魔学都奪還戦(ファイナル)
月下美人
「ガキンッ」
剣が折れ、弱き者は倒れていく。
ジミーの指揮の下、ゼロス軍とロイアル軍は死闘を繰り広げていた。
これが闘技場なら、きっとがっぽり儲けられそうである。
・・・この戦場にいれば、そんなことを言ったら殺されるだろう。
「敵を通すな!頑張れ!」
ジミーは多くの兵に信頼されている。
そのため、兵は全身の力で武器を振っているようだ。
あまり美しいとは言いかねないが。
ロイアルはこの戦場は抜けられないと思ったのか、他の道を進んだ。
兵達は置いていった。
ここで進路を変えても、被害が大きくなるだけだ。
幸い、この道で敵の姿を見ることはなかった。
味方の姿もなかった。
廊下を抜けると、ドアがあった。
迷わずに開けると、ゼロスがいた。
「・・・こんなトコにいたらわからねえだろ。」
ロイアルは歩み出した。
この庭は草花が多く、水路もあった。
癒される場所だが、今は戦いに来たのだ。
今は、満月の夜。月明かりが射し、幻想的である。
「ロイアル、あまりここの花は切るな。」
ゼロスもここの花の虜のようである。
「わかってる。さ、やろうぜ。」
いつもより声が小さい。
こんな場所じゃ、大声を出したくなくなるのだろう。
ロイアルとゼロスは走り出した。
どちらの槍も頑丈で、ガンッと鉄のような音がした。
ロイアルはゼロスに体当たりした。
だが、ゼロスはロイアルを殴った。
同時に起きたことなので、双方倒れた。
「さすが、裏切り者なだけはある・・・。」
ゼロスは立ち上がりながら言った。
「なんとでも言え。もともとお前らのことは好きじゃなかったんだ。」
ジョンが来るまでは、イモータルの南部を任されたような存在だった。
だが、ジョンを勝手に裏切り者にされたので、腹が立ったのだ。
そして、ジョンと一緒にイモータルを裏切った。
ロイアルは立ち上がった。
ゼロスはその隙にロイアルに近づいた。
シュッと音がした。
ゼロスの槍の穂先は、ロイアルの首の横を貫いた。
つまり、当たらなかったのである。
「危ねえな。」
ロイアルはゼロスに蹴りを入れた。
ゼロスは、いくら鎧を着ているとはいえ、無敵なわけではない。
ゼロスが後ろに倒れると、今度はロイアルが槍を走らせた。
狙うは首。
頭は仮面付き兜があるから、防具が布だけの首だ。
「ちっ・・・。」
狙いがはずれ、顔の仮面部分に当たった。
ゼロスはロイアルの槍を避け、後ろへ下がった。
二人の様子は、多くの草花が眺めていた。
魔学都陥落
「ダンッ」
ドアが吹っ飛びそうな勢いで開いた。
「将軍!」
ジミーである。
後ろにはゼロス軍の兵が続いている。
「ジミー、押されたのか?」
「はい・・・。」
ロイアルは急に不安そうな表情になった。
「・・・おい、ゼロス。俺・・・どうなるんだ?」
周りは全て敵だ。
いくら激戦で弱っているとはいえ、数が多すぎる。
それに、槍じゃいっぺんに敵を倒せない。
「どうなるんだろうな?この状況から判断しろ。」
「周りは皆敵・・・。ってことは、死ぬってことか?」
「私が斬るつもりだったが、仕方ない。」
「おいおい・・・。卑怯だろ、こんなの?」
「戦に卑怯もなにもない。生きるか死ぬかの二択だけだ。」
「へーいへーい。わかりましたよ。・・・お前ら、覚悟できてんだろうな?」
ロイアルはまず正面の敵兵に体当たりし、そこから槍を思う存分振るった。
「奴は裏切り者だ。決して逃がすな!」
ゼロスの命令は、兵を奮起させた。
まあ、ロイアルがこんな無理なことをできるのも、味方のおかげだ。
「ロイアル将軍を助けろ!敵なんか首を突いてやれ!」
ウラヌスである。
ドアまで行くと、そこからはもう勢いだけで進めた。
「ロイアル将軍!」
ウラヌスは間にいる敵兵を邪魔なので突き刺した。
「ウラヌスか!さあ、逃げるぜ!」
ロイアルは逃げたがっているのには、訳があった。
・・・庭を見下ろせる二階の廊下には、アイリーンと弓兵がいた。
カーテンを開け、準備万端。
味方が逃げ切る前に、アイリーンは
「射掛けろ!」
と命令した。
火矢ではなく、普通の矢である。
火矢だったら、ゼロスとロイアルがキレていることだろう。
上方からの射撃で、庭のゼロス軍は戦意がなくなってきている。
庭から出たロイアルは、とにかく付近の敵を倒すように命令した。
庭の敵は後で片付ける。
ゼロスは上から降ってくる矢など大して気にもせず
「混乱するな!順序よくここから出ろ!」
と言っていた。
兜が頑丈なので、上からの攻撃は気にならないのだ。
庭からゼロス軍が出ると、誰もが戦意喪失状態だった。
「・・・これで戦はできんな。一度エクメーネまで退くぞ!」
フィリップ隊はロイアル軍の追撃を受けながらも、なんとかゼロス軍と合流できた。
かくして、セイクレッドは同盟国ブライトの領土を取り戻したのである。
だが、ロイアルは魔学都に大した軍は置かなかった。
アーミィの命令だそうだ。
いくら矢が刺さり、人が倒れていても、庭の花は美しく咲いたままだった。