この小さな階段はなんとも急ぐのに不便だった。
すでにエクメーネはミカエルらの軍に落ち、ウリエルは地下階段で逃げようとしていた。
「陛下、大丈夫ですか?」
「こんな所は初めてだ。この世にこんな所があったのか」
陛下の名前は、スターと言った。
ヒーロー・ロード・スター。
スターとは言うが、今のところ、あまり「星」とはお世辞にも言えない。
宰相ワイズによって、幼少期より酒と女に溺れさせられたのだ。無理もない。
17歳のはずだが、頬がこけていて若々しさはない。
階段を降り終え、地下水路に着いた。
ここを走って、途中のマンホールから出なくては。
奥の方に人影が見えた。
「誰だ?」
ウリエルが言った。
「こんなところで会うなんて、奇遇だな」
その影は歩きながら言った。
「・・・ルーフか」
「ああ」
ルーフは腰の右側に剣を帯び、槍を右手に持ち、腰の左側のホルダーには銃があった。
剣はアンサラーである。歪曲している。
槍はブリューナク。穂先が5つに分かれている。
銃はルーフの愛銃、ワルサーPPKだ。
「さ、無駄に頑張るなよ・・・」
ルーフは銃を空いている左手で抜き、ウリエルの足元を撃った。
ウリエルは微動だにしない。
「ウリエル、どうにかしろ!」
陛下が怒鳴る。
ウリエルは忍ばせておいた銃で、ルーフを撃った。
右手に当たったようで、ルーフは右手を押さえる。
血が行き場を求めて流れている。
「・・・さすが、最強の銃」
ウリエルは「最強の銃」をしまった。
「・・・行けよ。右手がなきゃ、俺はただの邪魔者だ」
「俺の邪魔はもうするな、ルーフ」
「とりあえずな」
ウリエルはスターを促して走っていった。
「・・・やれやれ、こうでもしないと姫、怒るからな」
ルーフは立ち上がり、マンホールへ向かって歩き出した。
・・・外の光は心地よかった。
「陛下、早く行きましょう」
「まあ待て。しかし、ワイズは?」
「ワイズがどうしたのですか?」
「私を育ててくれたのはあいつだ。助けてやってくれ」
奴は陛下に何を言ったんだ・・・。
「わかりました。陛下はこのままあちらへ逃げてください」
ウリエルは向こうに見える木を指した。
ウリエルは返事も待たずに走り出した。
・・・ワイズは必死に逃げていた。
運転手もいないので、自分で車を運転している。
もう街からはだいぶ離れていて、辺りは草原だった。
それでも車を走らせていた。
まだ恐怖が消えないのだ。
バン、と音がして、走らなくなった。
「なんだ?くそ!」
ワイズは車から一旦降りた。
「こんなときに限ってパンクか!」
「不運だったな」
ワイズの後ろから声がした。
「誰だ!」
「パンクさせた本人だ」
オフィエルは言った。
長い銃身のある銃をワイズに向けている。
ジパングからわざわざ、ワイズを殺しに来たのだ。
「オフィエル・・・貴様、何をする!」
「パンクさせただけだ。そう怒るな」
オフィエルは笑いながら続ける。
「お前がやってきた悪政に比べたら、こんなのどうってことないだろ」
「なんだと・・・!」
「お前のせいで死んだ奴もいる。罪を償わせてやるよ、俺が」
銃を左手で支え、狙いを定める。
・・・すると、オフィエルは倒れた。
「陛下のご命令だ。悪く思うな、オフィエル」
ウリエルが言った。
オフィエルを蹴って倒したのだ。
オフィエルは立ち上がり
「なぜ姫に従わない?」
と言った。
「俺と姫では考えが違うだけのことだ。お前が関わることじゃない」
「お前はワイズを助けるのか?」
「陛下のご命令だ。仕方あるまい」
「・・・スターに希望があるか?」
「陛下はまだ17。生きる資格がある」
オフィエルは舌打ちして後ろを向いた。
「・・・勝手にしろ。でも姫の邪魔はするな」
「もちろんだ。ワイズ、来い」
ワイズはウリエルに黙って従った。
ウリエルとワイズは、スターのところに着いた。
「陛下、連れてきました」
「そうか。ワイズ」
「はっ」
「お前の話とこの世は違うようだ。これはどういうことだ?」
「それは・・・陛下には安心していただきたかったのです」
「私は皇帝だ。皇帝の間は安心しているわけにはいかない」
「ですが・・・」
ワイズはスターに睨まれ、何も言えなくなった。
「・・・ワイズ、私は旅をしたい。だがお前がいては困る」
「・・・どういう意味ですか?」
「言葉の通りだ」
「・・・わかりました。私は消えます」
ワイズはどこかへ行ってしまった。
「陛下、旅というのは・・・」
「私は世界を旅したい。本物の世界を見たい」
「・・・わかりました。しかし、せめて銃くらい持たないと危険です」
「剣がいい。お前も剣を持っているだろ」
スターはウリエルの腰を指した。
ウリエルは剣を帯びている。
この剣は、真っ直ぐな鞘からは想像もできないほど、ギザギザである。
この剣はフランベルジュ(ゲームとかでよくでるが、現実にある)という種類で、
 相手を殺すより、苦しめるためのものだ。
「剣ですか。今、世界のどこへ行っても、街中を剣を持ったまま歩くのは
 難しいとされています。法律で禁止されているのです」
「ならお前は何故持てる?」
「私はそういう資格を持っているからです。持つには5年はかかります」
「そうなのか。じゃ他にはないか?」
「銃ではいけませんか?」
「・・・仕方ない。銃でいい。使い方を教えてくれ」
ウリエルはスターに、銃の使い方を教えることとなった。
そして、数日経つと、ウリエルは姿を消していた。
その前日にスターはウリエルに言われたことを思い出した。
「あとは1人で旅をしてください」
ということを。
ウリエルがどこに行ったかわからないが、仕方ない。
ウリエルの言うとおり、一人で旅をしなければ。
スターは、甘やかされて育ったにしては、現実を受け止められる性格をしていた。
スターは行くあてもない旅を始めた・・・。