いい旅 勇者気分(かなり字余り)
「ハアハア・・・。」
FE聖戦のヨハルヴァ。今は叔父、レックスが勇者の斧をもらったという、勇者の泉(仮名)を探していた。
探す理由は至って簡単。ラクチェに取ってきて欲しいと言われたからである。それで、兄、ヨハンを出し抜いてきたのだ。
「勇者の泉は旧ヴェルダン領の泉だと聞いたが、どこにもねえじゃねえか。」
大陸を横断するくらい歩いてきたんだな、馬に乗れないから。
さて、いくら歩いても木、木、木のヨハルヴァ。あきらめかけていたが、やはり、ラクチェへの一方通行の愛に身を任せ、気合で歩き続けた。
「おっ、湖だ!」
気合で走り出し、湖の水を飲むが・・・。
「しょっぱ!なんだよ、これ?」
旧ヴェルダン領中央に丸くあるこの湖。普通、こんなところに淡水の湖は出来ない。ここは恐らく、地震とかなんかで地盤が崩れ、その崩れたところから隣接している海の水が入ったのだろう。
なので、ここの水は塩辛いのである。
「くそっ。」
「おい、お前!」
どこからか兵士がやって来た。
「なんだよ?」
「お前、なぜこんなところに来ている?」
ま、デカイ斧持って歩き回っている様子は異様だったろうから、呼び止められて当然だ。
「・・・勇者の泉を探しに、だ。」
「勇者の泉?なんだそりゃ?」
そりゃそうだ。勇者の泉は私が勝手に命名したのだから。
「お前、知らないのか?こう、鉄の斧を落とすと泉の中から女神様が現れて、勇者の斧をくれるっていう・・・。」
「知らん。お前は誰だ?」
「俺はヨハルヴァだ。」
兵士は頭を抱え込んだ。
「ヨハルヴァ・・・。いや、そんなまさか。イザークにいるはずのヨハルヴァ様がこんなところに・・・。」
ここにヨハルヴァがいては自分がヨハルヴァを逃がしたとか言われそうなので、ここが男の見せ場、兵士は決断した。
「よ、よし、勇者の泉ね。あ、あー・・・こっちにはないんです。あちらの方にあります・・・。」
「さっきは教えなかったのに、なんでだ?」
「勇者の泉というは、余りにも勇者の斧が取れるので、一般人には行けないようにしてあるんです。ええ、はい。」
かみそうでかまないので、兵士はヒヤヒヤしていたが、なんとか言えた。
「なんだ、そうなのか。じゃ、そこまで案内してくれねえか?」
ない所に案内なんて出来るわけがない。
「え、えーと・・・。・・・・・・め、女神様は自力で来ないと、えー、勇者の斧のをくれないそうなので・・・。」
「そうなのか?仕方ない。歩いていくか。」
ヨハルヴァは歩き出した。
ふう、と一息。やれやれ、なんとか乗り切った。
しかし、将来、あんなのがイザーク領主になったら、国はどれだけ荒れるだろう?
兵士は必死に考えていたが、やがて無駄なことを考えていると知り、そしてあきれた。
さて、ヨハルヴァは例によって「こっち」でなく、「あちら」に来ていた。
「ないな〜。」
辺りを見回すが、やはりない。
「どこにあんだよ・・・。って!」
ヨハルヴァは水の中へ落ちていった。
翌日、その水の前を一人の若者が通ろうとしていた。
ザザーと水しぶきを上げ、現れたのは例の女神様である。
「うわっ!」
「あなたが落としたのはこの金のヨハルヴァですか?」
女神様は右手につまんでいるものを見せた。
「それとも銀のヨハルヴァですか?」
左手につまんでいるものも見せた。
「あわわわわわ・・・。」
若者は泡を吹いて倒れた。が、女神様は一向に動じない。
泡吹くのも当然だ。いきなり女神様が現れて、金メッキ(実際は違うだろうが)の付いた人と、それと全く同じ人で銀メッキが付いている人が同時に現れたのだから。
「どちらも選ばないとは、正直な方ですね。では、その褒美に勇者のヨハルヴァを与えましょう。」
両方くれないらしい。
勇者のヨハルヴァだったら、私は欲しい。
ヨハルヴァは徒歩だからいつも軍の最後尾。遅いし、騎馬じゃないから機動力がなく、レベルが上がらない。そんな奴にレッグリング(移動力を上げる)を使ってやる程、私の心は広くないので、途中からは城にお留守番させてましたから、勇者のヨハルヴァは中々いい。
勇者のヨハルヴァは女神様の手と手の間から現れ、重力に従って地面に落ちた。
「おい、女神様!勇者の斧くれよ!」
中身は変わってないようだ。
「あなたは勇者のヨハルヴァですから、この斧に触ればたちまちこの斧は勇者の斧になりますよ。」
「そうか!じゃあ、その斧をくれ!」
女神様はふっと微笑んだ。不吉な笑いだ。
金の斧、銀の斧の話で、金や銀の斧の方を選ぶとどうなるのか。私は童話の解説本を読んで知ったのだが、あれで両方もらった人間の他に、試した人間がいて、そいつはバカだから金の斧を「俺のだ」と言い、女神様を怒らせ、その後死ぬまで、女神様の罰に怯えたそうだ。
・・・後から出て来た人間と、ヨハルヴァとでは行動がまるで同じですな〜。いや、全く。
「欲望にかられた愚かなる人よ。残りの人生を私に怯えることで埋め尽くすがいい!」
「へ?」
ヨハルヴァは呆然としていた。
女神様はヨハルヴァの近くの木を、多分、魔法で倒し、ヨハルヴァに当てようとした。
女神様はすぐに泉の中へ消えていった。
呆然としているヨハルヴァだが、まあ、なんせ勇者になったんだから、守備力も上がったわけだ。
それに、毎日毎日こりずにラクチェに斬られ、兄であり、恋敵でもあるヨハンと戦っているのだから、レベルも相当上がっているはずだ。
木が倒れてこようが、ゲームシステムには逆らえまい。
ヨハルヴァはほぼ無傷で、穴の開いた倒木を見た。
「おお?俺、勇者になったのか!?やった!」
そして、ヨハルヴァは徒歩で勇んで帰った。
だが、ラクチェは勇者の斧を売りたかっただけらしく、勇者のヨハルヴァには以前同様、興味を示さなかった。
タイトルのようないい旅ではなかったことは、お悔やみ申し上げよう。