混水摸魚(こんすいぼぎょ)
死亡者救援
「バサッ」
ゼロスはマッチのいるはずの天幕の中を調べた。
フレイムの死で、勝手な行動をしたのではないかと思ったのだ。
誰かの部隊が陣から離れる様子も、兵が見ている。
「やはりいないか。」
ゼロスはドリズルを探し、少しして見付けた。
「ドリズル。マッチがいない。」
「そうですか。では救援に行きます。」
一応上の人間相手には、ドリズルも敬語である。
「どこにいるかわかるのか?」
「はい。兵が教えてくれました。」
マッチが信用していた、あの裏切った斥候のことだ。
「とにかく、そこへ行こう。」
「これもアーミィの策のはず。白山のフュリアスを突撃させます。」
「そうだな。セイクレッド城のジミーも進めよう。」
アーミィの策なら、何かあるはずだ。
何があるにしても、動きを止めてしまえば、何もできまい。
焦っていたので、このくらいのことしか考えられない。
伏兵がいるにしても、そんなことまで心配していられない。
もういないのだが、マッチを救援にゼロス、ドリズル隊は進んだ。
フュリアス、ジミーも白山、セイクレッド城から飛び出していった。
守備隊を置く暇もない。
とにかく、敵の動きを止めるのが任務だ。
いつアーミィが何をするかわからない。
本陣が攻められるかもしれない。
まあ、グロウがそう簡単に退くとは思えないが。
がら空きの白山、セイクレッド城が取られる可能性もある。
そんなことまで、ゼロスもドリズルも、考えていられなかった。
マッチ隊が意外に頑張るので、騎士団と伏兵は奮戦した。
更にゼロス、ドリズル隊が来たため、面倒なことになってきた。
「・・・なんだ、兄貴じゃねえか。」
ソルジャーは、目の前の兄の姿を見て、言った。
ゼロスは振り向くと
「お前か。まだ決着はつけない方がいいだろう?」
と、仮面付き兜のせいで、どこを見ているのかわからないながらも言った。
「まあ・・・でも、このままじゃどっちかがすぐに滅びそうだ。」
「いや、我らは負けない。豊城まで攻めたら、決着を付けよう。」
「ああ。そこまで来れたらな。」
ソルジャーは他の敵兵を斬っていった。
すぐ近くに敵将がいるのに、もう見向きもしなくなった。
テラーはウラヌスを見付けた。
数はそう多くないので、見付けるのは簡単だった。
「おい、ウラヌス。」
「何か用か?」
「少しは敬語を使え。ソルジャー隊と白山の方に行ってくれ。」
「騎士団だけで、ここを押さえられるのか?」
「何、危険なときは逃げる。早く行け。攻められてるらしい。」
斥候の報告では
「フュリアス隊とジミー隊がセイド、ヘイム隊に攻撃している。」
というので、誰か援護に行かせようと、テラーは考えたのだ。
騎士団なら素早く逃げれるし、ある程度なら戦える。
特に騎兵隊というわけではない、ソルジャー、ウラヌス隊を行かせる。
これなら効率がいい。
「わかった。白山付近に行こう。」
「北側だ。頼むぞ。」
ウラヌスはソルジャーにこのことを伝え、兵を連れて白山の北へ行った。
「さ、こいつらをさっさと退かせるぞ!」
テラーの命令は、戦の神を従わせた。
ゼロス、ドリズル隊は本陣へ止む無く退いていった。
騎士団は、セイド、ヘイム隊の援護に向かった。
奪還
「ギギギ・・・」
三つ子砦<南>の門が開いた。
「さ、行くぞ!」
セイクレッド城を守っていたロイアルである。
取られたのはわざと。取らせたのである。
ロイアルはその後、三つ子砦まで退いていたのだ。
だが、ロイアルはセイドやヘイム隊の援護などする気はない。
目的は他にあった。
・・・セイドは必死に戦っていた。
敵が猛攻を加えて来ているのだ。
敵が何を思ったか知らないが、突破されちゃ困る。
セイドはフュリアスを見付けた。
ここの「敵」の中では大将のようなものだろう。
装備が少し「将軍」らしかったので、フュリアスだと思ったのだ。
実際にフュリアスかなんて知らない。
「そこの敵将!」
呼んでみればわかるはずだ。
敵将なら誰だっていい。
一人でもいれば邪魔なのだから。
フュリアスは将と呼ばれたので、振り向いた。
「なんだ、お前は?」
フュリアスにも、セイドが将であることはわかった。
「私はセイドだ。わかるだろう?」
「ああ、セイドか。お前を倒せば、どうなるかな。」
「さあな。私の代わりなどいくらでもいる。」
セイドが死ねば、アーミィがキレるだろう。
そうなれば、イモータル軍の勝利は間違いない。
まあ、あくまで予想に過ぎないが・・・。
「そうかい。代わりがいるなら、いても仕方ないな。」
フュリアスの槍はセイドの剣を打った。
左手の剣は、セイドの手から遠く離れていった。
飛んでいくとき、セイドに当たらなかったのは幸いだった。
セイドはお得意の二刀流ができなくなった。
現実には、二刀流なんてやりにくいだけだが。
「やっぱ剣は一本だろ。」
フュリアスは剣を一本にしたかったようだ。
ご満悦である。
「そうか?私は二本の方がいい。」
セイドは普通の口調で、フュリアスに斬りかかった。
フュリアスは容易く殺されてはくれないようだ(当たり前だ)。
槍で防ぎ、反撃する余裕もある。
セイドは隙を見せず、瞬時にフュリアスの槍を防ぐ。
「まだ終わりにしたくないな。」
セイドは微笑していた。
「そうか?俺はさっさと、セイクレッドを滅ぼしてえよ。」
「その願いは永遠に叶わないだろうな。可哀想に。」
「セイクレッドは永遠にいれるわけねえだろ。」
どちらも笑いながら・・・フュリアスが先に動いた。
歳は上でも、先に動けるのだ。
フュリアスは、走った勢いで、槍の動きを速くした。
いくら早くても、避けられちゃ意味がなかった。
セイドはその隙を突いて、フュリアスを一回斬ってやった。
腕の間接あたりだ。
傷も浅く、大した傷じゃない。
フュリアスは、後ろがやけに騒がしいと思った。
フュリアスの後ろだから、南である。
南には白山、セイクレッド城がある。
・・・ロイアル隊の狙いはここだった。
がら空きの白山、セイクレッド城を、奪い返すのは容易だった。
そこから攻撃しないものの、いてはそこへは退けない。
更に西からセイクレッドの援軍が来た。
ソルジャー、ウラヌス隊である。
「くそっ。退くぞ!本陣まで退け!」
フュリアスは命令した。
「私との戦いはどうした?」
「そんなもん、いつでもできんだろ!後だ、後!」
フュリアスが早々に駆けて行く姿を見ると、セイドは
「白山に行くぞ!奴らは追わなくていい!」
見た目だけは、追撃のようだ。
命令を聞いていなかった兵は、追撃と勘違いしていた・・・。