ディアドラは街を見てきた。人は活気に溢れ、精霊の里とは全くの無縁だ。精霊の里では、人が少なく、こんな活気など無かった。そのため、ディアドラは興奮していた。
店でおいしそうな物があると、お金が無いので、眺めているしかなかった。・・・街でそんな人間はいくらでもいる。生活に困った者が主だ。
ディアドラはまた、面白そうな物を見つけ、そこへ走ろうとしたとき、目の前には大きな壁・・・いや、体があった。
「お嬢ちゃん、この街初めてだろ?俺達が案内してやるよ。」
でかい図体をした体が、ニヤニヤしながら言っている。
ディアドラは『狼の誘い』など知らない。そのまま、ついていこうとすると、白馬に乗った王子・・・この場合は公子が助けに来ていた。本作(聖戦)の主人公、シグルドである。
「君、大丈夫かい?」
ディアドラは自分に優しくしようとしてくれた者のことなど、すっかり忘れてしまった。一目惚れである。
「あ・・・ありがとうございます・・・もう行かなくては・・・」
その場から立ち去るためだけに言ったのではなく、里の掟には『精霊の森の外の人間と親しい関係になることを禁ずる』という項目が存在するので、それを破るにはいかない。そのため、一目惚れの相手から立ち去らなければならなかった。
「君・・・ちょっと待って・・・」
シグルドはとても手の早い人だ。お茶の誘いでもしたかったのか、でもなぜか追いかけられない、とても残念な表情をしたシグルドがそこにあった。
「(・・・掟を破ってはいけない。掟を破れば、世界の破滅を意味するのよ。でも、・・・ああ、このまま、あの人のことを忘れられなくなったらどうしよう?掟は破れないけど・・・どうにかしなきゃ)。」
悩んでも嘆いても、この状況に変わりはない。ディアドラは森の木々をよけながら走った。このまま、ずっと
走っていれば、里の着く。そこなら何とかなるはずだ。
さすがに疲れたのか、いつの間にか急ぎ足になっていた。無理もない。まだ現役バリバリの少女なのだから。しかし、その美しさは大人になっても変わらないだろう。
「やっと着いた・・・!」
ディアドラは心からの喜びの声を上げた。心の一部は、まだシグルドを思っているが・・・。
ディアドラは里長のもとへと訪ねた。この記憶を消してもらいたいのだ。この記憶さえ消えれば、世界が破滅に至ることはない。そんな希望をもって訪ねたのだ。
「ごめんぐださい。」
「何かね?」
何の警戒心も持たず、扉を開けてくれたのは、70過ぎのそこら辺にいそうな、ごく普通の白髪のおじさんだった。この人こそ里長である。
「私の・・・記憶を消してください。」
「記憶を消す?それは無理だ。そんなこと、封印されたロプト教の特に高い位の者しかできんよ。」
「では、どうすればよいのでしょう?」
「どんな記憶をけすつもりだね?」
「・・・あの人の・・・・・・ことを・・・・・・」
息が詰まる。言いたくない、体が拒絶しているのだ。しかし、言わなければ世界は破滅・・・。ただ、一人の人間と、世界を天秤にかければ、当然世界を取るが、人間、自分のことが一番なのだから、前者と答える人も少なからずいるだろう。
「ディアドラや・・・外の街へ出かけたのじゃな?」
「はい。でも、それだけならなんの罪も・・・」
「お主は、外の世界を知らずに育った。だから、外の世界の人間は輝いて見えるのじゃ。そこで誰かと恋に落ち、子でもできれば世界は破滅に一直線じゃ。よいか、決して外へ出てはいかん。記憶を消すことはできん。それは自分で対処するのじゃ。」
「(それは無理です。もう、既に恋に落ちたばかりですから。それに、記憶はそう簡単には消えてくれません。)。」
ディアドラは勝手に結論に達した。世界の破滅よりも、シグルドを選んだのである。
ディアドラはまた、走った。あの街へ行けば、シグルドに会えると思ったからである。
「(あの人・・・ちょっと、顔はよくないけど・・・あんな人、他にはいないわ。)。」
