イモータル平原の戦い(終結編)
再び援軍
「ポタ・・・ポタ・・・」
フレイムの腹からは相変わらず血が流れている。
「こんな薄い布では無理か。ここで退くわけにはいかないしな・・・。」
フレイムはこの軍の大将だ。
大将が退いちゃ、兵の士気に関わる。
だが、このまま放置したら自分が危険だ。
死ななくても、当分戦に出れないことになれば、国にも影響する。
・・・国の邪魔者にはならない・・・。ここで勝てば、休めるはずだ。
私は、死んでも邪魔になるなら、いっそ暴れてやろう。
どちらも邪魔をして、騒々しい中死んでやろう・・・。
フレイムはこんなことを考えていた。
フレイムは立ち上がった。
ずっと座ってたから痛かったのか。立つと痛みも少なくなった。
痛みがなくても、血の出る量は変わらない。
フレイムは槍を掲げた。
「絶対にここで勝て!死ぬ前に敵を一人は倒せ!」
兵数の面ではフレイム軍が上だからだ。
他にも理由はあるだろう。
フレイムのこの決死の激励は、兵の士気をグングン上げていった。
かなり進んでいるフュリアスですら
「いつの間か周りの敵がいなくなった。」
なのだから、相当なものだ。
後方から援軍が来た。
イモータル軍である。
「フレイム将軍!」
ドリズルは血だらけのフレイムに馬から降り、駆け寄った。
腹に押し付けた紅の布が、傷を受けている証拠だ。
「ドリズルか・・・。」
フレイムはしゃべるだけでも精一杯のようだ。
声が小さすぎて、ドリズルには聞こえなかった。
だが、口がパクパクしているので、何かしゃべっていたのだと推測した。
「何も言わない方がいい。早く本陣に戻るぞ!」
血は、ドリズルの地面に突いている膝に流れた。
「二十人もいればいい。後は全員第二陣に突撃しろ!」
ドリズルの命令はフュリアスに聞こえていた。
「おーし、一旦休憩だ!ちょっとしたら突撃だ!」
フレイムとドリズル、それから二十人程の兵は本陣に退いた。
残りは十分程度の休憩で進軍し始めた。
テラーの騎士団は退いたが、第二陣のヘイムがいる。
ソルジャーだっているのだ。突破は難しい。
「ま、誰がいようが、適当にやってりゃ勝てるだろ。」
とは、フュリアスの意見である・・・。
アーミィは第二陣にいた。
「ヘイム、適当に遊んでやれ。後続を後で出す。」
ヘイムはもう第二陣まで退いていたのだ。
テラーもこの辺りまで退いていた。
「ああ。だが、敵の士気は高いだろう?」
「それを食い止めるのがヘイムじゃないのか?」
ヘイムの自尊心をくすぐる。
「仕方ない・・・。やろう。」
別にテラーでもいいのだが、アーミィの策には騎士団は必要だ。
・・・フュリアス軍は第二陣に突っ込んできた。
ヘイム軍がそれを受け止め、アーミィの部隊が少しして援護に来た。
・・・アーミィ自身は行っていない。
高みの見物の方が楽でいい。
そして、アーミィの情報はやはり確かだった。
フュリアス軍の背後は、セイド軍が攻撃していた。
ハイ城からの援軍である。
フュリアス軍は挟撃を受け、適当では勝てそうになかった。
さてさて、セイクレッド騎士団の存在を忘れてもらっちゃ困る・・・。
終結
「バキッ」
陣の柵が壊れた。
「かかれ!こんな所、さっさと落とせ!」
テラーである。
騎士団はフュリアス軍を迂回し、イモータル本陣に奇襲をかけていた。
もちろん、アーミィの策である。
本陣で休養中だったフレイムは・・・。
いや、本陣にはいなかった。
ドリズルの言う通りにし、本陣から北の仮設の陣に行ったのだ。
簡潔なもので、しかも小さい。
五十人くらいなら、ギュウギュウ詰めで入るくらいだ。
なので、本陣にいるのはグロウと一般兵である。
「皇帝!早くお逃げください!」
グロウの護衛である。
「・・・いや、逃げても仕方ない。」
「皇帝?」
「逃げたらフレイムが危ない。ここで奴らを退かせるのだ。」
「しかし、皇帝・・・。」
フレイムのことが出て来ると、逃げろと強要しにくい。
「よし、逃げずに押し返せ!」
グロウは走り出してしまった。
テラーはここの将を探した。
フレイムはヘイムと戦ってるはずだ。じゃ、ここにいるのは・・・。
イモータル皇帝のグロウか。
もう逃げてるかもな。なら楽なんだけどな。
「どこだ、グロウ!」
とりあえず言ってみた。
いても出てくるわけがないだろうが、なんとなくである。
グロウはその声が聞こえた。
果たして、何と返せばいいのやら・・・。
と、グロウは半ば本気で考えていた。
グロウは敵兵を斬り、二、三歩歩いた。
横を向くと、槍が自分目掛けて突進して来る。
他の誰でもない。自分だ。
グロウはしゃがみ込んで避けた。
「はずしたか・・・。」
テラーは馬から降りた。
槍を避けた奴、大きなマントをしている。
「・・・グロウか?」
自分でもわからないまま、聞いていた。
「ああ。」
グロウは条件反射で肯いていた・・・。
「皇帝を討てば、国も終わりだな。覚悟しろ!」
テラーの槍は、グロウへ一直線に進んでいく。
グロウはその槍を自分の槍で弾いた。
テラーの槍はテラーの後ろへ飛び、刃が少し欠けた。
テラーは剣を抜いた。
グロウは、テラーの剣を振らせる前に槍で叩き落した。
「・・・いい加減にしてくれよな。武器飛ばしまくりやがって。」
グロウは何も言わず、槍をテラーに向けた。
「・・・武器がないと戦えないしな。退くぞ!」
テラーはグロウに背を向け、騎乗した。
「・・・やれやれ、退かせたか。」
グロウはどっと汗が吹き出るのを拭わなかった。
テラーの奇襲失敗で、戦況も悪くなった。
フュリアス軍が第二陣を突破したのだ。
しかし、アーミィは至って慌てずに
「さっさと退くぞ!死ぬ前に逃げ切れ!」
と命令していた。
セイクレッド軍が退くと、イモータル軍は追撃を始めた。
フレイムは傷は治るまで、本陣で休んでいた。
アーミィは聖都ホーリーを簡単に捨て、豊城に退いていった。
イモータル軍は素直にホーリーを制圧した。
アーミィが何をしたいのか、ま、ホーリーが取れてよかったらしい。