魔学都奪還戦(後編)
城門崩壊
「ガタガタガタ・・・」
別に寒いわけではない。
魔学都城外の南では、破城鎚が城門に向かっている。
南はアイリーン部隊が攻めようとしていた。
守りはフィリップである。
フィリップは城壁から破城鎚が近づくのを見て
「来たぞ!火矢だ!」
と命令した。
火矢が放たれるが、盾を持った兵がそれを防ぎ、なかなか焼けない。
「もっと火矢を射ろ!兵に防がせるな!」
兵の盾は木製なので、何度か当たれば燃えるはずだ。
だが、燃えたのは二つで、残りの一つの破城鎚で、城門は破られた。
「応戦しろ!」
フィリップはそう言って、城壁から下りた。
アイリーンは城門をくぐり、敵兵を斬りまくっていた。
その勢いはフィリップを圧倒させた。
ま、誰にでも圧倒されているが。
アイリーンは周囲の兵を斬ると、他は味方に任せた。
そして、目線はフィリップに向けられた・・・。
「敵め、覚悟!」
フィリップに向かって来た。
アイリーンの双剣は、フィリップの構えた剣を叩いた。
フィリップは衝撃でよろめいた。
アイリーンは対称的に、一回転して再び剣を振った。
フィリップの剣はそれをなんとかはじいた。
隙を見て、フィリップは
「ひ、退け!退け!」
フィリップは我先にと逃げていった。
アイリーンは呆れ顔で、その様子を眺めていた・・・。
「追撃しよう。休まなくても良さそうだし。」
被害が少ないので、そう言った。
三方から攻められたゼロス軍は、市街地へ逃げていた。
市街地といっても、ビル一つない。そりゃそうだが。
民家などが立ち並び、田畑が見える。
ゼロス軍は市街地に集結し、ロイアル軍を待ち構えた。
ロイアル軍は、そんなことも知らずに、ずんずんと突き進んでいた。
大市街戦
「ガサ・・・」
この辺は草木が多く、隠れるのに適している。
ゼロス軍が隠れている市街地である。
「どこ行ったんだ、奴ら?」
ロイアルがノコノコとやって来た。
「もうすぐか。」
ゼロスは呟いた。
もちろん、隠れている。
ゼロス軍の存在にも気付かず、ロイアル軍は市街地を進んでいく。
「よし、かかれ!」
ゼロスの命令で、各地から矢が飛び出した。
「敵か!ちっ、片っ端から潰してやれ!」
ロイアルは槍を掲げて、言った。
矢が少し少なくなったと思ったら、今度は兵が飛び出してきた。
援護射撃も受け、ゼロス軍は勢いに乗った。
「敵に隙を見せるな!総攻撃だ!」
ゼロスの命令により、更に辺りは大混乱となった。
ゼロス軍の勢いが増すほど、ロイアル軍は奮戦する。
頑張れば頑張るほど、死ぬ確率が高くなるのだ。
やはり、ロイアル軍の中で一番暴れているのは、ロイアルだった。
「ゼロス!どこにいる!?」
辺りは血に塗りつぶされていて、よく見えない。
ゼロスはロイアルの見つけた。
「ロイアル、まだ私と決着をつけるには早い。」
「じゃいつなんだよ?」
「そうだな・・・。宮内に庭があった。そこでやろう。」
魔学都の宮内には庭なんて、二つしかない。
王族のものと、貴族のものだ。
貴族の庭は、前にヴィクトリィとスプレンダーが訓練をしていた場所である。
「わかった。じゃあ、もう退いてくれ。」
「それはお前の仕事だ。私の軍を退かせて見せろ。」
ゼロスは、立ち込める血の霧に消えた。
気が付けば、周りのゼロス軍は退いていた。
辺り一面、無残な姿になっていた。
民家、草木、地面などの全てが血のペインティング済みだったからだ。
ロイアルはこの惨状に言葉を失ったが
「・・・行くぞ!魔学都は俺らのもんだ!」
と言い、真っ先に走り出した。
ゼロスは退く最中
「ジミーを呼んでくれ。」
と言った。
ジミーが小走りに来ると
「ジミー、私は貴族用の庭に行く。敵はロイアル以外、宮内で食い止めろ。」
「はい。わかりました。」
「頼んだぞ。」
ジミーが自分の部隊の方へと走って行った。
その様子を、ゼロスはおだやかな目で見ていた。
「・・・生きろ、私の息子よ・・・。」
近くの兵にすら聞こえないくらいの小声で言った。
全身鎧の征東将軍でも、子を持てば親なのだ。