三つ子砦奪取
フィリップご活躍
「・・・」
無音だが、雪が降っているのである。
それを音で表そうにも、いい文字がないのだ。
フィリップ隊は、三つ子砦を目指していた。
裏切る気はない。
だが、命令されたわけでもない。
要するに、勝手な行動をしているのである。
フィリップとしては、親切心を発揮しているつもりだ。
三つ子砦を取り、戦況を少しは良くしようとしている。
ゼロスもドリズルも、フィリップのことなど考えてもいなかった。
フレイム、ジョゼフの死など、色々と起きたので、混乱しているのだ。
「雪がすごいな。これじゃ勝てなさそう・・・。」
勝手に動いておいて、これでは勝ち目はないだろう。
雪は降っているが、今は積もったまま、これ以上積もらない。
今降っている雪は、すぐに溶けるのだ。
風もそんなに吹いていなかった。
三つ子砦が見えてきた。
誰が守っているか知らないが、とにか攻めて落とそう。
三つ子砦<南>の門は開いたままだった。
閉め忘れたのか、策なのか。
フィリップは迷わずに中へ入っていった。
策なのかもわからなかったのだ。
幸い伏兵もいなく、三つ子砦<南>は容易く取れた。
単にロイアルが閉め忘れたようだ。
「さ、次も取るぞ!」
三つ子砦<西>へ向かった。
<西>の門も開いていた。
「これなら簡単だな。」
何も考えていないようだ。
悠々と門をくぐった。
「待ってたぞ、フィリップ。」
フィリップは声のした方を向いた。
そこには、ギフトが立っていた。
最近登場しないので、出してあげたのだ。
「かかれ!」
ギフトが命令すると、後ろの兵が一斉にフィリップを目指す。
ギフトも走ってきた。
「退け!」
フィリップはきびすを返し、退いていったが・・・。
「フィリップ!仇は取らせてもらう!」
ソローである。
兵を連れ、走ってくる。
ギフトの攻撃があるので、退くに退けなくなった。
ギフトはフィリップを見付け、斬りかかった。
フィリップは剣で防いだ。
「なんだ、少しはやるんだな。」
ギフトは感心したように言った。
「こんなところで負けられない。」
「そりゃな。俺だってそうだ。」
ギフトの剣はフィリップを斬った。
・・・いや、残像、とでも言おうか。
フィリップを斬ったと思ったら、フィリップはしゃがみ込んでいたのだ。
そして、痛みがした。
「お前なんかに・・・。」
「おとなしく降伏すればいいだろう。」
「俺はな、自分・・・の身なんて惜しくない・・・。」
「そんなこと言ったって・・・。」
「お前・・・みたいな奴じゃ・・・わかりやしねえ・・・。」
だんだんと声が小さくなっていった。
そして、ギフトは「人」ではなく、ただの「物」と化した。
ギフトの死で混乱したのか、ソローまでどこかへ退いていった。
どこでもいい。
なんにせよ、三つ子砦はフィリップだけで落とせたのだ。
フィリップは、早速この報を本陣に伝えた。
白山辺りの戦況はよくわかっていない。
おかしくなるんじゃないかと兵が心配する程、フィリップは喜んでいた。
取りあえず全軍撤退
「ガチャ」
「誰だ?」
アーミィは顔も上げずに聞いた。
扉を開けたのは、斥候だった。
「花鳥風月。情報です。」
「花鳥風月」は、斥候とアーミィの合言葉である。
「そうか。戦況は?」
「はっ。中央で激戦が繰り広げられています。」
中央とは、白山、セイクレッド城近辺のことだ。
斥候は、思い出したのか、ひざまずいて続けた。
「ゼロスが迂回し、三つ子砦を目指している模様。」
「三つ子砦?・・・フィリップに取られたんだったな。」
さすが、アーミィは情報通だ。
この斥候は中央だけを調査していたので、三つ子砦のことを知らない。
「・・・で、では、この先、どうするのですか?」
「どうする、ねえ・・・。敵の総兵数は?」
「大体・・・八十万くらいです。」
最初は百二十万程いたのだ。
大した被害を与えたように見えるが、セイクレッドも打撃を受けた。
百万いたのが、今では半分、五十万である。
名だたる敵将を討てたのはよかったが、代わりに兵の被害が大きい。
中央の激戦で、毎回一万以上は軽く死んでしまうのだ。
長期戦は無理だろう。
「我が軍とは三十万の差があるな。全軍に伝えてくれ。」
「なんでしょう?」
斥候は胸が高鳴った。
全軍への命令を伝えるなんて、なんとなくすごい気がするのだ。
「ここ、豊城まで退くようにな。」
「?何故ですか?」
「兵が聞くな。命令に従え。」
「はあ・・・。」
アーミィはちゃんと考えていた。
三十万の差は、集結して埋めればいい。
団結力でなんとか乗り越えるのだ。
・・・そう団結力がある軍というわけではないのだが・・・。
城という、地の利を生かせば、三十万くらいどうにかなるだろ。
そのために、重要拠点の中央を、簡単に手放すのだ。
アーミィは、勝てる気がしなかった。
兵数で負け、兵の装備で負け、兵の士気は同じくらい。
地の利では有利だが、三つ子砦を取られ、豊城も危険だ。
敵を迂回しようにも、雪が強いので動きにくい。
雪国育ちとはいえ、雪があることを忘れるほどではない。
中央はセイドとテラー、ヘイムにロイアルが守っている。
他にも、色々と諸将が集っていた。
その誰もが
「なんで?」
と聞くくらい驚いていた。
さっきの斥候も、いちいち
「国王の命令です。素直に従ってください。」
と言って、ついには自然とこの言葉が出るようになってしまった。
さて、この斥候をおかしな病気にさせた、当のアーミィは・・・。
「ゼロスとドリズルはどう来るかな・・・。」
と、酒を飲みながら策を練っていた。
顔も少し赤くなっている。
「まあいいか。奴らの動きを見てからやるから。」
とにかく、今は酒を飲みたいらしい。
上品なワインを、がぶ飲みするのは、国王らしからぬ行動だった。