など考える余裕まで出来た。これも里長のおかげだ。全てを誰かに打ち明けると、気が楽になる。
しばらく走って、目を疑った。シグルドが探しに来ているのだ。この間、他の者は戦闘中。
「あの人・・・探しに来てくれるなんて・・・」
「ディアドラ!?どこにいるんだ?」
馬に乗っているので、森では思うように動けない。それと、シグルドがディアドラの名を知っているのは、村を訪ねたときや、街で小耳にはさんだときに聞いたのだ。
「あ・・・!」
ディアドラはどう呼べばいいか分からない。相手の名を知らないのだから。
「ディアドラ!そこにいたのか!」
と言ってから、3ターンほどして、やっと到着。
ここからは衝撃の愛の告白なので、略します。
そして、愛の告白が終了すると、二人は抱き合った。激しい愛の様子はお任せしよう。
「シグルド様・・・この先には、闇の魔道士がいます。私のサイレスの杖で攻撃を封じますから、そのスキに倒してください。」
「わかった。」
やっと、全員が森を抜け、闇魔道士(名前忘れた)にサイレスをかけ、流星剣をもって昇天した。
とりあえず、戦は終わったが、何年だかすると親友の領地を守るための戦が起こる。
そして、どんどん進んで第3章。
・・・ディアドラは悩んでいた。歩兵で足が遅いので、いつも本隊とは離れ離れ。やっと着いた、さあライブやろうじゃないか、と思ったら、負傷者なし。来る間に他の杖使いに全部回復させられてしまったのだ。魔法は強いけど、やっぱり足遅いから届かなかったり、あきらめて、本城に待機(アーダンと一緒)してるときもあったし、軍には必要とされていないのではないかと、苦悩しているのだ。
「(はあ〜、足が遅い、か。精霊の里じゃ、ほとんど歩かなかったから。軍には必要とされてないんじゃないかしら。せっかく掟を破ったのに・・・)。」
悩んでいる顔も、これまた美しい、なんて魅入ってる場合じゃない。ディアドラは悩みに悩んでいた。そして、結論に達した。
「よし。ここから急いで行けば、間に合うでしょう。」
ディアドラの達した結論というのは、軍に合流するということだった。しかし、ちょうどマンフロイが現れ
「くくく・・・シギュンの娘よ・・・ようやく見つけたぞ。」
「そこをどいてください。急いでるんです。」
ディアドラは聞いてない。
「むう、貴様・・・おとなしくしてればいいものを・・・貴様は記憶を消され、我が主と結婚するのだ!さあわしと共に来るがいい!」
マンフロイは半ば力づくで、ディアドラをつかみ、離そうとしない。
「私には夫がいるんです。マンフロイ様、私は夫に一言言い残してから、行きます。」
名を知っているのは、里長から聞いたことがあるからだ。そう言って、立ち去っていった。
呆然と立ち尽くすマンフロイ。彼は
「(わ、わしを・・・『様』付けで呼んでくれるとは・・・ああ、我が主には『マンフロイ』と普通に呼ばれ、部下共とは何の会話もない。こんなさびしいわしを『様』付けで・・・・・・)。」
とうっとりしていた。ディアドラをさらうことを完全に忘れている。まあこれでこそ、ハッピーエンドといきそうだがそうはいかない。ディアドラは悲劇のヒロインだ。だから、さらわれなければならない。ディアドラはシグルドとの『激しい愛』を、独身のアレク共に見せつけてから、戻ってきた。
マンフロイは我に戻った。
「(そうだ、この者をさらうことが当初の目的ではないか。わしはなにをやっておったのだ。)。」
うっとりしていたのだ。それぐらい、自分でも分かっているはず。
「ふふふ・・・シギュンの娘よ・・・我が主の妻となるがいい!」
と言って、ディアドラと共に、バーハラへ『ワープ』していった。

ディアドラ・・・それは悲劇のヒロイン。逃げるチャンスはあったのに、敵を思ってわざわざさらわれる。里の掟を破っても、その先に光は満ちてはいなかった・・・・・・