白山包囲網
「ザッ」
白山包囲陣が展開された。
セイクレッド城が落ちたことは、セイド隊には知られなかった。
包囲されているので、外部との情報が途絶えたのだ。
だが、セイドは大体の戦況は理解できていた。
「なんにせよ、包囲をどうにかすればなんとかなる。」
セイドは適当なことを言っていた・・・。
セイド隊はアウトロー連隊を含んでいる。
だから、フレイムも下手に攻撃できないようだ。
フレイムはセイドが動くのを待っていた。
動いたら、攻撃できるのだが・・・。
一向に動こうとしないので、フレイムも動けない。
セイドは斥候の報告を受けていた。
「・・・包囲されたままか。隊の薄い所はないのか?」
セイドは椅子に座って足を組んでいる。
「セイクレッド城への道は突破できそうです。」
道といっても、雪で埋もれている。
「なるほど。・・・私はそこまで焦りはしないがな。」
「どういうことですか?」
「動くべきは今、ということだ。進軍するぞ。」
セイドの進軍命令の後、アウトローがセイドに会いに来た。
「アウトローか。なんだ?」
セイドは座ったまま、顔だけアウトローへ向けた。
「もうそろそろ、俺もやめていいか?」
「・・・何をだ?」
「兵士さ。もう疲れてな・・・。仲間を連れてどっかに行きたいんだ。」
「・・・私はお前よりも前から戦っているぞ。私の前にやめるのか?」
「ああ。」
「平等ではないな。まだ戦えるはずだ。」
「俺はな、ただの盗賊だったんだぞ。」
「私も一般人だった。」
もっとも、兵法書を読みまくっていたが。
「普通に生きてなかったんだ。これから普通に生きる。」
「セイクレッドの天下まで待て。」
「その頃には俺も死んでるさ。」
「兵をやめるのは厳罰だ。」
「そんな余裕はないだろ?包囲を突破したら、俺はどっかに行く。」
「・・・わかった。いつでも勝手にやめるといい。」
セイドは立ち上がり、アウトローを避け、天幕を出た。
「・・・この戦、セイクレッドは勝てないぜ・・・。」
アウトローは呟いた。
セイド部隊は白山から下り始めた。
セイクレッド城を背にし、ただ一点を目指していた。
その一点とは、フレイムのいるであろう天幕である。
白山はゆるい傾斜だが、走れば勢いがつく。
セイド部隊はフレイム陣へ逆落としをした。
「フレイム将軍、敵が来ました!」
兵は後ろへ指を指しながら言った。
「やっと動いたか。・・・ここにか?」
「はい!」
・・・せっかくセイクレッド城に伏兵を用意したのに・・・。
城へ向かうものとして、すっかり油断していた。
「まずいな。ジョゼフに援護を求めよう。行ってくれ。」
「はっ。しかし、フレイム将軍は・・・。」
「私はいい。早く行け!」
大声を出すと、腹に響いて痛い。
「はっ。」
セイドはフレイムの油断を突いたのだ。
フレイムが怪我をしていることは知らないが、討てれば何でもいい。
セイドはここでフレイムを討つつもりだった。
周囲の敵はアウトローに任せて、セイドはフレイムを討つ。
勝手に援軍
「カキンカキン」
足元の雪が鮮血に染まっていく。
「・・・私はただの足手まといだな・・・。」
フレイムは自分で言って、肯いた。
先程敵兵を斬った。
少し無理をしたからか、腹部の傷が開き始めた。
「ここで敵が来たら、何もできないだろうな・・・。」
フレイムは苦笑した。
運悪く、セイドはその近くにいた。
物資の倉庫を挟んで、二人はいた。
テントなので、寄りかかれず、フレイムは座って苦しんでいた。
「フレイム・・・どこだ?」
・・・誰かわからないが、私もここで終わりか。
だが、フレイムの予想は大きく外れた。
「敵の援軍か!ふんばって応戦しろ!」
セイドは言った。
敵兵の姿が見えたが、敵はフレイムを死体としか見ていないようだ。
ジョゼフの援軍が来たのだろう。
しかし、フレイムの希望は消えた。
セイクレッドの援軍が来たのだ。
白い毛のたくましい馬の騎兵だった。
テラー率いる騎士団である。
フレイムは立ち上がった。
もう無理だ。せめて一人でも多く、敵を倒そう。
必死にフレイムは歩き出し、敵兵を斬っていった。
・・・テラーがフレイムを見つけるのは容易だった。
腹から血を流し、震えながらも兵を確実に倒していく者。
かなり目立っていたのだ。
「お前、フレイムだな?」
テラーは近寄って、聞いた。
あまりにもフレイムが違って見えたのだ。
フレイムだとわかれば、すぐに斬りかかったのだが。
「ああ。テラーか。来い。」
あまり叫べない。
「全身血だらけでも、俺は容赦なく斬るぞ。」
テラーは槍を勢いよく走らせた。
フレイムは左腕を盾にし、ひるまずに槍でテラーを突いた。
「!なんだよ、お前。」
左腕から血が出て来る。
「・・・もう死ぬのだ・・・。どうなってもいい・・・。」
フレイムは手を止めない。
テラーはフレイムの槍を掴み、放り投げた。
「どうだ?エドワードの苦しみは、こんなものじゃねえ。まだだ!」
テラーは槍を取られたフレイムへ、容赦なく槍を投げた。
腹の傷口へ勢いよく刺さり、フレイムは後ろへ倒れた。
刺さった槍は、自分の重みで倒れた。
テラーは、飛んで来る血を浴びていた。
腕の返り血を拭うと
「血って、水じゃないと落ちないんだよな・・・。」
と、腕にツバを吹きかけた。
フレイムの死により、フレイム隊は壊滅状態となっていた。
セイド部隊と騎士団は、豊城辺りまで退こうとしていた。