白山撤退戦

殿軍

「ザクザク・・・」
朱に染まった雪が踏まれていく。
まだセイド部隊と騎士団は退いていなかった。
ジョゼフ隊とフレイム隊が退かせてくれないのだ。
「アウトロー。」
セイドはアウトローを呼んだ。
「なんだ?」
敵兵を斬って振り向いた。
「敵がいて退けないんだ。奴らの目を引いてくれ。」
「俺が戦いたくないのはわかってるだろ?」
「だがな、お前が殿軍には適任だ。」
テラーもセイドも部隊を率いているので、連隊長のアウトローが適任だ。
「・・・わかった。こいつらは任せろ。」
「アウトロー・・・。すまないな。後で助けに来る。」
「そんなもんいらねえよ。適当に戦って突破するから。」
「では、任せたぞ。」
「おう。」
セイドとテラーは部隊を連れ、北へ向かっていった。
北にはフュリアス隊がいるので、突破しなくてはならない。
フュリアス隊に挟撃された形だったが、士気は低くなかった。
騎士団に力もあってか、突破は難しくなかった。
フュリアスはそれを追わず、アウトロー連隊へ攻撃を仕掛けた。
かくして、アウトローはジョゼフ、フュリアス、フレイム隊に包囲された。
フレイム隊は将がいないといっても、指揮官が倒されて士気が高い。
兵数の面でも、フュリアスらの隊は、連隊の十倍はある。
「なんだ、終わりか?」
アウトローは言った。
剣を首に当てられているのは、ジョゼフだった。
フュリアス隊が包囲を完成している間に戦っていたのだ。
「・・・まだ死ねないな。やるべきことがある。」
戦場は忙しいので、突っ立ってると矢が飛んでくる。
アウトローはそれを避けた。
避けた拍子に、ジョゼフの首に刺さった。
といっても、端っこに刺さったので、死にはしないだろう。
ジョゼフは、剣を首に当てなおす隙に、アウトローを斬りつけた。
槍は戦っている間にどこかへ行ったので、剣である。
剣術の面では、アウトローがかなり有利だ。
ジョゼフは、剣をアウトローの剣に当てたつもりだった。が・・・。
「悪いな。」
目まいがしてきた。
・・・いや・・・死んだのか・・・。
「・・・ふ、遺言くらい・・・残させろよな・・・。」
アウトローは、剣を一旦振ったが、すぐに下へ下げたのだ。
ジョゼフはその残像に剣を当てた。
その隙を突き、ジョゼフを斬りつけた。
そして、アウトローには、後ろに目が付いていなかった。
誰が後ろにいるかなんて、どうでもよかった。
アウトローはもとより、死ぬ気でいたのだ。
ジョゼフを殺せたのは、運がよかったのだろうか。
「ちっ・・・。もちっと・・・生きときゃよか・・・たな。」
アウトローは前へ倒れた。
背には槍が立っていたが、誰かに抜かれた。
「ジョゼフを殺すなんてな。恐いもの知らずだな。」
フュリアスだった。

死の報告

「ガン」
兵士は、こんな音がする程力強く膝を突いた。
「申し上げます。フレイム将軍と、ジョゼフ将軍が・・・死亡しました。」
「・・・フレイム、ジョゼフ・・・。アーミィめ・・・。」
ゼロスである。
「!」がなくても、充分にキレていることがわかる。
ゼロスは腕を震わせた。
「進軍命令を出す。豊城まで進軍するぞ。」
たかが一兵卒には、ゼロスに怒りを止められなかった。
たまたまドリズルが来たので、怒りを治めてくれたようだ。
「私情で戦をするのは、好ましくない。」
ドリズルである。
「ああ・・・だが・・・。」
さっきのゼロスのように、キレている者がいた。
マッチである。
作者と同じ名前なのは、区別がつかない。
マッチは「フレイムとジョゼフの死」の報を受け、早速進軍していた。
ゼロスとは違い、部下は少ない。
そのため、勝手な行動も難しくないのだ。
マッチの信用する斥候の報告では
「フレイム将軍を殺したテラーは、軍から離れた所にいる。」
というので、そこへ向かった。
騎士団がいたので、テラーもいるだろう。
・・・余計な敵もいるようだ。
伏兵として、ソルジャー、ウラヌス隊が出て来た。
騎士団も猛攻を加えて来る。
ようやくわかった。策だったのだと。
マッチの信用する斥候は、アーミィに見付かっていた。
「裏切れば将軍の地位に就かせる。できないならここで斬られろ。」
というので、斥候はアーミィに従ったのだ。
「さーて、どいつが俺の相手だ?」
ソルジャーは薙刀を振るいな振るいながら言った。
声が大きいので、当人は普通に言ったつもりでも、結構聞こえる。
戦場でよく聞こえる声というのは、相当なものだろう。
ソルジャーのターゲットとなったのは、マッチだった。
マッチも死は覚悟していた。
第一、ここへ誘われたのも、策だと最初からわかっていた。
フレイム将軍と同じ世界にいたい。
そのためなら、こんな命、惜しくはない。
・・・もうすぐ、同じ世界に住める・・・。
ソルジャーの薙刀は、マッチの体を横に斬っていた。
切断されていないが、生きれない程の深さで斬られていた。
・・・マッチの望みは叶えられたのである。