎだな・・・。まあいい。罠でもなんとかなる。」
と、フレイムは大して警戒しなかった。
・・・セイドはハイ城からふもとの陣を見ていた。
「もう兵が少ない。これで敵に対抗できるかどうか・・・。」
アウトローたちで先にイモータル平原に向かわせたことは後悔していない。
この戦でやるべきは敵の足止めだ。
地の利を得ているセイド軍は、この兵力でも充分だと思ったのだが・・・。
フレイム軍の実際の兵数がわからなかったため、残った兵が少なくなったのだ。
「だがこちらにはこの城がある。ここにいる限りは安全だろう。」
巨大迷路の城だ。敵が迷っている間に逃げられる。
その夜、セイドは警備を厳重にした。
といっても、城壁の兵を多くしただけだ。
暗闇に紛れて城に着くのは、ギルトにとっては簡単だった。
兵は連れていない。一人である。
ササッと木々から飛び出しでは隠れ、城壁にへばりつくことができた。
城門は固く閉ざされている。
よかった。もし開いてたら見付かるところだ。
さ、早く済ませよう・・・。
ギルトは手早く火打石で木の棒に火を点けた。
一体なんど練習したことか。
城壁の兵は音に反応したようだが、下を覗き込む前に、ギルトが行動した。
火の点いた棒が城壁に飛んできたのだ。
「!敵だ!敵が来たぞ!」
見張りは驚いてそう叫んでいた。
叫んでからやっと
「後で間違いだったと知られたらどうしよう。」
などと考えていた。
火の点いた棒は来たが、それはただの挑発かもしれない。
攻撃しに来たわけじゃないかもしれない。
それを「敵が来た」なんて言ったのだ。
死刑まではいかなくても、死ぬほどの痛みを味わうことになるだろう。
「そ、そんなのは嫌だからな!」
突然色んなことを考えた。自分は罰せられる・・・。
ここにいたらどうなるかわからない。
見張りは必死に考えた挙句、裏切ることにした。
別に敵につかなくてもいいだろう。
どこか適当な農家のところへ行けば・・・。
見張りは城門を開けた。
ギルトは驚いたが、すぐに上空に火矢を放った。
城門が開いたときの合図である。
のんびり寝ていたフレイムも、無理矢理起こされて進軍した。
兵の方は準備できていて、進軍もスムーズだ。
敵の攻撃もないので、すぐにハイ城に着いた。
城門が開いたままだ。
「よし、入り込め!迷路は前と同じ道を通るぞ!」
ということは、また数日間迷い続けることになる・・・。
セイドは道のわかる巨大迷路を走り続けていた。

勝手に援軍

「ザッザッ・・・」
二度目だが、やはり迷う。
巨大なだけに、そう簡単には覚えられない。
「やれやれ・・・迷うのは飽きたな・・・。」
フレイムもため息を吐く程だ。
壁を壊して進みたい気分である。
・・・セイド軍はハイ城を出ようとしていた。
が、思わぬ邪魔者がいた。
「・・・これでは出れないな・・・。」
あの火矢を放った場所だ。
建物が崩れてガレキと化し、城門を塞いでいた。
火計の後でも、なんとか通れると思っていたが・・・。
「・・・戻るぞ。西門から出る。」
西門へ行くなら、途中フレイム軍と遭遇する可能性がある。
見付かったら全速力で逃げ、追われないようにしないと迷路の意味がない。
運が悪かったのか、フレイム軍と出会ってしまった。
なんとも普通に、角を曲がったら
「あ、いた。」
てな感じである。
セイドも一瞬呆気に取られたが、すぐに気を取り直し
「突破するぞ!絶対に逃げ切るのだ!」
セイドは味方の兵を向き、右手の剣を高々と上げた。
フレイムは振り向かずに槍を掲げ
「適当に逃がせ!出口まで追撃するのだ!」
セイド軍が突破できたのは当たり前だった。
しかし、フレイム軍はしつこくついて来る。
「もっと足を速めろ!追いつかれるぞ!」
セイドが言っても、大して変わらなかった。
そして、結局西門までフレイム軍から離れられなかった。
「よし、出口だ!奴らを叩き潰せ!」
フレイム軍の猛攻にセイド軍は押された。
いつの間にかフレイム軍に包囲されていた。
セイド軍は突破出来ず、ただ敵の攻撃を防ぐので精一杯のようだった。
そのとき、セイド軍に援軍が来た。
「おい、セイド!なに負けてんだよ。」
アウトローである。
援軍のおかげで包囲から脱出できた。
フレイムも
「援軍か・・・。イモータル平原に戻るぞ!ここはもういいだろう。」
と言い、退いていった。
「アウトロー、平原に行ったはずだが・・・。」
「負け気味だって、俺の兵が言ってたんだ。」
「私の所に斥候を置いたのか。」
「ああ。ま、よかったじゃねえか。」
「やれやれ・・・お前に二度も助けられるなんてな・・・。」
セイドは心底からため息を吐いた・・・。