豊城決戦

降伏命令

「タッタッタッ・・・」
扉が開き、またアーミィが顔を上げずにいた。
「敵が豊城を包囲しました。」
「・・・そうか。もう負けだな。もっと早く気付けばよかった。」
「は?」
「全軍に命令だ。降伏するようにな。」
「しかし・・・。」
「降伏しないなら、逃がしてやる。死なせはしない。」
包囲され、兵数で負け、士気も少し低くなった。
これで勝つのは難しい。
敵にはゼロスもドリズルもいるのだ。
フュリアスだっている。下手に攻撃できない。
兵は不服そうな顔をしたが
「・・・わかりました。」
と言い、部屋から出た。
当然、降伏命令を素直に受ける者はいなかった。
将は特にそんなことをする気はない。
降伏したい者がいても、周りに乗せられて、そんなこと言えない。
アーミィはその報を受け
「俺が指名する者以外は、強制的に降伏させる。」
と言った。
指名された将は、テラー、ヘイム、ロイアルだった。
セイドは、アーミィに一人で会った。
「兄上、何故私が指名されないのだ。」
怒りさえこもった口調である。
「まあそう怒るな。弟を死なせたくないんだ。」
「人は誰でも、いつか死ぬ。それが早いか、遅いかの違いだ。」
「わかった。口でお前に勝てないからな。」
「・・・しかし、たった五人で何を?」
「簡単だ。敵将を指名して、戦う。」
「兵とは戦わないと?」
「ああ。奴らが受け入れてくれるか、問題だけどな。」
「フュリアスのような奴なら、受け入れるはずだ。」
「ま、なんとかなるさ。」
適当な国王である。
強制的な降伏も、ほとんどが拒否した。
仕方ないので、旧アーマメント領へ逃がすことにした。
これだと、半分近くが納得してくれた。
イモータルがそんなに憎いのか。
早速、退路確保作戦が展開された。
敵を引きつけるため、納得しない兵は正面から攻める。
納得した兵は、騎士団と共に東門から敵陣を突破する。
なんとも単純な策である。
だが、豊城包囲から何もしなかったため、ドリズルは恐れていた。
アーミィが何をしてくるか、対策をしても破られるのではないか、と。
ゼロスはアーミィの動きを待っていた。
それまで、何もしていなかったが・・・。
雪と風は突然、強くなった。

退路確保作戦

「ヒュウウウ・・・」
吹雪である。
この天候は、セイクレッドに味方した。
ゼロスは顔をしかめ
「敵が動いたというのに・・・。」
と文句を言っていた。
正面攻撃は、敵陣を崩せそうなくらい攻めることができた。
降伏も逃走もせず、勝つことを願う兵ばかりだからだ。
吹雪いてきたのも理由の一つだろう。
未だ雪に慣れていないイモータル軍に、吹雪は最悪なのだ。
騎士団も簡単に突破できそうだ。
敵陣の半分辺りまで進んでいた。
テラーはいないが、充分に勝てる。
指名されたので、騎士団に付いて行っても、城に戻れないからだ。
これが最後の戦いだと、兵は奮起していた。
騎士団は旧アーマメント領へ退けた。
正面攻撃は、まだ止まなかった。
遂には、東西の兵を集結させて戦った程だ。
戦意が異常な程高く、吹雪を味方にしたためだろう。
四日もかかって、やっと全滅した。
豊城にはアーミィと、指名された四人しかいなくなった。
五人全員で、交渉しに行った。
イモータル軍は、もう十万もいない。
まあ、五人に比べれば、相当な数であることは変わらないが。
本陣の、師の旗の立つ天幕へ案内された。
グロウが待っていた。
他にも、ゼロス、ドリズル、フュリアスが立っていた。
「アーミィ。何の用だ?」
座っているグロウが言った。
「もう戦は終わった。俺らの負けだ。」
「わざわざそれを言いに来たわけではあるまい。」
「そりゃな。俺はお前らと戦いたい。兵を城にいれずにな。」
ゼロスは少し考えて
「それは我らとお前らで戦えと言うことか?」
「ああ。こっちはもうたったの五人。そっちは、まだ万はいるだろ?」
「お前らを倒そうと思えば、いつでも倒せるくらいな。」
フュリアスが言った。
テラーが苦笑いし
「まあいいじゃねえか。どっちが勝っても、天下はお前らのもんだ。」
「皇帝がいなければ、国は成り立たないが?」
ドリズルが反論した。
セイドはあくびし
「皇帝がグロウである必要なんてあるのか?」
と言った。
「ある。グロウ皇帝でしかできないことがあるからだ。」
ドリズルは、あくびをするセイドを睨みつけた。
ヘイムは持ってきた酒を飲み
「なんだっていい。俺らの最後を飾ってくれってことだ。」
と言い、飲み終えたのか、酒瓶を後ろへ放り投げた。
「・・・いいだろう。アーミィの願いを叶えてやる。」
ゼロスは、アーミィへ目を向けた。
「そりゃどうも。」
アーミィはその後
「伯父上。」
と、小声で、見下すような口調で言った。
五人は城へ帰った。
グロウら四人は、兵にこのことを説明し、準備を始めた。
兵士達は反対だったようだが、皇帝には逆らえない。
・・・吹雪は治まりつつあった。